話す③完
そして最近まで、そうやって生きてきました。普通のふりをして。普通に卒業して、普通に受験して、普通に入学して、普通に就活もして、また卒業して普通に就職しました。でも、何かに疲れ果てちゃいました。きっと、また、気を遣いすぎたんですね。学生の頃は、それなりに仲の良い友人と、好き勝手愚痴を言って、本音で喋って、あーだこーだ文句を言ってました。それで気を遣う分の疲れを発散してました。でも、社会人は違います。毎日、取引先の様子を伺って、愛想満点のビジネスメールを送って、タイミングを見計らって上司の機嫌を確認しながら、指示をもらう。その上、職場の人間関係も気が抜けません。うまく行くように必死に頑張りました。でも、社会はその努力を当たり前だと軽く流すんです。当たり前だと言われたら、ストレスを溜めてる私は間違っているような気がしました。間違ったことを、間違ってるねそうだねって肯定してくれる世論がありませんでした。社会人は、全方向に気を遣うのが当たり前らしいですよ。何、社会人って。一度でも思ってしまい、暗く深いところに沈むともう戻って来れませんでした。古い輪ゴムのように。伸びたら伸びきったまま戻って来ないんです。戻す力も残ってません。それくらい限界だったのかな。
そんな毎日です。3ヶ月くらい続いてます。
今日も気力が戻らなくて、先生のところに行く日なのに。
カウンセリングの2時間前になって、ゴロンとフローリングに寝っ転がってうずくまってました。本当ならもう洗顔をしてコンタクトをはめなきゃいけないのに。体が動かなくて、どうしたらいいのか分からなくて。そしたら横で携帯が鳴って、母からメッセージが来ました、「体調どう?カウンセリングには行けた?」って。
ヨレヨレの服のまま、床で横になってる私は、行けない申し訳なさで泣きました。
母にずっと迷惑かけて、行かなければ先生にも迷惑をかけて。行けたらいいのに。そしたらみんなを安心させられて解決するのに。でもそれが1番難しくて、できないんです。
…先生、私は今「何に」向かって話してるんでしょうか?
怖い話 春夕は雨 @haluyuha_ame
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