欲望、嫉妬、悪意…人間の本性と『死』が織りなす現代ドラマ
- ★★★ Excellent!!!
ある母子家庭の親子のもとに舞い込んだ、玉の輿に乗る機会。
女子中学生、高良利恵とその母・真紀、祖母の真理子は絶好のチャンスを逃さないとばかりに入念な計画を立て、再婚相手の子供である美加と利恵を偶然を装い友人にさせる。
再婚が決まり、全てが上手くいくと信じていた彼女たちの元に、最悪のニュースが飛び込んでくる。
とても面白かったです。
物語の芯の部分に必ず誰かの醜い心が描かれており、それがリアルで思わず鳥肌が立ちました。
玉の輿に乗ろうと必死な様、現実と理想のギャップ、そして家族の死により崩壊していく家庭の雰囲気が生々しく、人間の本性というものがどんなものか考えさせられます。
特に利恵の態度や言動、彼女の思考は自己中心的で嫉妬や見栄に溢れていますが、人間誰しもこのようなものを持っていると考えさせられるキャラクターです。
母や祖母から注意されても言い訳を繰り返す様、義姉である美加への嫉妬などが、思春期の女子学生の特徴を捉えていて、それがとてもリアルに描かれています。
物語は様々な登場人物の視点から語られます。そこからだんだんと彼らの生い立ちや人間関係が浮き彫りになり、物語が進むにつれそれが絡み合い繋がっていくので、そこも物語の魅力の一つだと思います。
また、それぞれの心理描写が細かく書かれているため、「なぜこうしたのか」というキャラクターの行動理由にも納得して読むことができました。
しっかりと考えられたストーリーと謎の残し方がとても巧みで、この後どうなるんだろう?と気になってどんどん読み進めてしまいました。
これからの展開も楽しみです。
素敵な作品を読ませていただき、ありがとうございました!