こぼれ落ちたその先で、生きる意味をさがして。異界の海を征く転移冒険譚!
- ★★★ Excellent!!!
誰かに突き落とされ、冷たい海へ真っ逆さま。
そうして奏澄(かすみ)が流れ着いた先は、海域を線引きされた異世界でした――。
この物語の主人公である奏澄は、何かの異能を授かるわけでもなく、特別な使命を帯びるわけでもなく、身一つ(とわずかな所持品のみ)で波打ち際に打ち上げられていたのでした。
途方に暮れる彼女の耳に聞こえてきた、人同士が争う音。
彼女はその場所で死に掛けた一人の男性を拾い、助けます。どう見ても堅気ではないその人物を治療するため、唯一の所持品さえも投げうって、です。
一目惚れではなく、義侠心でもなく。
二人の間にあるのは共依存。
はじかれた者たち同士がすがり合うだけの関係は、しかし、旅ゆくうちに変化してゆくことになります。
奏澄が一貫して、良くも悪くも日本人らしいことが魅力であり、物語の鍵となっています。それに惹かれた仲間により海賊団が結成されてゆくのですが、描かれる心情は丁寧で、進展してゆく人間関係や恋愛はきめ細かいです。
互いが互いへの想いを認識したとき、湧き起こる願いは何なのか。
見どころの多い作品です、ぜひご一読ください。