魔法使いの国とシェリア
@chie0516
第1話 自分という存在
いつもと変わらぬ空と太陽だった。
街は魔法使いたちで賑わっていて活気に溢れていた。
ここ、アグニシュカ王国第二の町リュセールで本屋さんの家を手伝いながら魔法の勉強に励む少女がいた。
「シェリア!お客様だよ!案内しておくれ!」
「はーい!」
私の名前はシェリア・アーカルドです。
この街で本屋さんをおばあちゃんと切り盛りしています。
来月で16歳になります。そして来月はリュセール魔法高等学校の進学試験が行われます。だから今は必死に勉強中なのですが…
「この魔法書はいくらで売れますか?」
「少しお待ちください!」
お店の切り盛りをしないといけないので、全ての時間を勉強に当てるのは難しいです…
18時、お店の閉店時間。
「ふぅ…終わったー!疲れたー」
夜になったらナイトマーケットが開かれるため、まだ街は賑わっていた。
私はたまにお店の前を通りかかる同級生たちを見て落ち込む。
「私も友達が欲しいなぁ…」
その時、おばあちゃんが二階の書斎から降りてきた。
「友達欲しいなどと無駄口叩いてないで勉強でもしてな!もう1週間きってるんだから店には試験が終わるまで顔出すんじゃないよ。」
そう言うとおばあちゃんは自分の部屋に戻ってしまった。
おばあちゃんは昔から厳しい人だった。でも忙しくていつも家を空けている母の代わりに私の世話をしてくれた。
「厳しい人だけど、恩もたくさんある…まぁ、気にせず勉強始めよう!絶対合格して高等学校で友達作りたい!よーし、頑張る。」
気合いをいれて裏庭にある魔法の技能テストのために自分で作った練習場へ向かった。
練習場は、お店の裏庭を自分でアレンジして作った空間で攻撃魔法の練習で使う的があったり、魔法で育てている薬草や錬金術や治癒魔法で必要な道具をしまっている倉庫があった。
「まずは夜で暗いから灯りを灯してっと…」
【フランメ!】
灯りをつける魔法を唱えた。
円形になっている練習場を囲うように灯りがポンポンとついていく。
薄暗くなった夜に灯りがついた。
「私なんてこの小さな灯りのようにちっぽけでつまらない存在なのかな…」
小さく燈った灯りのように自分は小さくてちっぽけな存在に思えた。夢もなくただ毎日を過ごしてるだけの日々…
何かワクワクするような事がしたいと思っていても行動には移せない。そんな自分が嫌いだった。
【フォイヤー!】
大きな炎を出す魔法を発動させた。
自分で作った的の真ん中に命中させ的が炎で焼かれて粉々になった。
それを見てシェリアは自分もいつかこんなふうに儚く人生を終えるのだろうか。と考えていたのだった。
魔法の練習に励んでいると声をかけられた。
「頑張ってるのね〜偉いわシェリアちゃん」
「あ…アンヌさん!こんばんは!」
お近所さんでお母さんの友人のアンヌさんだった。彼女はお隣の国ロシェーヌ王国出身の移民だった。
「ちょうど良かった。この間故郷に帰ったの。その時のお土産をあげるわ。」
アンヌさんは魔法で収納空間から杖を取り出し、杖を振った。すると可愛い袋が入ったお菓子が出てきた。ふぁーっと私の方へと飛んできて手のひらの上にストンと落ちた。
「うわー!マドレーヌだ!ありがとうございます!」
「いいのよ〜良かったら食べてね。」
「ね〜ママ〜早く家に戻ろうよー」
栗毛色の癖っ毛を揺らしながら黒い瞳の少女が走ってきた。
アンヌさんの娘さんのアリアンヌちゃんだ。
10歳になったばかりで少し気が強い子だった。
「あ、シェリアお姉ちゃん、試験頑張ってね。」
「ありがとう、アリアンヌちゃん。私精一杯頑張るね。」
「辛くなった時は【シュテルン】の魔法を唱えたらいいよ〜学校の先生が言ってた。」
「【シュテルン】?どんな魔法なの?」
「知らない、でも元気が出るらしいよ〜」
「それは古代魔法ね…シェリアちゃん、試験で色々な魔法覚えてて混乱するでしょ。無理に覚えなくて大丈夫よ。アリアンヌ、お姉ちゃんをあまり混乱させないであげなさい」
「あ、私は大丈夫ですよ!」
古代魔法か…私にはほとんど知らない魔法だった。【シュテルン】がどんな魔法なのか私は想像もつかなかった。
「じゃあ私達はそろそろ帰るわね。シェリアちゃん、おやすみ。」
「おやすみなさい!」
親子で手を繋いで歩いて行ったのを眺めていた。少し羨ましいと思ってしまった。
私のお母さんは首都に行ってて中々帰ってこられない。寂しい気持ちになった。
心を許しあえる親友が欲しいな…
いつか、出会えるだろうか…
そう思いながら夜空を眺めたのだった。
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