第3話 偶然の出会い

数日ときは流れ…


いつしか高等学校の入学試験の前日になっていた。今日は朝早くに目覚める事ができ、天気も晴れていた。

7月10日なのもあって気温も暑かった。

アグニシュカ王国第二の町だけあって、今日も多くの魔法使いたちで街は賑わっていた。

そんな街の少し離れた所にある本屋さんで勉強に励む少女、シェリアがいた。

「明日は試験日!絶対合格したい…でも明日は聖なる日だな…お母さんが心配していたし、魔法石を持っていこう。」

シェリアに父親はいなかった。昔母と離婚してしまい、首都フロースに行ってしまったからだった。3歳の時に父が家を出て行き、それ以来一度も会っていなかった。しかし、父は魔道医療士だったため、お金持ちだった。

魔道医療士とは魔法と薬草を使って病気の治療をしたり手術を行う人達のこと。

最近では魔道心理学の応用で手相や運勢を占うことをするのも流行りであった。

シェリアの父は昔、高い魔法石をシェリアにプレゼントしていて、それが家にあったが、まだ一度も使っていなかった。それは守りの加護の魔法がかかっている魔法石だった。

アグニシュカ王国では魔法石は高価なもので、庶民にはあまり馴染みがなかった。

そして全ての国民は魔法使いのため、魔法石に頼らなくても魔法を使う事ができたため、あまり普及していなかった。

「どうか、我が魔法使いの国を建国した女神アグニシュカよ…私を守りお導きください。そして、明日試験を受ける全ての生徒たちが自身の実力を発揮できますように…」

魔法石を握りしめて、鏡の前で祈った。

シェリアの部屋には魔力上昇の効果のある鏡が部屋にあった。そして机、ベット、たくさんの本棚があった。ロフトを上がった先には、魔法薬や薬学書、錬金術で必要な物がたくさん置いてあった。

シェリアはロフトへ上がり、材料や道具を見渡した。

「今まで大事に使ってきた道具や材料たち、どうもありがとう。明日試験だからちゃんと魔法薬も錬金術も頑張ってみせるよ!」

感謝の気持ちを込めて魔法で道具を磨いて、散らかっていた材料たちを整理した。

【オルドネン】

整理整頓の魔法を使った。綺麗になったフロアを見渡し心スッキリした気持ちになった。


昼になり昼食を食べ終えた後は、ほうきに乗って街の郊外にあるパルマの滝に行くことにした。パルマの滝には数々の伝説や言い伝えがあった。なんでも、願い事が叶うとか…

「おばあちゃん行ってきまーす!」

おばあちゃんの部屋をノックしてドアを開けてそう言った。おばあちゃんは何も言わなかったけれど、少しだけ微笑んだ。シェリアも笑顔で返した。

収納魔法で収納空間からほうきを取り出した。【フリーゲン】

高く飛ぶために魔法を唱えた。

ほうきがゆっくりと空へ舞い上がる。

シェリアはほうきで飛ぶ事が大好きだった。

今日は暑くて、天気も最高!私はついてるなぁ!早くパルマの滝へ行こう!

シェリアはそう思い、ほうきで空へ飛んでいった。


パルマの滝につき、晴れた日はいつも虹が出ている方を見上げた。水魔法が苦手なシェリアは滝へ行き、水魔法で使う水にたくさん触れて、水を感じて魔力を高めようと試みた。

すると…

「シェリア…?」

私を呼ぶ声が聞こえた。その声は優しくどこか懐かしかった。

振り返ると、そこには小学生の頃、良く遊んでいた幼馴染の男の子だった!

「もしかして…ティム⁈久しぶりだね!小学校を卒業して以来だね!どうしてここにいるの??」

「本当に久しぶりだね、シェリアに会えるなんて思わなかった。俺はフロースの中学に転校したからな…でも高校でリュセールに戻ってくることになったんだ。リュセール高校を受験するんだ。」

「え⁈そうなの⁈私もだよ!同じだね!」

「そうなのか⁈また同じ学校になれるな!一緒に合格して楽しい高校生活にしよう!」

金髪で肩まである髪を一つに束ねた少年はヘーゼルの瞳を輝かせてそう言った。

小学校の時と比べて背も高くなって大人っぽくなったなぁ…でも優しいのはあの頃と変わらないな…

シェリアはそう思った。

「俺は錬金術師になりたいんだ。だから錬金術科を受験するよ。シェリアは?」

「私は魔道医療科を受験するよ。」

「それってシェリアの父さんが魔道医療士だったから?」

「まぁね…あと、1人でも多くの人を助けたいと思ったからかな…」

「絶対になれるよ!応援してるよ。」

「ありがとう。ティムの事も応援してるね。」

お互いが成長して、目標も見つかり輝いていた。

リュセール高等学校には3種類の学科が存在する。錬金術科、魔道医療科、魔法科だ。

錬金術科は錬金術を専門的に学ぶ学科、

魔道医療科は魔法を駆使して病を治療する魔道医療士になるための学科、

魔法科はあらゆる分野の魔法の使い方を学ぶ学科だ。

生徒はみな、勉学に励む。そして四年間の高等学校を卒業したら、ほとんどはギルトと呼ばれる場所に行き、なりたい職業の仕事をもらい、それぞれの機関へ派遣され仕事につくことになる。

貴族やお金持ちは高等学校の先にあるアカデミーで2年間、より深く学ぶものもいる。

シェリアやティムは平民だ。だからアカデミーには行かない。だか、2人は高等学校に入る前から、優れた才能があり、技術があった。

ティムは錬金術で生成するスキル、シェリアに治癒魔法と他の魔法を混ぜて人を癒す力があり、魔法薬を作ったり、病気のところをマッサージして良くなるようにする事ができた。

「2年も連絡しないでごめんな。でもまた会えて嬉しいよ。」

「大丈夫だよ、ティムも忙しかったよね。」

「優しいな…お前は…」

「ティムも優しいと私は思うよ。」

「パルマの滝は願い事が叶うって話があるだろ?合格祈願で来たけど、再会出来たし本当だったんだな。」

ティムはシェリアを見つめていたが、何かハッとしたようにヘーゼルの瞳を見開いた。

「そういえば、明日はサンクトゥスムーンの日だったな…特に明日は200年ぶりの月で普通の月の20倍の大きさらしい。赤く太陽のような月だから怖いような気もするな…」

「そうだね…確かになんだか落ち着かないね…でも今は試験に集中しよう!きっと大丈夫だよ!」

「あぁ…そうだな…」

滝にかかる虹を眺めた。とても綺麗でキラキラしていた。2人はそれを見ながら、女神アグニシュカに合格祈願をした。

この国で信仰されている女神アグニシュカは魔法使い達の心のよりどこりでもあった。


ティムと別れパルマの滝から、ほうきで戻っている途中でアルハンドの森に行くことにした。今の季節には木に''アンティローペ"という赤い実がなる。それを取りに行くためだった。

森に着いて、実を取っていると…

「え、妖精が泣いてる…?どうしたんだろう…」

シェリアは妖精に近づいた。

切り株に座って泣いていた妖精に声をかけてみた。

「妖精さんこんにちは、私はシェリア・アーカルドです。どうして泣いてるんですか?」

妖精は水色の羽をしゅんとしたに下げていて、元気がなさそうだった。ピンクの髪をウェーブさせて、紫の瞳から涙を流していた。

「私に名前はありません。知の妖精です。

明日は魔力のある月が出るから怖くて…」

「あ…元気出してください。どうか泣かないで…」

「敬語はいらないわ…私はひとりぼっちなの。私は珍しく魔法使いのように魔法を使えるから他の妖精たちとはあまり話さないの。」

妖精が魔法を…?確かに珍しい…

シェリアは驚きを隠せなかった。

アグニシュカ王国の森には妖精達が住んでいる。魔法使いとは違い魔法を使うことはあい。しかし羽がついていて、空を飛びグループを作って生活していた。魔法を使う妖精もいるが、それは少数だった。

「どうせあなたも私の事が嫌いでしょ?」

「全然そう思わないよ…ただ。友達になりたいなって思った…」

「友達になってくれるの…?」

「リラ…」

「え…?」

「紫という意味よ。あなたの瞳の色が綺麗だったから…名前がないと言っていたから…

どうかな…?」

「嬉しい!ありがとうシェリア!」

「良かったら私の家に来ない?一緒に暮らそう…出会ったばかりだけど、ダメかな?」

シェリアには他人の心を少しだけ察する力があった。この妖精に何か悪意があるかどうか少しだけ気持ちを解読した。

だか、特に悪意は感じられなかった。

「いいの⁈行くわ!1人で生きるのが寂しかったの…」

「じゃあ決まりね。実はわたしは受験生なの。明日はリュセール高等学校の試験日だから、リラもついてきてほしいな。」

「そうなのね。分かったわ。応援するわ。」

こうして、家族に知の妖精、リラが加わった。


これは偶然なのか…それとも必然なのか…










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