第10話 つがい

目を開けたら知らない場所で眠っており、ここはどこだろうと思っていたら、扉が開く音がして、レーヴェンが入ってきた。

そして、起きているルゥーンに気がつくと、慌てたように駆け寄り、ルゥーンを抱きしめる。


「ルゥーン、目が覚めたか……、よかった……体は大丈夫か?」

「レーヴェン…私……」

「ルゥーンは魔力を取り込むときに気絶してしまったんだ。すまない。私が辛いことを思い出させてしまったがために……」


抱きしめられて一瞬頭がフリーズしていたが、ルゥーンはすぐに復活した。

そしてルゥーンは、悲しげに目を伏せるレーヴェンを見て胸が締め付けられるように痛んだ。なぜだかわからないが、やっぱり彼が悲しんでいる姿は見たくないと言う思いがある。


「レーヴェンのせいじゃない、よ。私が昔のことだって割り切れなかったからだよ。まだここにきて時間はたっていないけど、ここが私の帰る場所だから」

「ルゥーン……」


レーヴェンはルゥーンを抱きしめる腕に力を込めているようで、拘束がだんだんとキツくなっていく。

レーヴェンは吸血鬼の王だ。その力は非力な人間より遥かに強い。非力なルゥーンではすぐに苦しくなってしまうのだ。


「レー、ヴェン?痛い、よ。もっと力緩めて……」

「す、すまない…」


すぐに拘束は緩くなり、ルゥーンは苦しくなくなっていた。


「レーヴェン、どうしたの?なんでそんなに悲しそうなの?」


レーヴェンが悲しそうで、ルゥーンはまた胸が痛くなる。

レーヴェンを見るために顔を見上げると、レーヴェンはルゥーンに微笑んでいた。

それは、見るもの全てを虜にする吸血鬼ヴァンパイアの微笑み。

ルゥーンも少し見惚れてしまったが、慌てて意識を引き戻す。


「レーヴェン、私にそんなこと、しても意味ないよ」

「ああ、ルゥーンは魔女だからが効かないのか。……魔女にも効けばよかったのだが」

「レーヴェン?」

「気にするな」


ルゥーンは首を傾げながらも、レーヴェンと向き合った。

レーヴェンの目は、本来は血のような赤色。だが、今は紫に光っている。

確か、紫に光る目は魅了の魔眼を持つ人しかいないはずだとルゥーンは学生時代の記憶を引き出して考えた。


「レーヴェン、なんで私に、魅了をかけた、の?」

「……魅了はやはり気付いたか」

「どう、したの?」

「いや、なんでも無い」


おかしなレーヴェンだなと思いながら、ルゥーンはベットから降りる。

ベットに座ったまま抱きしめられていたので、少し苦しかったのだ。


「なんで、レーヴェンは、あの時、私を、助けた、の?」

「……ルゥーンは魔女だからがいるだろう?……私にも、と言うものがいるんだが、今まで引きこもっていたから探そうとも思わなかったんだ。だが、眠っていたらつがいが近くにいることがわかったから気になってな。探しにきたらルゥーンがいたと言うことだ」

「つまり、レーヴェンのつがいは私……?」

「その通りだな」


急に告げられた事実にルゥーンは大いに戸惑う。

自分がまさか、吸血鬼の王であるレーヴェンのつがいだとは思わなかった。

ルゥーンはつがいがわかるが、確かにレーヴェンは自分のつがいだとわかる。


「でも、私、まだ、恋とか、愛とか、わからない」

「いい。気長にやっていこう」


ルゥーンは、レーヴェンの優しさに自分が情けなくなるが、でももう少し待って欲しいと思う。

だから、ルゥーンの心が決まったら、そのときは花嫁として迎えてほしい。

勝手ながらも、ルゥーンはそう思った。

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Blessing of the witch ケイ @irohakaguya

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