海賊モノであり、異世界ものであり、成長冒険譚であり、ラブロマンスであり。
様々なジャンルが絶妙に絡み合い、それでいて無駄がなく、一本の真っ直ぐな芯が通っている。どのジャンルのファンが読んでも間違いなく「面白い!」と言える作品です。
ラブロマンス好きの私としては、主人公カスミとレイズの関係性が堪らなく良い。絶妙な距離感を保ちつつ、じわりじわりと近付く距離。ゆっくり心を寄せ合う2人の姿は愛おしく
、とにかくキュンキュンさせられる…!
2人を取り巻く仲間たちも素敵。それぞれキャラクターが立っていて、宴のシーンは見ていて楽しくなります。
世界観、設定、描写も秀逸。作品の礎となっているのは間違いなく、作者様の知識の深さだと思います。
異世界、海賊、ラブロマンス、冒険譚、じれじれ恋愛…これらのワードにピンと来た方はぜひ、手に取ってみてください!
誰かに突き落とされ、冷たい海へ真っ逆さま。
そうして奏澄(かすみ)が流れ着いた先は、海域を線引きされた異世界でした――。
この物語の主人公である奏澄は、何かの異能を授かるわけでもなく、特別な使命を帯びるわけでもなく、身一つ(とわずかな所持品のみ)で波打ち際に打ち上げられていたのでした。
途方に暮れる彼女の耳に聞こえてきた、人同士が争う音。
彼女はその場所で死に掛けた一人の男性を拾い、助けます。どう見ても堅気ではないその人物を治療するため、唯一の所持品さえも投げうって、です。
一目惚れではなく、義侠心でもなく。
二人の間にあるのは共依存。
はじかれた者たち同士がすがり合うだけの関係は、しかし、旅ゆくうちに変化してゆくことになります。
奏澄が一貫して、良くも悪くも日本人らしいことが魅力であり、物語の鍵となっています。それに惹かれた仲間により海賊団が結成されてゆくのですが、描かれる心情は丁寧で、進展してゆく人間関係や恋愛はきめ細かいです。
互いが互いへの想いを認識したとき、湧き起こる願いは何なのか。
見どころの多い作品です、ぜひご一読ください。
題材は海賊。でも、とても優しいお話です。
海に突き落とされて異世界転移してしまった奏澄。
右も左も分からず、助けてくれる人もいない。
そんな状況下で、人助けをする。
芯の通った人なのかな、と思いきや、そこまで強くない。
そんなところに、メイズや海賊団の皆が惹かれたのかなと思いました。
心理描写がとても丁寧で、奏澄とメイズのラブロマンスに一喜一憂してしまいました。
時折、ライアーとマリーの目線に立ってしまうほどに。
成長は勿論のこと、二人が惹かれていく過程はとても素敵でした。
その二人の関係は「共依存」と書かれていますが、痛々しいものではありません。
時々垣間見得る独占欲が可愛らしいと思えるほど魅力的で、優しいんです。
冒険あり、ラブロマンスありの、そんな素敵な物語を読んでみませんか?
現代日本で生きづらさを感じていた女性奏澄が異世界へと迷い込み、居場所を得ていく物語。同時に、彼女が孤独な海賊の心を癒していくという共依存の物語でもあります。
超常現象的な意味合いでの特殊能力がある訳ではなく、いたって普通の女性である奏澄ですが、彼女の「他人を思いやる心」はとても大きな力だと思います。
最初に出会った海賊メイズをはじめ、どんどん仲間が増えていく様子は、まさに王道!
仲間たちを虜にする奏澄の善良な人柄が、日常の描写から垣間見えて、微笑ましい気分になりました。
もちろんこの世界に暮らすのは、良い人ばかりではありません。胸が苦しくなるような切ないエピソードもあります。
そもそも、帰り道を探す物語ですから、旅の終わりには「別れ」の二文字がちらつきます。
ですが、奏澄の人柄ゆえか、どこか作品全体に優しい雰囲気が漂うところも魅力的です。
さて、本作は完結済みですが、続編もあるそうですよ!
このタイミングでぜひ、冒険の世界にどっぷり浸りませんか?
素晴らしい。
本当に美味しいものを食べた時に「美味しい」としか言えないのと同じように、ただただ「素晴らしい」作品。
海賊ものではあるけれど、派手な戦闘シーンなどはほとんどありません。
また、Web投稿用に考えられたと思われる軽いタッチの作品サブタイトルのような、軽い作品でもありません。
人物たちの心理描写に重きを置いた、本格ラブロマンスです。
ある日異世界へ飛ばされてしまった奏澄は、元の世界へ戻るために船に乗って旅をする。
それはすなわち、いつか別れの日が来ることを意味している。
この世界で出会った素敵な仲間たち、そして自分の最も大切な人とも。
旅を続け、仲間たちの絆が深まるほど、その時の訪れが怖くなる。
この心揺さぶるストーリーラインを軸に、世界の謎、秘密たっぷりの政府的機関、四大海賊など、ワクワクする要素も取り込まれ、小説として素晴らしい仕上がりを見せている。人物たちは大人な考えを持つ人が多く、冷静かつ客観的な視点が作品に品の良さを与えている。
大人の女性向け恋愛冒険小説。だと思う。
こんなすごい小説が普通にWebに投稿されているすごい時代だ。
愛情でも信頼でも依存でもなく、「共依存から始まる成長と愛の物語」。この小説のストーリーや魅力がギュッと詰め込まれた、大好きなキャッチコピーです。
奏澄はある日海に突き落とされ、異世界へと転移してしまう。そこで出会った傷だらけの海賊を助けたことで海賊は奏澄の用心棒となり、元の世界へ帰るための旅が始まる。
鮮やかな導入、無理なく噛み合う様々な要素、それらを描き出す筆力。小説の最初から最後まで全部が好きで、名場面だらけなので、魅力を挙げ出したら切りがありません!
現代社会で生きづらさを抱えていた奏澄は、異世界に転移し、メイズや仲間と関わる中で己の内面と向き合い、様々なことに気づき、考え、成長していきます。
また、一生懸命な奏澄の生き方は周りを惹き付け、彼女は次第にたくさんの仲間に囲まれていきます。
メイズとの関係、そしてその他のメンバーとの関係が徐々にしっかりとして、お互いが信頼で繋がれていく様は、読者にも勇気や希望を与えてくれます。
しかし、作中で大事に描かれているのはそういった正の面だけではありません。負の面にも角度を変えながら丁寧に寄り添っています。
己を形作っているもの。自分の価値観という殻を割り、他人や世界に馴染もうとする様。アンビバレントな感情、等々。影になっているところに光を当て、漠然としていたものに形を与えるように、一筋縄ではいかない人の心が絶妙に描き出されています。
その切り込み方の下地には、経験と観察だけでなく、知識もあるのではないかと感じました。
成長と愛には光ばかりではなく闇の面もある。明るい気持ちにも暗い気持ちにも寄り添ってくれる、希望や感動に溢れた物語です。
是非たくさんの方に読んでいただきたいです!
傷ついた海賊を救ったヒロインが、「お前の好きに使ってほしい」と命を預けられるという垂涎の展開から始まる物語。
海賊は銃を所持するお尋ね者ですが、理性的なアウトローでとっても魅力的。
また、奏澄に対してだけ時々見せる余裕の無い表情もたまりません。
物語の進行に従い、次々に仲間も増えて大所帯になりますが、ヒロインの奏澄がいい意味で異世界に染まらないところが、一押しの要素です。
そうすることが時に危険であっても、困っている人がいたら助け、仲間をとことん大切にする。
奏澄のまっすぐな思いが出会う人々の心に響いて、彼女を慕うたくさんの仲間に囲まれていく様子は、どこかで生きづらさを感じながら暮らす私たちをも癒してくれます。
「元の世界に帰りたい」と始めた旅の終着点で、彼女が、そして彼がどんな選択をするのかを見届けるために、優しい風が吹く船旅に、出かけてみませんか?
【※第一部完結時点のレビューです】