第5話 運命が動き出す②

「そうだ!これから練習試合しないか?ほうきに乗りながらの空中戦で!」

「いいね!明日の飛行テストの練習にもなるね。受験生同士で対戦することになるかもしれないしね…」

「じゃあ、決まりだな。やろうぜ!」




【フォイヤー】

シェリアとティムはほうきに乗りながら魔法を使い練習戦をしていた。

ティムが炎の魔法で攻撃してきた。

【ヴァッサー】

シェリアも負けじと水魔法を発動させた。

水と炎がぶつかり合う。

ティムは続けて魔法を発動していく。

【ゲフリーレン】

氷の槍が私に向かってくる。私も負けじと同じ魔法で迎え撃つ。

だが、氷の槍を全て迎え撃つことが出来なかったため、槍がこちらへ向かってきた。

やばい…!このままじゃぶつかる…!

【シルト】

思わず魔法の盾を生み出した。すると何本か飛んできた氷の槍の一つが跳ね返ってティムの方へ飛んでいった。

「ティム危ない!」

ティムの右肩を槍がかすった。服が破れ傷口から血が出ていた。

「ティム大丈夫?!ごめんなさい!痛かったよね…」

「大丈夫だよ。こんなのかすり傷さ」

「でも血が出てるよ…!地上に降りよう。私、治癒魔法は得意だから治してあげるよ!」

「じゃあお前の治癒魔法がどれほどのものか拝見しようかな。」


私たちは練習試合を中断して近くの村へ降りた。村に着いたのはいいものの、人は誰もいなかった。私たちはたまたまあったベンチに座ることにした。

「とりあえずここに座ろう。今治すね」

「ああ…でもこの村…なんか変じゃね?」

「そうだね…誰もいないね…」

「傷が治ったら散策してみるか…」

「じゃあ、治癒魔法をかけるから上の服を少し脱いでくれる?」

「え…?!あ…そうだよな…」

「右の袖を少し脱ぐだけでいいから。」

ティムは上着を脱ぎ、右腕の袖をめくった。

【ハイレン】

小さな光がティムの肩にできた傷を照らし傷が塞がった。

「おー凄いなシェリア!俺は治癒魔法使えないから羨ましいよ。ありがとうな。」

「そんなことないよ。練習すれば出来る様になるよ。」

そんなことを話していると1人の男性に声をかけられた。

「おい!お前たちは侵入者か?どこからきた?」

「あ、こんにちは。私たち…」

ティムは私を守るように前に出て、私の言葉を遮って答えた。

「俺たちは少しだけここで休ませてもらっていただけです。もう出て行きます。」

「エンシェント・ヴンダーの話を聞きつけてきたのか?」

「え?なんですか、それ。」

「知らないのならいい…早く家に帰りな」

そう告げるとおじさんは行ってしまった。



気付けば夕方になっていた。ほうきに乗りながら夕焼けを眺めていた。

「なぁ、シェリアはエンシェント・ヴンダーって何か知ってるか?」

「ううん、知らない…なんだろう…古代魔法かな?」

「お前の家は本屋さんだったよな?帰ったら調べてみてくれないか?」

「うん、いいよ。そのつもりだったし」

「ありがとう。家まで送るよ。」

「いいの?ティム疲れてない?」

「俺は大丈夫だよ。お前が心配だからな。」

優しいところは昔と全然変わらないな…

シェリアはその優しさを懐かしく思った。


リュセールの街に戻ると人があまり街にいなかった。明日はサンクトゥスムーンの日で特別な日、なので家族で過ごす人が多いためだ。

「人が全然いないね…なんか寂しい…」

「明日は特別な日だからな…」

「言うの忘れてたけど、俺があげたピン留め、つけてくれてるんだな。似合ってる。」

「ありがとう!私ピンク好きなんだ〜」

「それ、錬金術で作ったんだ。だから魔力が込められてて試験に役立つと思う。」

「私は錬金術はあまりできないから良いなぁ…」

そんな会話をしていると、リュセールの街から私の家まではそう遠くないため歩いてすぐについた。

「送ってくれてありがとう。明日も頑張ろうね!」

「ああ、ほうきの飛行テストは一緒にゴールしよう!」

「わかった、約束ね。」

「じゃあ、また明日!」

ティムはほうきであっという間に飛んでいった。

家について、まず"エンシェント・ヴンダー"について調べることにした。

「まずは辞書からだよね…えっと…」

たくさんある本棚から魔法事典を探して手に取った。

「ここには載ってない…もっと古い魔法書じゃないとダメかも…」

古い魔法が書かれた本はお店の奥の方にある。シェリアは時間をかけて魔法事典を探し出した。

「あった!なになに…エンシェント・ヴンダーは異世界へ行く扉を開くための魔法??」

シェリアは意味がわからなかった。この世界に異世界なんて存在するのか?

「確か建国以来、唯一の大魔法使い、コンスタンツェ・ロッテンベルクの自伝には異世界に渡ったという話があったような…でもそれは大昔の逸話であって本当ではないよね…もう1000年以上前の話だし…」

アグニシュカ王国では様々な功績をたくさん残し選ばれた者が大魔法使いの称号を得ることが出来る。だか称号を得られる条件というのは決められていない。それも大昔の話だから伝説のようなもので、なりたい者などいない。伝説では女神アグニシュカが大魔法使いの称号を授けたと記されている。

「しかも、この魔法は異世界に行く扉を開くことができるけど、帰ってくる扉を開くことはできないのか…何がヴンダー(奇跡)なんだろう…こんな危険な魔法…誰が使うの…?」

シェリアは気が遠くなってその本を元の場所にしまった。

そういえばピアスになったリラが全然元の姿に戻らないな…なんでかな…

引っ張ってみたけど、ピアスは取れない。

まぁ、いづれ元に戻るよね。

明日に向けて今日は早めに寝よう!

明日の最終試験のことを考えベットに入る頃には忘れていた。












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