エピローグ

 こうして、クロイツ帝国は統一した。


 この後、大陸は新たな歴史を歩むことになるのだが、それについては後世の歴史家に任せることにする。


 この後も大陸ではいくつかの戦争と、束の間の平和を繰り返すことになる。


 だけど、それは後世の人間の問題であり、クラウスたちは自分たちの時代を懸命に生きたに過ぎない。


 これはそんな時代を生きた人々の記録であり、歴史なのだ。


 私が記録するのはここまでである。


 最後に、この物語に出てきた人々の『その後』について、いくつか話しておこうと思う。




 初代クロイツ帝国宰相・スタール。彼はその後長きに渡って帝国宰相として働き、内政はもちろん、外交においても各国との調整を取り続けた。列強との間に絶妙な外交バランスを保ち続け、大陸に長い平和をもたらすことになる。



 初代クロイツ帝国皇帝・フリード。彼は初代皇帝として、統一された帝国の象徴として君臨し続けた。スタールと共に帝国の繁栄に尽力。クロイツ帝国の国父として人々に敬愛され続けた。



 参謀本部・クラビッツ少将。アンネルとの戦争を勝利に導いたクラビッツは、その後も軍制整備を続け、グラーセン陸軍をさらに強力にしていった。その軍事思想は各国の陸軍に影響を与え、クラビッツは近代陸軍の父として、世界の軍事史に名を残すことになる。



 シェイエルン ヴィッテルス大聖堂 コル神父。サンブールでの慰霊式典を終えた後、彼は戦場後に設営された両国共同墓地の責任者に任命された。その後、共同墓地には新たに大聖堂が建立され、彼はその大聖堂の枢機卿に指名され、この地を両国の平和の地として守り続けた。その後、大陸に戦争が起きても、この大聖堂の周りだけは戦闘が行われることはなかったという。



 シェイエルンの医者夫婦。ヨハンナとマイス。帝国統一からしばらくして、二人の間に子供が生まれた。しかも男の子、女の子の双子だったという。聖女とまで呼ばれたヨハンナの子供ということもあり、街の信徒派と聖書派の間で、彼らの子供を自分たちの宗派にしようと、新たに微笑ましい対立が生じたという。双子がどちらを選んだかわからないが、夫妻は幸せそうに暮らしたという。



 ビュルテン国・ラコルト。ユリカたちに鉄道会社の運営を託されたラコルトは、その後グラーセンとビュルテンとの間に鉄道を開通させることに成功した。ラコルトはその鉄道で家族を連れて、グラーセン旅行に出かけたという。ユリカとの約束通り、一等客車で。



 参謀本部鉄道課・フェリックス大尉。アンネルとの戦争が終わった後、彼は恋人と結婚。その後、帝国全土を旅して、全国地図の作成に成功した。彼はその地図を持って、恋人と共に帝国を旅行するという夢を叶えたという。



 ジョルジュ・デオン。アンネル軍情報部員として、彼女はその後も世界を駆け巡ったという。新たに始まったアンネルと共に、世界を相手に戦い続け、アンネルの覇権のために走り続けたという





 最後に、この物語の主役であるクラウスとユリカについてだが、彼らについての記録は何も残されていない。その後も世界を旅し続けたらしいが、詳しいことは何もわからず、参謀本部の記録にも何も残されていなかった。


 そんな中、ある興味深い話が見つかった。世界各地の街で、とあるカップルが目撃されたという話。楽しそうに笑う少女と、気難しそうな顔の青年の二人組。


 世界中のあらゆる街で目撃されたという二人。その二人の話には、どれも同じ共通点があった。


 街を歩くその二人は、とても楽しそうに笑っていたという。

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ロマン・エイジ 葉桜藍 @19361964

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