第4話 運命が動き出す①

リュセール魔法高等学校試験当日…

多くの受験生たちは学校の門の前で、ごったがいしていた。シェリアとティムもその中の1人だった。

「ティム、こちらは知の妖精のリラだよ。昨日森で会って友達になったの。」

「妖精と友達になったのか⁈珍しいな…」

「はじめまして、知の妖精のリラですわ。」

「試験にもついてきてもらったの。」

「シェリア、わたしはあなたのイヤリングになってそばにいるね。」

リラの体がひかり、私の耳元まできてイヤリングの形になって耳についた。

「凄い…!」

「妖精が魔法を⁈そんなことあるんだな…」

「珍しいよね、リラは天才ね!ティム、このことは内緒ね?」

「わ、わかった…色々凄いな…」

「ずっと孤独だったから友達ができて嬉しい。」

「そうなのか…?学校でうまくいってなかったのか?」

「そうなの…友達いなくて…」

「そうだったのか…じゃあ高校では俺もいるし、もう1人じゃないだろ?」

「え…本当?」

「嘘つくわけないだろ。何かあったら俺に言えよ。試験がんばろうな!」

ティムはにっこり笑ってそう言った。

「ありがとう!」

私も笑顔で返事を返した。久しぶりに嬉しいと感じた時だった。そんな時…


「受験生の皆さんは門の中へ!」

試験官が大きな声で受験事項を説明し出した。いよいよだった。

リュセール魔法高等学校の試験科目は4科目。

数学、アグニシュカ語、魔法学、歴史、

アグニシュカ語はアグニシュカ王国の公用語であり、周辺国5カ国でも公用語になっている国際的な言語である。

シェリアは苦手としていたため自信がなかった。

「アグニシュカ語が良い点数取れれば良いなぁ…苦手だから自信ないよ…」

「シェリアなら大丈夫だよ。努力したろ?」

「まぁ…そうだけど…」

試験は60分間である。午後1時から試験が始まる。今は12時になろうとしていた。

今日と明日の2日間にわたって試験が行われ、明日は実技の試験である。

実技の試験は3科目、これは学科によって違ってくる。シェリアが受ける魔道医療科は、治癒魔法実技、魔法薬の生成、そして全ての学科に共通して行われる、ほうきの飛行テストである。

錬金術科は錬金術、錬金術に必要な材料の生成である。

魔法学科はこの世界の普通科にあたる。

基礎魔法と応用魔法の2種類の実技である。

全ての学科に共通して行われるほうきの飛行テストは、決められたルートをより早く飛び早くゴールについた受験生から点がつくというもので、受験する学科に関係なくみんなで一斉に行われて、グループごとにレースがある。魔法で他の受験生を妨害することは禁止であるが、魔法を使うことは許されている。

ちなみにほうきの飛行テストは夜の7時から行われる。なぜなら夜の方が月の魔力を受けて魔力を高めることができるためだ。ほうきで空を飛ぶには魔力を多く使うので、魔力失調症にならないための学校側の配慮だった。

学校の門をくぐり教室へと向かう。

「シェリア、試験が終わったら門の前で待っててくれ、一緒にほうきの飛行テストの練習をしよう。」

「わかった、ティムのこと待ってるね。」

ティムと別れて、指定された教室へ入った。

よーし…頑張りどきだな…

私の席は後ろの端のほうだった。隣の席の受験生は美人な魔法使いだった。少し眺めてしまった。緊張感が増したが、席に座ったら集中モードに切り替わった。

「試験時間は60分間です。では、はじめ!」

受験生たちが一斉に鉛筆をもって問題を解きはじめた。

大丈夫…やれることを全力でしよう…

シェリアはそう決意して試験に挑んだのだった。



カーンカーン

4科目の試験が全て終わり、試験の終わりを知らせる鐘が鳴った。

「疲れたぁ…」

アグニシュカ語は難しかったけど、なんとか全問解けた!きっと大丈夫…

シェリアは少しだけ自信があった。

ティムとの待ち合わせの場所に向かう。

「ティムはどれくらいできたのかな…」

門に到着してティムを待っていると…

「あれ…あの人…」

前から50歳くらいのおばさんが歩いてきた。

どこかで見たことあるような…

「おやおや、この学校の受験生かな?」

「はい…そうです…あの…」

「私はこの学校の校長のヴァネッサ・ミュラーです。試験のてごたえはどうだったかな?」

校長先生⁈あ…確か学校のパンフレットに載ってた人だ…!

「こんにちは!私はシェリア・アーカルドです!そのっ…試験はできたと思います!!」

「そうかい、それは良かった。また明日会えるのを楽しみにしているよ…」

「え…?」

「大丈夫さ、君ならきっとうまくいく。」

私の肩をたたいてそう言った。

「あ、ありがとうございます!」

すると…

「おーい!シェリア!待たせてわるい!」

「ティム!お疲れ様!あ、この方はこの学校の校長先生だって!」

「え⁈校長先生⁈なんでこんなところに⁈」

「君も受験生かい?明日の試験も頑張っておくれ。」

「は、はい…」

「そうだ…明日は気をつけるんだよ…」

「え?」

そういうと校長先生は去っていった。

「明日はほうきの飛行テストがあるからかな?」

「そうかもな…ほうきから落ちて怪我する受験生もいるらしいからな…」

「そうなんだ…でも私たちは小学生の頃からほうきで色んなところに行ってたから大丈夫じゃないかな?」

「まぁな…正直自信はある。」

「明日のほうきの飛行テストのグループは何班?」

「1班だよ、お前は?」

「私も1班だよ!同じレースに出れるね!」

「まじか!じゃあ一緒に一位目指そう!」

「一位は無理じゃないかなー」

なにげない会話はシェリアにとってとても幸せなものだった。

「大丈夫だよ、じゃあこれからほうきで飛行練習しよう!」

「いいね!いこう。」


夕焼けの空がとても綺麗だった。風が心地よく空を飛ぶにはちょうどよかった。

昔からティムはとてもほうきの使い方が上手だった。

今もそれは変わらない。

誰かと空を飛ぶのはいつぶりだろう…

シェリアはずっとこの綺麗な夕焼けを見ていたいと思った。

「パルマ湖へ行こう。虹がもっと綺麗だと思う。」

「滝があるもんね!行こう。」

「じゃあ競争な!」

【ヴァルデルン】

移動する魔法を使い、あっという間に行ってしまい、置いて行かれてしまった。

「ちょっとまってよー!!」

急いであとをいっていった。


パルマ湖には綺麗な虹がかかっていた。

本当にとても綺麗だ。

「綺麗だね…」

「そうだな…」

ティムは正直行ってイケメンの部類だと思う。しばっている金髪が夕焼けにあたっていてキラキラしてる。

思わず見惚れてしまった。

いいなぁ…顔が綺麗な人は得するよね…

さっきの隣の受験生も…

「どうかしたか?」

「え?いや、なんでもないよ!」

「そっか…明日もがんばろうな…俺、お前と同じ高校に行きたい…」

「そうだね…私もだよ…」

「月は今日は普通の大きさだな…明日が楽しみだな…どれくらい大きいんだろうな…」

「確かに…200年ぶりだもんね…」

「そうだ…これ…」

ティムはポケットからピン留めを取り出して私にくれた。

「お前にやるよ、錬金術で魔力のこもった石を作ってピン留めにした。」

「え!ありがとう!可愛い!」

ピンクのキラキラした石が綺麗だ。

「お前には連絡もしないで悪かったよ…だから、そのおわびといってはなんだけど…」

少し頬が赤くなっていた。

「別に気にしてないよ。大切にするね。」

「あぁ、きっと明日は大丈夫さ。」


この時から既に運命が動き出していたことに私は気が付かなかった…





























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