夜の底

目々

夜の底

 耳障りな雨音に目が冴えて、眠るのを諦めガタつく換気扇を回して煙草に火を点ける。

 換気扇に吸い込まれていく煙を眺めているうちに、いつも「終電逃した」とか「電車賃がねえ」と玄関前に着いてから電話を寄越して、ドアを開けると我が物顔で入り込んでは煙草を一本ねだってのうのうと一晩を過ごして朝方勝手にいなくなるのが常だったのに、ある夜にまだ数本しか手をつけてない煙草一箱をこちらに押しつけてからふいと出て行ってそれきり音信不通になった先輩のことを突然に思い出す春の真夜中。

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夜の底 目々 @meme2mason

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