「やっぱり」
~♪
「もしもし?」
『もしもし、陽菜の友達の、流依さんでしょうか』
「え、えぇ、そうですけど」
唐突にかかってきた知らない声の電話は、僕を不安にさせた。紫陽花を見たあとから、あまり陽菜と話せていないこと。電話越しの声が少しくぐもって聞こえたことが、より一層僕を不安にさせ、嫌な予感が僕の心をぐるぐると回っていた。
次の瞬間。その嫌な予感は的中してしまった。
『単刀直入に、申し上げるので、冷静に聞いて下さい』
『陽菜が……』
「え……」
――陽菜が、死んだ。
陽菜が死んだ。電話越しの彼が何を言っているのか分からなかった。僕は過呼吸になり、僕はただ、泣くことしかできなかった。電話なんて耳に入らない。ただ、雨の音が、無情にも強く耳に響いた。
――
「暑い」
葬式の日は、梅雨の日には珍しく快晴だった。もう何も考えることはできなかった。「ただの友達」なんて言ってしまえばそれまでだが、陽菜は僕にとっては一番大事で、失いたくないものになっていた。
まぎれもない。
親友だったから。
――
その後は、雨がずっと降り続いた。何度も何度も、陽奈の家を訪れた。何度行ったも、そこに紫陽花は咲いてなんていなかった。
紫陽花の咲かぬ六月は、ただ雨が降るだけ。
雨が降るだけの六月は、ただただ生ぬるいだけ。
どこかで、花瓶の落ちる音がした。
それを聞いて、ただただ、涙を流した。
――やっぱり僕は、雨が嫌いだ。
紫陽花の咲かぬ六月は 野田 琳仁 @milk4192
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