第5話 洗礼の儀の前
「領主様。教会に着きましたぞ。」
御者をやっているローゲンが到着を教えてくれた。
「そうか。終わるまでここで待っていてくれ。」
「わかりやした。坊ちゃんもいいスキルが手に入るといいですな。」
「ありがとう。ちなみにローゲンのスキルはなんだったの?」
「そうでやんすね。あっしが授かったスキルは操術っいうもんです。」
この世界では、洗礼の儀で受けたスキルを活用することのできる職種に就くのが一般的だ。貴族出身のものが辺境に行くこともあるし、逆に平民が王城で働くことのできる半実力主義だ。まぁ何事にも例外は有るが,,,
とにかく、ほとんどの人が洗礼の儀で授かったスキルで人生が決まるのだ。
「そうなんだね。僕もスキル貰えるといいな。」
「神様は平等なんすよ。ある意味ね。貴族も、平民も、善人も、悪人も。まぁ、5歳で善とか悪とか分らんと思いますが。全員にチャンスを与えてるわけです。そこから、欲しいスキルが授かるかは別ですけどね。」
「洗礼の儀が終わった後に嘆くだけで終わるのか。はたまた、そこから這い上がり栄光を掴むのか。その人次第ですよ。」
ローゲンが言うと説得力があるな。
「アレク。早くいくぞ。」
「ごめんねローゲン。父さんに呼ばれたから行かないと。」
「ええ。いってらしゃい。ここでまってますよ。」
やばい。速く行かないと怒られる。屋敷を出る前も遅れてしまったのだ。次は怒られてしまうかもしれない。
「申し訳ありません。少しローゲンと話し込んでしまって、、、」
「ローゲンにスキルについて聞いていたのだな。なんとなくスキルについてわかっただろう。しかし、それだけでは不十分だな。もう少し詳しく説明しよう。スキルには先天的に身につくものと、後天的に身につくものがある。先天的に身につくものがこれから行う洗礼の儀で授かるもの。一番有力な説が、生前の善行により、貰うことのできるスキルの数と質が決まるというものだ。後天的に身につくものが、戦闘後や長年の鍛錬、迷宮で見つかるスクロールを開くことによって、開いた本人が手に入れることができる。ただ、高値で取引されている。最低でも金貨百枚だな。」
「母様。金貨百枚とはどのくらいなのですか?」
「金貨一枚で平民が一か月暮らせるくらいよ。」
「そんなに高いのですか?」
「そうだな。迷宮で見つかるスキルは役に立つものが多いからな。」
「これはこれは。お久しぶりでございます、領主さま。」
誰だ?この人のよさそうなおじさんは。
「久しいな。キース。息子の洗礼の儀で来させてもらった。今日はよろしく頼むぞ。これが息子だ。アレクハイトという。」
いやいや。知らん人に急に挨拶させようとすんなよ。
「今日はよろしくお願いします。キースさん。」
「私なぞに敬語を使う必要はありませんよ。こちらこそよろしくお願いします。アレクハイト様。今日の洗礼の儀ですが…
正直言うと立っているだけで大丈夫です。勝手にスキルが授けられます。私も証明人のようなものでやることがないのですよ。ほぼ形だけです。」
神様があんなんだから下もこんなふうになるのか。
「わかりました。」
「スキルの内容も自己申告で大丈夫です。平民の方も、貴族の方もその人の切り札となるものなので言いたくないとおっしゃられる方が多いのです。しかし、大貴族や王族の方々はスキルをすべて申告される方が多いです。スキルの数と質こそ力の象徴ですから。ただ、虚偽の申告をしてはいけません。虚偽の申告をした場合、天罰がくだります。」
「天罰とは、どんなものなのでしょうか?」
おぉぉい神様!天罰とか聞いてねぇぞ!
隠蔽とか意味ねぇんじゃないか!?
「天罰の内容は、、、。絶対に嘘がつけなくなる呪いです。虚偽の申告をすると、何事にも嘘をつくことができなくなります。」
何だ。そんなこと「今、そんなことかと思いましたね?嘘をついたことがない人はこの世に一人もいませんよ。貴族や王族だけでなく、平民もです。」
「考えてみてください。自分の考えがそのまま声に出るのです。本当のことを言うのは美徳ですが、本当のことを言いすぎると、様々な人に嫌われて、いずれ相手にされないようになり、一人孤独に死んでいくのです。」
こわっ。内容も怖いし、言い方も怖い。
「そうだぞ。アレク。貴族というものは腹の探り合いがものをいうのだ。仮に本音を晒してみろ。どんな罪を吹っ掛けられるかも分からん。どんなに信頼している相手でも本音を言ってはいけないぞ。」
「私もほとんどのスキルを申告したわよ。重要性の高いスキルは秘密だけどね。流石に本音を隠せないのは危ないのよ。」
「わかりました!」
貴族も怖ぁ~!嘘つく絶対にやめとこ。
「さて、立ち話もここまでにして教会に入りましょうか。」
「それもそうだな。」
ここから俺の自由な人生が始まる!はず!
チーレム無双?そんなのよりもスローライフがしたい! 雅(みやび) @sjsbxjsj
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