第6話 動物のような怪物

 ひい・・・・・ふう・・・・・みぃ・・・・・は・・・・・。

 もう、花帆は倒れそうになっていた。

「キツイ、きつすぎるよぉ」

 未空さん未空さん、あなたお腹空いたってことでそう言ってるだけでしょ?

「もう、いやだ。行きたくない」

 大佑が倒れこんだ。

「頑張ろうよ、来ちゃったもんは仕方ないでしょ?」

「そんなこと言ったってさ、どうせ死ぬんだよ」

「ここで餓死するよりはマシでしょ? て、どうせここにいたって出られないんだって」

「ここでゆっくり死ぬ方がましかな・・・・・」

「諦めちゃダメでしょ!! そりゃあ苦しいだろうけど、チャンスはある。はず」

「おい、さっさと来い大輔!!!! 立て! おぶってやるから」

 背の高い為義がそういうと、渋々と大佑は立ち上がった。

「行けばいいんでしょ、行けば。行くから・・・・・」

 ほぼ絶望に近い表情の大佑。大丈夫かな・・・・・。


『どうしたんだい?さっさと次のフロアに行ってくれ。次のフロアからは、怪物が登場するよ。待ち構えるのは、スピードデーモンとサボテン猫だ! せいぜい頑張ってね。あんまり恐れるのは良くないから・・・・・』

 伯爵のアナウンスが終わったところで、行かなきゃいけないみたいだ。

「アケルヨ・・・・・」

 マークがドアを開けるボタンを押した。

 ウィーン

 ドアが開くと、そこには大きなライオンみたいな動物がいた。

「あれが・・・・・スピードデーモンだ」

「スピードデーモンって何?」

「それは・・・・・ちょっと待って航志危ないっ!」

 わたしが言ったおかげで、航志は逃げられたが・・・・・スピードデーモンが走り出した。

「ちょっと待て!! なんで俺ばかりが?! 為義の方が肉は美味いぞ?」

 航志がそんなことを言いながら懸命に走るが、スピードデーモンは止まらない。ほぼ横を走っていた。

「食われる! ヤバい食われる!」


 スピードデーモンの体を花帆はよく観察していた。

 ライオンの顔に牛のような曲がった角。足は五本で、とても長い爪が付いていた。ギラギラした目で、航志を追っている姿は猛獣そのものだ。

 そして、航志を追っかけるときは、足をタイヤのようにぐるぐる回して走っている。5本の足が効率よく回ることで、俊足で駆け回れるのだ。


「キャアッ?!」

 突然、聖奈子が悲鳴を上げた。

「どうしたの・・・・・あ、ネコ」

 大佑がネコを確認したみたいだが・・・・・。

「あ、どっか行った。どこ行ったのかな?」

 って・・・・・大佑、大佑! 危ない・・・・・。

「ウワァァァ!!!! 僕の方に来たぁぁぁ?!」

 今更かよー! って、早く逃げて!

 と、言いたいが、花帆は気づいていた。

 スピードデーモンは足を回転させながら高速で進むから、逃げることはほぼ不可能だ。何より、身体の差があるから、当たったら致命傷だ。


 パラパラッと、リュックサックの中から図鑑を取り出す。

「す・・・・・すぴ・・・・・あった」

【スピードデーモンは、アメリカ大陸に古くから住む怪物。ライオンの頭に牛や羊のような曲がった角が生えていて、鋭く長い爪が生えた足は五本ある。スピードデーモンは小動物を狙って走る。足をぐるぐると回すように走り、ウサギなどを追い回す。だが・・・・・】


「花帆! そんなん見てる場合じゃないっ! 後ろ見て後ろ!」

 未空が必死に叫んでたから、後ろを振り返った。すると、そこには・・・・・。

「でででで出たぁぁぁぁぁ?!」

 立ってましたよ、スピードデーモンさん。

 鋭い歯と鋭い爪を光らせて、コチラを睨んでいる。

「ちょっとなんでこっちくんの!! 私痩せてるから未空の方がいいって!! イヤヤヤヤヤヤヤヤヤ!!!!」

 変な叫びをあげながら、私は必死に逃げる。どこか、隠れられるところ。障害物があるところ・・・・・。

「ないっ?!」

 と思うと、何やら、積み木のようなものが置いてある場所があった。

「あそこだ・・・・・みんな、あの積み木を並べて!!」

 そう聞くと、みんなはそっちに避難して積み木を適当に並べ始めた。

 花帆はというと、スピードデーモンの高速で回る足の間をクルクルと回る。

 どうやら、このスピードデーモン、小回りは聞かないらしい。そして、すぐ止まれないらしい。

「あれ?! 為義、何でこっち来たの?!」

 為義が何やら積み木の場所からこっち目がけてダッシュしてきた。

「心配すんな! 俺には作戦がある! 航志から託されたな!」

 航志が言うなら大丈夫だと思うけど、不安・・・・・。


 私は命からがらスピードデーモンから逃れて、積み木の場所へ行った。

 あ、ちなみになんで積み木かって言うと、止まれないデーモンは障害物があったらとりあえず何とかなるかなぁと思って置いてみたわけ。

 で、みんなと合流して為義を観戦することになったけど・・・・・(これって、酷いこと?)。

「あいつ、結構いけるな」

 航志が感心してる。

 為義は、スライディングを繰り返してデーモンの股をどんどん切り抜けていく。もはや、為義はデーモンを遊んでる。

 と、思ったら為義、壁にぶつかった。

 デーモンに狙われてるけど、前か横にしか逃げ場が無くなった。

「どうすんの!!!!」

 未空は涙声で叫んだが、航志と聖奈子はにやにやしていた。

「ちゃんと作戦があるのよ」

 デーモンが為義目がけて突進した!!!! 為義は、最後の最後まで壁にいたところを・・・・・。

 ドーン!!!!

 ギリギリでひらりとよけた。そして、デーモンは壁にドカーンと激突した。

「おぉ、ナイス!」

 為義は、デーモンの背中に乗っかって、ガッツポーズをしていた。


「すると、今度は別の生き物(?)が襲ってきたんだけどぉ?」

 聖奈子が言ってる。聖奈子の足がどんどん細い傷だらけになっていく。ああ、聖奈子のキュートな足が・・・・・。

 その足に細い線のような傷をつけていくのは・・・・・ネコ!! しかも、ただの猫じゃなくって、ヤマアラシみたいに背中にトゲが生えてる!

「これが、最初の放送で言ってたサボテンネコっての?」

「さっきのやつじゃん」

 ああ、大佑が見たやつね。

「そんなことどーでもいいので、とりあえず助けてくれます? 私もう死にそうなんですよ・・・・・」


 というわけで、じゃんけんで負けた(じゃんけんしてる余裕があったってこと!)航志がサボテンネコを抱くことになったんだけど。

「ほーら、ネコちゃん、こっちおいでぇ・・・・・」

 そんなこと言ってたら、ネコはあっさり、航志の足に突進した! しかも、トゲだらけの背中を向けて!

「イッテぇ!」

 しかも、その仕上げとばかりにトゲだらけの腕で航志の顔面をひっかきまくった!

「いてぇぇぇ!! いてぇんだよ、ふざけんなごらぁ! うわいて! もうやめろ・・・・・イタタタタッタッタ!!!!」

 みんな、副会長の悲劇を冷めた目で見ております・・・・・。

 そんな時、大佑が動いた!

「ネコちゃん、こっちおいで♬」

 大佑、そんなこと言ったってこのネコには通用しないよ。痛いだけだよ・・・・・。

 て思ってたら、あっさりネコはゆっくり近づいてきた。最初は警戒するように来たけど、大佑の匂いをかぐと、あっさり・・・・・。

「ミャー♪」

「「「「「なついたぁぁぁぁぁ?!」」」」」

 大佑以外の全員がビックリしてる。

「オーマイガー! ダイスケ、スゴイ!」

 マークは少し反応が遅かったかな・・・・・。


 それからというものの、航志にはひっかきまくり、大佑にはなつく。そして、私たちには冷めた目で見るというネコが仲間になった。

「名前は何にするんだ?」

 為義が言うと、大佑が考え始めた。

「サボテンネコだから・・・・・」

「なんか、良い名前ないでしょうか? サボテンはカクタスだけど・・・・・」

 聖奈子が考えてる。

「じゃあ、カクタスにするのか?」

 航志が問うと、やはりみんなが悩む。

 沈黙を破ったのは、未空だった。

「そんなの簡単じゃん!! サボテンネコだからサーボでいいじゃん!!!!」

「「「「「「・・・・・」」」」」」

 みんな、黙った。こんなダサい名前に黙ってた。

 そこで、飼い主(仮)さんが考えた。この名前を認めるべきか・・・・・?

 サボテンネコ自身は無表情でいる。

「まあ、イインジャナイ?」

 って! 納得すんの?!

「飼い主(仮)の大佑が納得しちゃったから、それでいいじゃん」

 というわけで・・・・・サボテンネコのサーボがここに誕生シマシタとさ。ちゃんちゃん。

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怪ノ屋敷攻略班!~恐怖屋敷からの大脱出~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555

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