第4話 成長
「アレク様。どちらにおられますか。」
「ここだよ、マリア。」
「今日は教会で洗礼の儀がある日だって言ったじゃないですか。もう。」
「ごめんね。マリアって可愛いからついいじめたくなっちゃうんだ。」
「可愛いって…。これは将来女ったらしになりそうですね。」
「何か言った?」
「なんでもございません。アレク様、旦那様と奥様が待っておられますよ。」
「もうそんな時間なの?待たせないように早くいかなくちゃ。」
「その前に身支度を整えますので部屋に戻りますよ。昨日、部屋にいてくださいってあれほど言ったのに。」
「ごめんね。じゃあ早くしようか。」
「はい。なるべく早くしなければいけません。今日は洗礼の儀の日なのですから。」
「そうだね。」
この話の流れから分かるように僕はもう5歳になった。あれから五年、恥辱の日々に耐え忍んでいた事が昔のようだ。前世の自分より年下の猫耳メイドと外見が高校生と言ってもバレないような母親に世話をされたんだ。オムツを変えられるときなんて、恥ずかしくて顔を見れなかったよ。あの地獄はもう2度経験したくない。
「アレク。遅かったけど何してたのかな?」
やばい。リディア母さんが怒ってらっしゃる。その隣では、ロイド父さんが真顔でこっちを見ている。めっちゃ怖い。
「申し訳ございませんでした。」
「全く。遅れたら大変なことになるんだからな。人の上にたつのだからしっかりとしなければならないぞ。」
「分かりました。」
早速僕らは馬車に乗り込み、教会への道のりを走り出した。
「アレクは、どんなステータスを授かれるか楽しみだ。」
「そうね。この子はいずれ、家から出て行くことになるかもしれないから苦労しないようなステータスであってほしいわ。」
やはり俺はこの家から出て行くことになるのだろう。それまで両親に親孝行をしておきたいな。
「母上。私は将来家を出て行くのですか?」
「そうね。貴方にというか子供たちに婚約者はつけないから学園卒業後になるわ。それまでに婚約者を見つけるか、自由に生きるか決めるといいわ。」
「俺たちは学園で出会って結婚したからな。当時では珍しい恋愛結婚だったんだぞ。」
「反対はされなかったのですか?」
「反対はされたが結局、俺の父と殴り合って認めさせたんだ。2人とも婚約者がいなかったのが幸いだったよ。」
「そうだったんですね。まぁ、僕は自由に生きたいので、結婚とかは考えていませんけどね。」
本当は、兄に養ってもらいながら生きていくつもりだけどな。
「自由にか。それならば冒険者が似合っているかもしれんな。父としては危険なことはしてほしくないんだがな。」
「そうね。こんなに可愛いアレクの顔に傷が付くなんて想像もしたくないわ。」
「あっ。あれが教会ですか?」
危ねぇ。変な方に話が流れるところだった。
「そうだな。もうすぐ着きそうだから降りる準備をしておこうか。」
さて。あの神はちゃんと全部のスキルをつけてくれたのだろうか。楽しみだな。
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