オープニングは殺人場面から

タカハシU太

オープニングは殺人場面から

 映画の本編が始まった。スクリーンに映し出されたのは、まるで鏡に反射して向き合う形となった、そっくりの劇場の客席だった。ただし、あちらが満席なのに対し、私の座っている側は他に客のいないガラ空き状態だ。

 一向に物語が進まないことに、私も銀幕越しの観客も同じように焦れ始めた。だが、急にあちら側が緊張感に包まれた。何かあるのか、私のほうを指差したり、目を背けたりする者がいた。

 気になって、背後を振り返ってみた。そこにはズタ袋を頭から被った巨漢が大鎌を今にも振り下ろそうとしていた。

 ああ、ホラー映画の冒頭で殺されるキャラだったのか、私は。

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