400文字以内小説

そらいろ

しずく

水面にしずくがひとつ、落ちる。

小さな、ちいさな音が聞こえる。


――ぽちゃん


静かな水面に音がこだます。


――ぴちゃん


暗い水底に音が吸われる。


ぽた、

ぱた、


――ぴちゃん



静寂を乱すように、ソレは突然現れた。

ぞわり

水面が泡立つ。

昏い水底から、黒いくろい影が上ってくる。


影は紅いみずたまりの真下でぐるぐる回って、そして。

美味そうにそれを飲みこんだ。


ざぶん


水面に波が立つ。

ざわり、ぞわり


またひとつ、しずくが落ちる。



――ぴちゃん



それが合図だったように。

ソレは獲物に齧り付いた。


ザバァ

ぞぶり

ばしゃん


水飛沫があがる。

爪を、牙をたてる音がする。

獲物の悲鳴が聞こえて



そうして、どれほど経っただろうか






白衣の男は相貌を崩して言う。



「ああ、なんてことだ。」


「そうか、そうか。

君は見てしまったんだね。」


「かわいそうに」



「――、お気の毒だが、これも決まりでね。」


「サヨナラだ。」





――ありがとう

君のお陰で私の寿命が延びたよ

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