こぼれ落ちたその先で、生きる意味をさがして。異界の海を征く転移冒険譚!

 誰かに突き落とされ、冷たい海へ真っ逆さま。
 そうして奏澄(かすみ)が流れ着いた先は、海域を線引きされた異世界でした――。

 この物語の主人公である奏澄は、何かの異能を授かるわけでもなく、特別な使命を帯びるわけでもなく、身一つ(とわずかな所持品のみ)で波打ち際に打ち上げられていたのでした。
 途方に暮れる彼女の耳に聞こえてきた、人同士が争う音。
 彼女はその場所で死に掛けた一人の男性を拾い、助けます。どう見ても堅気ではないその人物を治療するため、唯一の所持品さえも投げうって、です。

 一目惚れではなく、義侠心でもなく。
 二人の間にあるのは共依存。
 はじかれた者たち同士がすがり合うだけの関係は、しかし、旅ゆくうちに変化してゆくことになります。

 奏澄が一貫して、良くも悪くも日本人らしいことが魅力であり、物語の鍵となっています。それに惹かれた仲間により海賊団が結成されてゆくのですが、描かれる心情は丁寧で、進展してゆく人間関係や恋愛はきめ細かいです。
 互いが互いへの想いを認識したとき、湧き起こる願いは何なのか。
 見どころの多い作品です、ぜひご一読ください。

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