第18話 一回戦
「トーナメント表ができましたので、こちらに掲示します! 選手の皆様、各自ご確認をお願いします!」
控室に甲高い声が響く。係員がトーナメント表を控室の壁に貼り出した。俺はトーナメント表を確認するため立ち上がった。集まる選手の中に、人族以外の選手がいるのも見える。
『一回戦』
第1試合:レオン・トラジール VS ハイン・ヴォール
第2試合:マーク・ハリー VS フック・ウォーカ
第3試合:ベープ・オーセン VS アッツ・カーン
第4試合:ジン・ ユーション VS ロック・ユワーリ
「第1試合か……。待たされるよりかは、まだましか……」
「君がレオン選手か?」
俺がトーナメント表を眺めながら呟いていると、肩を叩かれ、声をかけられていた。振り向くと、筋肉の塊の様な俺より背の高い男がいた。身体には無数の傷が見える。ものすごく、厳つい容姿……スキンヘッドのせいだろうか。街ですれ違ったら、目をそらしたくなるタイプだな。30代位だろうか。
「そうだが、あんたは?」
「君の対戦相手のハイン・ヴォールだ。よろしくな」
「対戦相手と仲良く話ていて平気なのか?」
「ははは、少年よ! 闘技場を一歩出れば、我々は仲間だ! 筋肉鍛える者は、友達だろ!」
――明らかに、ヤバい奴にからまれた……。
何だか良くわからないが、筋肉友達認定されかけているんだが……。俺だけでは無く、他の選手にも声をかけている。どうやら、自分の経営するジムの宣伝を行なっているようだ。大会出場の有名人が来るとなれば、まあまあの宣伝にはなるな。商魂たくましいとは、このことか。
――さて、一回戦はどんな試合になるんだろうか。
◇◇◇◇◇
「さあ! 本戦、第1試合の始まりです!!」
司会者の合図と共に、ファンファーレが鳴り響いた。割れんばかりの歓声に、拍手の嵐。悪い気がしないなと俺は感じていた。
「勇者の家来!! レオン・トラジール選手!! ヴォールドジム代表! ハイン・ヴォール選手!!」
家来は余計な説明だろと、声を大にして言いたい。まあ、そんなことは気にせずにいこう。目の前にいる相手の雰囲気が変わったのが分かる。
「ほぉ少年よ……勇者の家来だったのか?」
「家来では無いんだけどな……なんか、そうなっているみたいだ……」
「がはは、それは面白い! 面白いといってはあれだが、こんな試合はどうだ……」
「……へぇ……それは面白い!」
提案された内容が、俺のツボにはまった。映画のワンシーンみたいな闘い方。交互に拳をぶつけ合う闘い。技では無く、純粋な力と力の真向勝負。武闘会の醍醐味じゃないか。
「分かった! 受けて立つ! さぁ、来いっ!」
「負けても、後悔しないでくれよ!」
ドスッ!
腹部をめがけて繰り出されたハインのパンチを、俺は腹筋に力を込め受け止めた。
――軽いな……
大会の参加には、レベル20〜30という制限がある。俺は特例で潜り込んだのだが。筋力・体力ステータス最大、かつ
「俺の番だな」
腰元にある引手。拳に力を少し込めて、一気に相手の腹部をめがけて逆突きを繰り出す。空を切る音が、俺の耳に流れ込む。
「ぐっ……」
苦悶に歪む表情。ハインにダメージが入ったのが分かる。軽くてもダメか……。
「なか……なか……や……るじゃ……ないかっ!」
「無理すんなよ……」
膝がガクガクしているハインを見て、俺は心配になった。一瞬で終わらせるか。ハインの2回目の攻撃を受けながら俺は考えていた。
「悪く思うなよ……」
左半身立ちに構え、拳を繰り出す。左拳の軌道、狙うのはハインの顎。俺は素早く拳を振り切り、ハインの顎を起点に脳を揺さぶり、意識を刈り取った。目の前で、膝から崩れ落ちていくハイン。カウントが叫ばれているが、立ち上がることはできないようだ。
「勝者、レオン選手!!」
◇◇◇◇◇◇
名前:レオン・トラジール
レベル:1
ステータス:体力 SS(100/100)
筋力 SS(100/100)
敏捷 SS(100/100)
魔力 D(31/100)
精神 D(31/100)
【
女神の癒し
属性攻撃(火、水、風、土)
高速移動
魔法耐性(B)
ステータス異常耐性(D)
急所攻撃耐性(D)
即死勇者は女神の加護を受けられず、サブキャラとして成り上がる〜復活への挑戦、己が為の物語〜 南山之寿 @zoomzero
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