第 4 話 久しぶりの再会と、懐かしい人

久しぶりに、電車に乗った。高校生の時は、毎日通学で使ってた。でも、今ではトラックしか乗ってない。



同窓会の会場は、レストランを貸切った。オシャレなイタリアンでクラスメイト30人が集まる。俺は、受付の仕事もあったため、予定の時間より早く家を出て電車に飛び乗った。


最寄り駅につき、少し歩くと、レストランの看板が見えてきた。地元に新しく出来たお店らしく、外装もいかにも人気のありそうな雰囲気だった。


「おぉ〜!!健輔!!悪いな、受付なんか手伝わせて」


「いや、慎吾に任せるのも怖いからな。」


「ておいおい!!そんな悲しいこと言うなよぉ。てかさ...なんか雰囲気変わった?」


「うーん......髪切ったりはしたかな。」



実は、女の子にコーディネートしてもらって、今日のために髪もかっこよくしてもらったなんて、言えるわけもない。


「もしかして健輔......彼女でもできた?」


「そ、そんなわけないだろ!!」


「だよな〜!!俺より先に結婚とか、ありえないよな!」



慎吾も、意外と勘が鋭い。





それから30分後、会場にはぞくぞくと人が集まった。俺たちは、入口にイスと机を置いて受付をしていた。すると、そこへ懐かしい顔が見えた。



「りんちゃん...!」




それは、元カノだった。



「おぉ〜!!山田じゃないか!!久しぶりだな!!!!」


「慎吾くん、久しぶり!!」


「ほら、健輔も!仲良かっただろ〜」


「う、うん。久しぶり。」


「久しぶり、健輔くん...。」


「なんだよ〜、照れてんのか〜!!」




俺たちが付き合ってたことは、みんな知らない。だから、周りが気まずくなることは無い。でも、俺は、ここ最近で1番の緊張を抱えていた。このまま、周りにもバレなきゃいいのだが。





それから俺たちもみんなの輪に入って、思い出話を交わした。当時仲の良かったクラスメイトとも再会した。


「久しぶりだなぁ、イケメンになっちゃって!!」

「お前、なんも変わってないな!!」

「相変わらず、忙しそうだな。」


俺は、みんなから言われること全てに相槌をうっていった。みんなの会話は、聞いているだけで楽しい。当時から、クラスでわちゃわちゃしている中で、色んな会話を聞くのが好きだった。俺、なんも変わってないなぁ。



マリーヌちゃんの言う通り、案外楽しい時間が過ぎて、あっという間に終わりを迎えていた。最後に、当時の懐かしい写真がスクリーンに移された。休み時間、修学旅行、体育祭に文化祭、そして卒業式... 特にこれといった思い出のない俺でも懐かしく思った。



そして最後に、みんなの笑っているの写真が流れた。


俺は、その中のある写真に、目が引いた。




そこには、りんちゃんと俺がいた。




俺は椅子に座っていて、りんちゃんは俺の机に腰かけている。そして、顔を合わせるように笑っていた。


こんな写真、いつ先生は撮っていたんだろう。

この雰囲気、懐かしくもあり、みんなにも見られていると考えると、少し恥ずかしかった。でも、みんなを見ているとそこまで気になっていない様子で、ほっとした。


そこで俺は、ふとりんちゃんの方を見た。


すると、りんちゃんもこっちを見ていた。


りんちゃんは、ニコッと笑った。


俺は、目を逸らしてしまった。






こうして、同窓会は幕を閉じた。みんな、二次会の話をしている。俺は帰ろう。最後、後味悪かったし。やっぱり、気まずい。終わって考えたら、今日、受付の時から1度もりんちゃんと話していない。できれば、このまま......



「けんちゃん...!」


「りん...ちゃん...。」


「ごめんね、あ、もしかして、二次会行ったりする?」


「え、あ、いや、行かない、つもりだけど...。」


「やっぱり!!けんちゃんは、行かないもんね、こういうの」


「うん。......で、えっと...」


「あっ、そうそう。それで、もし良かったら、ちょっと付き合ってくれないかな?」





夜9時30分。俺は、公園のブランコに元カノと缶ビール片手に座っていた。て、なんでブランコ!?


「懐かしくない?ここ。昔よく来てたよね、二人で。」


確かに、二人で放課後、よくこの公園によっていた。そして、二人でこのブランコにのって、ただひたすらに喋っていた。


「あれ、もしかして忘れちゃった?」


「いやいや!!...おぼえてるに決まってんだろ。」


「良かった〜!!忘れられてたらどうしようかと思った。......てかさ、なんかけんちゃん、かっこいいね。その服も、センスあるよ。もしかして、誰かにコーディネートしてもらった?」


「えっ、あっ、まぁまぁ、選んでは、貰ったかな...」



さすがは元カノ、りんちゃんだ。鋭すぎて怖い。



「...で、なんでここに呼んだの、俺を」


「あっ、そうそう!!ちょっと、けんちゃんに話したいことあって...。実はね、私」



「結婚するの。」



なんとなく、想像がついていた。そのはずなのに、驚いてしまった。



「えっ、あ、そっか。お、おめでとう。」


「うん、ありがとう。今日ね、ずっと話そうと思ってたの。それで、なんども声をかけようとしたけど、かけられそうになくて。」


「それで、ここに?」


「うん、せっかくだし、話すならこの公園がいいかなって。あ、でね、結婚式することになったんだけど、そんなに大きな式を挙げるつもりはないの。家族と、仲のいい友達何人かだけ誘って。それでさ、その結婚式に、けんちゃんを招待したくて。」


「えっ、俺!?な、なんで、俺なの?」


「いや、まぁ、仲よかったし。とにかく、来て欲しいの。お願い!!」


「え、う、うん。別にいいけど。」


「ほんと!?良かった!!ありがとう。」


「う、うん。」



なぜか、元カノの結婚式に行くことになってしまった。あんなにお願いされてしまったら、俺は断れない。たとえいや...


「けんちゃんって、嫌だなぁって思っても、断らないでしょ、絶対。」


まさかの、心を読まれてしまった。


「昔からそう。私と付き合うときだって、私の告白とか関係なかったんでしょ。お願いされたからOKしたでしょ。」


「い、いや、そんなことない」


「そんなことあるよ!」



確かに、断れなかったのかもしれない。もしほかの人から先に告白されてたら、普通に付き合っていたかもしれない。でも、適当になんか答えてない、いい加減に返事してない、


「お前ならいいって思ったんだ!!」


「えっ?」


「お前なら、ホントの俺を出してもいいって思ったから、付き合ったんだ。それに、俺は、ちゃんと、お前が好きだった。」


「...だよね。ごめん、いい加減なこと言ってたのは、私のほうだね...。...でも、嬉しい。ありがとう、けんちゃん。」


「いや、こちらこそ、大きな声出して...ごめん。」


「結局、けんちゃんはなんにも変わってないね。いつも他人が第一優先で、自分のことは第三優先ぐらいにして。優しすぎだった。...でも、そういうところが、好きだったのかな。」



俺は、ずっと、自分のダメなところだと思っていた。なんにでも、はいっ、て言って、自分の意見を言わない。でも、彼女にとっては、そこがいいところだった...?よく分からない。よく分からないけど、なんだか、自信を貰った気がした。


「あっ、もうこんな時間!!ごめんね、長い間付き合わせちゃって。」


「ううん、楽しかったよ。」


「私も楽しかった。...じゃあね、けんちゃん!!」



「りんちゃん!!!!」



俺は、彼女の背中を見て、そうとっさに叫んだ。そうすると、彼女は振り向いて、こっちを見た。



「ありがとう!!!!...幸せになれよ!!!!!!」


「うん...!!けんちゃんもねー!!!!」






こうしてら一日が終わった。俺は今日で、何か変わった気がした。りんちゃんのおかげなのかもしれない。



もしかして、俺は、俺のままでいいのかな。







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僕らの生活に助けなどいらない 竹内こぴん @coco21

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