第5話 毒生物の住みか
伯爵風に金を渡すと、私たちは一つ目のフロアに入った。
「う、薄気味悪いところ・・・・・もう帰りたいよぉ」
最初に弱音を吐いたのは、大佑だ。
「しっかりして。まだ始まったばっかでしょ?」
私はそう励ますけど、足がガクブルだ。ブルブルブルブル・・・・・それは、みんなも同じらしい。航志でさえ震えてるんだもん。顔が青くなってる。
『ピンポンパンポーン。さあ、みなさん、最初のフロアですよ。ここにいるのは、まだ最初の方のものです。それでは、中に入っているものを紹介しましょう。最初は怪物ではないので安心してください。毒グモ、毒ヘビ、毒サソリです。次からは怪物の名前は言いませんよ?まあ、せいぜい頑張ってくださいね~』
翻訳機越しに伯爵の声が聞こえてきた。
クッソ~、なんか腹立つぅ~!! でも、やるしかないよね。
「って、何だって? 毒グモ毒ヘビ毒サソリ?! 終わったじゃん!!」
未空が絶叫してた。まだ見てもないのに・・・・・って、そうだった!!毒生物がいるんだった!!
そんなかんなで、怖い、帰りたい、死にそう、毒の生き物、どうやったら帰れる、おかあさ~ん・・・・・ひたすらいっぱいみんなが叫んでるうちに、第一フロアの入り口にたどり着いた。
「ドウスル? アケルカイ?」
マークがみんなに問いかけてくる。
「開けるしか・・・・・ねぇだろ・・・・・」
為義でも震えながらいうのだから、みんな嫌だっていうのかって思ったけど、聖奈子が言ってしまった。
「仕方ないわ。やるしかないでしょう」
お嬢様が言ったことでみんな次々に賛成に転じ、渋々私も賛成した。
私は、怪物専門で生き物は詳しくないんですけどぉ~!!
ウィーン
フロアの重い鉄のドアが・・・・・電気のパワーでスムーズにあいた。
「もっと薄暗いじゃん・・・・・」
「怖い・・・・・」
「お化け出そう・・・・・」
「毒ヘビとか、いそうなんだけど・・・・・」
大佑、未空、大佑、未空と怖がりの二人の会話に耳を傾ける。
――うん、毒ヘビはいるって言ってたじゃん。未空、天然だね。
そんなこと言ってたら・・・・・。
「シャァーッ!!!!」
「ギャァァァァァァ!!!!!!」
誰かが叫んだ。声からすると男だけど・・・・・。
「へ、へ、へへへ、へ・・・・・ヘビ・・・・・助けてぇ・・・・・」
そこで腰を抜かして倒れていたのは航志。なんか、航志がこんな姿なのが面白かった・・・・・じゃなくって!そこにいたのは、コブラだった。めっちゃデカいコブラ。そりゃあ腰を抜かす・・・・・私もなんだけど。
「ウワァァァァァァ!!!!!!」
また、航志が叫んだ。航志のお尻の方に毒グモが近づいてきていたからだ。
「サソリィィィィィィ!!!!!!」
サソリも来たみたい・・・・・マズい。
「ヤバイィィィィ!!!!」
「タスケテェェェェ!!!!」
「お母さん・・・・・・・」
「ヤバい死ぬ!!!! 誰か~!!!!」
「オーマイガー!!!!」
みんな、ひたすら叫んで逃げ回っている。地面を見ながらひたすら逃げる。たまに毒グモを踏んだりするけど、そんなの関係ない。ひとまず、ヤバいのだから。
ヘビはものすごいスピードだし、サソリが針を近づける。そして、クモが肩に上ってきて毒を注入しようとする・・・・・。
そんな時、私と聖奈子が衝突して転んでしまった。
そこを狙ってきたみたいにヘビが襲ってきた。しかも、10匹ぐらい!!
「きゃぁぁ・・・・・助け・・・・・」
聖奈子は恐怖で声も出なくなっている。
「聖奈子、しっかりしてぇ・・・・・ギャァァァ!!!! クモ!!!! いつの間に!!!!」
毒グモが私の頭の上にまで上ってきたことをたまたま気づいたのだが・・・・・。
「ヤバイィィィィ!!!! しぬぅぅぅぅ!!!! 聖奈子、タスケテェェェェ!!!!」
私は聖奈子に助けを求める。だが、聖奈子もダメだった。
「さ、さ、サソリ・・・・・いやぁ・・・・・」
聖奈子のキュートな細い足にサソリが迫っていた。真っ黒サソリだ。
プスッ
サソリ、刺した。聖奈子を・・・・・刺してしまった。
「イヤァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!」
絶叫しても仕切れないほどの叫びを聖奈子と私はしている。
「せ、聖奈子・・・・・死なないでぇ・・・・・アアァァァァ!!!!」
この10分ほどの時間で私は何度叫んだだろう。だが、今回は親友が死んでしまうと考えるとこらえきれなくなった。
「ウワァァァァン!!!!!!」
ついに泣き出した私にも、容赦なく毒の生き物が襲う。
「聖奈子、逃げて!!!! 頑張って生きて!!!!」
私は一度はマークを狙っていたヘビから逃げながらどうにか叫ぶが、聖奈子は足が痛くなったのか、動けなくてうずくまっている。
「心配するな」
そんな状況を打ち破ってきてくれたのは・・・・・航志だ!!
「これは、チャグロサソリだ。見かけによらず、毒は弱い。死にはしない・・・・・ってこっちくんなぁぁぁ!!!!」
そうやって冷静に説明していた航志に、説明に出てきたチャグロサソリが航志の足を刺した。メガネの奥は明らかに血の気が引いている。
「イッテェェェェ!!!!」
これは痛そうだけど、私も逃げるのに精いっぱいなのだ。
「ヤバい・・・・・そろそろ、私も限界・・・・・」
後ろに迫ってくるヘビを確かめているときに、私は転んでしまった。それも、サソリにやられた航志に引っかかって。
「「あいたたたたた・・・・・」」
私にも航志にもクモに刺されたぐらいの痛さが襲ってきた。
「いってぇな! 気を付けろよ!!」
そういう航志は足を痛めて起き上がれない・・・・・とか言ってるときに、来た。ヘビ。
「キングコブラ・・・・・」
私は、恐怖で動けなくなってしまった。
「キングコブラってゾウも殺すっていう・・・・・ウソ、私、今から荒れに噛まれなきゃいけないの・・・・・?」
分かり切ったことなのに、自分に問いかける。
「イヤダァァァァ!!!!」
そんな時、助けてくれた人がいた。未空だ。
「トリャァァァ!!!!」
未空が掛け声とともに、投げたのは・・・・・ナイフ!!
ナイフは、私に噛みつこうとしていたコブラの口に見事ヒット。コブラはナイフの刃を噛んだ。そして、ヤバいと思って話そうとしたときに、口がナイフで少しだけ切れた。だから、コブラは痛みに耐えられずに退いていった。
未空、ナイス!! そう思って、私は未空に抱き着いた。あ、ちなみにそこは、何かというと非常電話の近く。オイルを撒いてあるから、いざという時は火をつけてヘビを撃退出来うるのだ!
「痛っ!! ちょっと、やめてってば!! 私だって傷だらけなんだよ?」
「ご、ごめん・・・・・」
「ところで、なんで鞄の中にナイフが入ってるの?オイルとか発炎筒も。怖いんだけど」
「ああ、それは、エリア51に行くと思ってUFO対策に・・・・・」
「・・・・・バカじゃないの。まあ、花帆らしいけどね」
・・・・・食いしん坊の未空には言われたくなかったセリフなのだが。
って時に、なんか来た!! ヘビの軍団だ!!
「ちょっと、ヤバいじゃん!! 発炎筒出して発炎筒!!」
「分かった・・・・・あれ? どこ行った?」
そんな時、頭の中に稲妻が走った。
「そうだ!! もう一個はマークさんに預けてるんだった!!」
「はぁ?! 死ぬよ?! しっかりして!!」
えっとえっと、私はどうにか使えるものを探す。コブラとかを殺せる毒物みたいな。ああ、暑い。自分の周りをカがぶんぶん飛んでいる。ん? カ?
ニヤリと笑って、私はリュックからあるものを取り出した。別に、UFO対策には関係ないが、生き物にはめっちゃ使えるもの。それは・・・・・
「さ、殺虫スプレー?! なんでもっと早く出さなかったの!! って、来てるって!」
「心配しないで、すぐ仕留めるから・・・・・あれ?」
なぜか、レバーが動かない。その間にもヘビはどんどん近づいてくる。
「おい、こっちに投げろ!!」
はっと思ってヘビの奥を見ると、スポーツ万能為義が立っていた。
「わ、分かった!」
私は、為義にスプレーを投げる。為義はなにやらいじると、そのままスプレーを噴射した!!
「シャァーッ!!!!」
ヘビは苦しそうな声を上げている。
「よし、今だ。脱出しろ!!」
私たちは言われるがままにコブラ包囲網から脱出した。
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