あなたと私の距離

御角

あなたと私の距離

 ああ、今日もあなたは美しい。私とは住む世界が違う。頭ではわかっていても、どうしても離れられない。だからといって触れることも出来ない。いつもこの距離を保つので精一杯だった。


 気がついた時にはもうそばにいて、ころころと表情を変えるあなたに私はずっと夢中だった。もっと近くであなたを感じたいと、何度もそう思った。

 でも、これ以上近づけば、あなたとの関係が壊れてしまう。それが辛くて遠くに行きたくても、一度引き寄せられてしまったものはもう離れることは出来ない。だからここで、近くて遠いこの距離で、あなたを眺めることしか私には出来なかった。触れたら最後、あなたも私も破滅してしまうことなんて分かりきっていたから。


 あなたはきっと、この思いに気がついてはいない。いつも、私の表の顔しか見せてこなかったから。裏ではいつもへこんで、自分の醜さに落ち込んでいることを知ったらあなたは幻滅するかもしれない。だから今まで黙ってたの。

 でも、それももう無理みたい。ごめんなさい、私は本当は我慢のできない悪い子なの。あなたが思っているような明るい子じゃない。あなたみたいに、綺麗ではいられない。


 永遠とも思える時間を、あなたと共に過ごせて楽しかった。自分勝手だね、私。友達が背中を押してくれたことを言い訳にして、あなたと一緒になろうとしている。無理心中みたいでちょっと嫌だけど、最初で最後だから。せめて、この一瞬だけは……あなたと触れ合って、あなたと眠りたい。


 もうすぐ、手が届きそう。あなたの顔がこんなに近くにあるなんて、なんだか夢みたい。夢だったら、これからもずっと二人でいられたのかな?

 いや、私達、きっといつかはこうなる運命だった。私があなたを見つめたその瞬間から、もう私は破滅していた。


 そろそろお別れの時間だね。今までそばにいてくれてありがとう。生まれ変わっても、きっとまた私達はひかれ合う。なんとなく、そんな気がする。


 私の唇が、あなたに重なる。刹那、二人の体は溶け合い、混じり、崩れていく。

 おやすみ、さようなら。愛しい地球あなた


 宇宙に漂うのは、どちらのものともつかない二人の残滓ざんし

 こうして、互いをいつくしむ二つの惑星は、その一生を終えた。

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