第7話 運命が動き出す④

試験会場は学校の中にあるグラウンドだった。会場に来るとまずブレスレットが配られた。飛行するコースは決まっていて、グラウンドをスタートして、広場、町外れの教会、クリア海、クリア海に浮かぶクリア島の灯台、リール山の頂上、これらの場所に魔法陣があり、それに触れるとブレスレットに石がつく。5つの石を手に入れて学校のグラウンドに戻ってくるという仕組みになっている。


「これより、ほうきの飛行テストを行う。

まず一班になった受験生たちは円の中へ。」

スタート地点にはグランドの真ん中にある円の中だった。

円の中へ入った時に、ふと教員たちがいる方へ目を向けた。

あれは…校長先生?!昨日あった人だ…

すると校長先生がこっちを向いて目があった。頑張ってねと言われてるみたいだった。

「どうしたシェリア、緊張してるのか?」

ティムに突然話しかけられてびっくりした。

「えっ⁈いや…なんでもないよ!大丈夫。」

「そっか…これが終われば受験は終わりだ、合格発表が出るまでゆっくりしよう。」

「うん!ありがとう。」

「まもなく始めたいと思います。

いちについて、よーい、スタート!」

受験生は皆いっせいに、ほうきで飛んだ。

レースと言っても妨害行為は禁止なので、受験生同士での蹴落としあいはない。そのため集団飛行みたいな感じになっていた。

空を飛ぶのは心地よい。風が気持ちい。

夜なのにサンクトゥスムーンのおかげで明るい。しばらくして第一ポイントの広場にやってきた。

広場の上空に魔法陣が浮かんでいる。それに触れなければならない。

手を伸ばして魔法陣に触れた。するとブレスレットに赤い石が1つ付いた。

よし…!この調子であと4つだ…頑張る…

シェリアはほうきを強く握りしめた。


しばらくして街外れの教会"サドニア教会"にやってきた。魔法陣が浮かんでいる。手を伸ばして魔法陣に触れて2つ目の石を手に入れた。

よし…次はクリア海に行かないと…

ティムは大丈夫かな…?

辺りを見渡すと横の方にティムがいた。

ティムは杖を持ってクリア海を指している。

あ…瞬間移動の魔法の合図だ…

【ヴァルデルン】

杖に力を込めて唱えた。一瞬にしてクリア海の上空にたどり着いた。ティムは私よりも少し先にいた。

「ティムー!」

「シェリア、よく俺の合図が分かったな!」

「なんとなく感じたよ。サンクトゥスムーンの力のせいなのか全然疲れない!」

「そうだな、全く疲れないな!」

大きな赤い月をチラリと見る。夕方よりも明らかに大きくなっていた。

3つ目の魔法陣まであと少し…とばそう…

「えーい!!」

「あ!おい!シェリア、待てよ!!」

あと少し!もう少し…

3つ目の魔法陣に触れて3つ目の石を手に入れた。

「やった!!って…あれ…?私の手、こんなに赤かったっけ?」

よく見ると手だけではなく足や体も赤く光っていた。

「なにこれ…どうなってるの…?」

そんなことを考えていたその時、上空にグラックホールのようなものが現れた。

「え…?何あれ…ブラックホール…?」

そんなことを考えていた矢先に、とんでもない引力で全てを飲み込もうとしていた。

どうやら結界が破られたみたいだった。周りで待機していた試験官が慌ててシェリアを助けようとしていた。

だがシェリアの体は制御できなくなっていた。

「うわー!助けてー!!吸い込まれるー!」

「シェリアーー!!」

ティムも後から追いかけてきた。なにやら呪文を唱えている。助けようとしてくれているみたいだった。

意識が遠のいてゆく…

ティムが私の名前を呼ぶ声が聞こえる…

あたりが真っ暗で何も見えなくなってゆく。

シェリアは意識を失っていった。


苦難と試練のはじまりだった。



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