第8話 知らない世界①

おい!おい!大丈夫か?おい!

誰…?私を呼んでる…?

ゆっくりと目を開けた。そこには知らないおじさんがいた。

「〜〜〜〜〜〜〜〜」

「え…いや…私は…」

私はあたりを見渡してみた。見知らぬ場所だった。確か私は飛行テストでクリア海の上空まで飛んでて…ダメだ…記憶があいまいになってる…

それになんて言ってるの…?アグニシュカ語じゃない…

「って…あれ?空に…浮いてる…?!」

決して幻覚ではなかった。

島みたいなものが5つほど空に浮かんでいた。

【ユーバーゼッツェン】

翻訳する魔法を使っておじさんの話を聞いてみることにした。

「なんで驚いてるんだ?」

よかった…!言葉がわかる!!

「あの…私…記憶が混乱してて…ここはどこでしょうか?なぜ空中に島が浮かんでるんですか?」

「は?ここはルジェアン王国だろ。なんで空中に浮かんでるかって?そんなの魔力で浮かんでるに決まってるだろ?地上には吸血鬼やモンスターがいるから人間は魔法を使って天空に島を創り出して、ここに定住しているんだ。」

「吸血鬼…?モンスター?」

「そんなことも忘れたのか?学校で習わなかったのか?」

「あの…この世界の人たちは皆んな魔法を使うのですか?」

「当たり前だろ、魔法が使えない人間なんていないさ。病気のやつ以外はな。」

「そうですか…私はここで倒れていたんですか?」

「ああ、そうだ。もしかして家出か?馬鹿なことはするな。もう家に帰りな。俺はもう行く。」

「あ…はい…」

おじさんは行ってしまった。

リュセールの街とは全然違う…

ルジェアン王国とか言ってたけどそんな国あったっけ?

私がブラックホールみたいなものに飲み込まれた時ティムは近くにいた。彼は大丈夫だったのだろうか…

遠くにお城とお城を囲むように家並みが見える。

「私のいた国とは全然違う…もしかして…異世界…?そんな…あ…!」

"エンシェント・ヴンダー、異世界へ行く扉を開く魔法、しかし元の世界へ帰る扉を開くことはできない"

「まさか…魔法が発動したの…?」

もしこの魔法なら私は元の世界には帰れない…?そんな…

私は思わずその場に座り込んだ。もう何も考えられなった。涙が溢れてくる。


しばらくその場で座り込んで泣いていたら、すっかり日が暮れて暗くなってきた。

どこか…休めるところに行かないと…

でもどこに行けば…?

とりあえず向こうに見えるお城に向かって歩いて行こうかな…家並みも見えるし宿があるかもしれないな…

「こんな所で泣いてても何も変わらないよね…もっとこの街のことを調べてみよう。」

魔法は使えるかな?

【フランメ】

手のひらに炎が灯る。ちゃんと色も赤い。

「やった!魔法は使える!」

試しにほうきを取り出し乗ってみた。

その世界の人々もほうきを乗ったりするんだろうか…

私はほうきで王都らしき場所に向かうことにした。


この世界の夕焼けも綺麗だ。しかし空には見たこともない動物が飛んでいた。馬に羽が生えていたのだった。

「あれはペガサス…?嘘でしょ…」

架空の生物がこの世界には普通にいた。

夢から目覚めていないのかな…そんなことを考えていると王都らしき場所も近づいてきた。

夕方なこともあってか人はあまりいない。

門番らしき人が私に近づいてきた。

「身分証を見せてください。」

「え…?身分証…?」

「はい…もしかして紛失しましたか?」

「そ、そうなんです!無くしちゃって…今回だけ特別に入れてくれませんか?」

「わかりました…いいでしょう…」

危ない…助かった…

大きな門をくぐった先には栄えた街があった。お店がたくさん立ち並び、人で溢れていた。お腹すいたな…でも世界のお金ない…

とりあえずあたりを歩いてみる。ふと、屋台で店主とお客さんとのお金のやり取りが目に入った。

銅貨や銀貨で買い物をしていた。

この世界ではコインで売買するのかな…?

よし…それなら…!

【マッヒェン】

見たものをコピーしてお金を作ってみた。

袋の中にぎっしりコインが入っていた。

これだけあればしばらく何とかなるよね…

近くに焼き鳥屋見たいな屋台があったので、そこで串を買うことにした。

「こんばんは、串を何本か買いたいのですが。」

「あいよ!どの肉が良いのかい?」

「えっと…え…なにこれ…聞いたことない肉ばっかり…」

「何言ってんだいじょーちゃん。どれも普通の肉だろ。」

「じゃあ、この…レピュー串って何の肉ですか…?」

「レピューを知らない?!大型の鳥じゃないか。」

「あ…そうでしたね!すみません!」

「変な子だね…」

「あはは…あの…宿を探してるんですけど、どこにあるかご存知ですか?」

「宿ならたくさんあるよ。広場をまっすぐ進んだところにもあるさ。」

「そうですか!ありがとうございます。」

私はレピューとかいう鳥の串を何本か買って屋台をあとにした。

一口食べてみたけど鶏肉とほぼ変わらない味で美味しかった。

広場をまっすぐ行くと宿らしき建物がいくつかあり、1番近間にあった宿に入った。

「いらっしゃいませ!ご予約のお客様でしょうか?」

「い、いいえ…違います…もしかして予約がないと泊まれませんか?」

「そんなことないですよ。ただ少し狭いお部屋になってしまいますが、よろしいでしょうか?」

「あ、はい!大丈夫です!いくらですか?」

「一泊銀貨5枚銅貨10枚です。」

「わかりました。えっと…」

さっき魔法で作ったから大丈夫なはず…

「これで大丈夫ですか?」

私は言われた通りの枚数のコインを出した。

「はい!ありがとうございます!あと、身分証の提示をお願いします」

え…⁈身分証…⁈また⁈

どうしよう…この世界の人間じゃないし持ってないよ…

「あの…実は私身分証持ってないんです…」

「え…?どういうことですか…?もしかして戸籍がない…?」

「はい…おそらく…」

「どこの島出身ですか?ここのハーラ島ではないですよね?」

「私…記憶がなくて…道に倒れてたんです…」

「え⁈そうなんですか⁈自分の名前はわかりますか?」

「シェリア・アーカルドです。それは分かります。」

「なら、今日は特別に泊めますので明日、戸籍登録所にいってください!そこで名前を手がかりに出生地などが分かるかもしれませんから!」

「あ、はい…わかりました…ありがとうございます…」


案内された部屋で私はベットに座りながら串を食べていた。

はぁ…どうしよう…戸籍登録所に行っても絶対に私の戸籍なんか無い…

異世界から来たって知られたらまずいよね…

そう思い悩んでいると私の右耳のピアスが光り出した。

「え…⁈なに…⁈」

ピアスが丸い光となり妖精の形になった。

「シェリア!」

「リラ⁈元に戻ったの⁈」

「やっと戻れたわ!今までごめんなさい。」

「どうして今までピアスのままだったの?」

「元に戻れなかったの!月の魔力が強すぎて…」

「え…サンクトゥスムーンのせいで…?」

「えぇ…あの月…強力な魔力を秘めていたから…て…あら…月が普通の大きさ…」

「あ…リラ、ここはリュセールじゃないよ。ほうきの飛行テストの時に空にブラックホールみたいなものが現れて私は飲み込まれてしまったの。それで気がついたらこの世界に来てた…多分異世界だと思う…」

「え⁈異世界⁈どういうこと⁈」

「私もわからない…異世界へ行く魔法が発動したのかもしれない…」

「そんな魔法が存在するの⁈」

「うん…古い魔法書に書いてあったしティムと偶然見つけた村に行った時、その魔法について聞かれたからね…」

「まさか…サンクトゥスムーンの魔力を利用して異世界へ行こうとしてたってこと…?」

「その可能性はある…」

「どうやったら元の世界へ帰れるの?」

「帰る扉を開ける魔法はわからない…」

「え…じゃあこのまま異世界にいたまま…?」

「いや、帰る方法を探すよ、魔法は奇跡の力なんかじゃない。来ることが出来たなら、戻ることも出来るはず。」

「私も一緒に探す…!」

「ありがとう。もう寝よう。明日探検しようか!」

こうして異世界への旅が始まったのだった。
















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魔法使いの国とシェリア @chie0516

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