主人公の世界は、“見苦しい嘘”で愛犬を失ったあの日から止まったままです。
零司くんがずっとお守りにしていたお芋ボーロが引き寄せたのは、ポメラニアンのくーちゃんと飼い主のことはちゃん。
二人と一匹が揃い、小さな奇跡が生まれていきます。
そこにいるだけでもふもふ愛らしいくーちゃんですが、失った愛犬と重ねて見ている零司くん視点のくーちゃんは、更に愛情と哀しさみたいなものが混じっていて、私自身も昔飼っていた豆柴を思い出しました。
くーちゃんが示す『嘘の証拠』を二人で追う中で、制裁者として孤独に動いていた零司くんが、誰かのために行動するようになっていき、助けてくれる仲間が増えていく変化も魅力です。
登場人物より一歩先に読者が推理できる仕掛け。ミステリーとしても巧みで、解答編の前にもう一度読み返したくなる作品です。
主人公は過去に人に裏切られ、最愛の犬も失くし、人を信じられないでいました。
そんな彼が出会ったのはヒロインと彼女の相棒、ポメラニアン、くーちゃん。
くーちゃんにお芋ボーロをあげると、なんとくーちゃんの見えてる世界が見える。
その視界では人の心の色が見える。嘘は黒色。
その力で彼は追い詰められている人たちを助けていきますが……。
上手いのは、嘘はわかっても、どんな嘘をついているのか、なぜ嘘をついているのかはわからない。だから、そこは推理していく必要があります。
そして彼の行動と共に、かつて悪意を持って人に接していた人たちの行動までも変わっていく。その人間模様を見ていただければと思います。
あと、くーちゃんに癒されます。嘘を暴くスーパーワンちゃんだけど、きりっとしたシェパードでも頭のいいボーダーコリーでも無い、ポメラニアン。
くーんと鳴くくーちゃんに癒され、温かな読後感を共有したいと思わせてくれる作品です。
嘘を抱える人を見つけ、かつ、色により嘘の種類を見分ける犬と出会って異能に目覚める。もう勝ったと言える設定だけではないのが本作の素晴らしさ。
作者様による解説を引用します。
> 限定カードの盗難、生徒会選挙の不正、学園祭での舞台崩壊――。
> 一見無関係に思えるそれらの事件は、すべて裏で仕組まれた「実験」によって操られていた。
実力を持つ生徒が運営する生徒会、スターを擁する演劇部、さらには学園の平和を脅かす陰謀。
誰もが見たいものを全部詰め込んだ、心躍る学園物語を作り上げています。
そこに、少年少女による「友情以上、恋愛未満」もきっちり組み込んで。
この小説の、楽しさに嘘なし!
嘘をテーマにした学園物語と聞くと、少し重たい印象を持つかもしれません。けれど本作は、単なる推理劇ではなく「嘘とどう向き合うのか」をやさしく問いかけてくれる青春譚です。主人公は嘘を嫌う孤独な少年。そこに相棒や仲間が加わり、学園で起こるさまざまな出来事を通して、読者は「嘘は本当に悪いものなのか?」という根源的な問いへと導かれていきます。嘘は人を傷つけることもあれば、守ることもある――そんな人間関係の中に潜む嘘の姿を、時に鋭く、時にあたたかく描いているのがとても印象的でした。物語を追ううちに、真実とは何か、そして誰かを信じるとはどういうことなのかが、自然と心に残ります。学園ミステリーでありながら、読み終えた後にやさしい温もりを感じられました。
この作品の魅力は、なんといっても「嘘を色で見分けるポメラニアン」という斬新な設定です。主人公・零司の孤独感と正義感、そして天真爛漫なことはとふわふわのくーちゃんとのコントラストが絶妙で、読んでいて心が温まります。
学園を舞台にした事件の数々も、単なる謎解きを超えて、登場人物たちの心の成長が丁寧に描かれているのが印象的。特に零司の過去の傷と、新しい仲間との出会いによる変化の描写が秀逸です。
「色で見える嘘」という視覚的な表現も面白く、読者も一緒に推理を楽しめる仕掛けになっています。軽やかな文体なのに深いテーマも扱っていて、一気に読んでしまいました。
動物好きの方、学園もの好きの方、そして心温まる友情ストーリーを求めている方には特におすすめできます。
過去に自分のペットと悲しいお別れをした主人公、九条くんがポメラニアンと出会うことから物語がスタートします。
ポメラニアンのくーちゃんとコンビで「嘘を見抜く能力」が発現した結果、学園の事件に次々と関わっていきます。
能力が芽生えたと言っても、そもそも九条くんが割と漢気溢れる感じで、とても好印象です。
イジメをする不良を懲らしめたり、クラスメイトの暗い表情を察知して夜の学校に走ったり、悲しい過去にも負けずに真っ当に、真っ直ぐな生き方をしていて格好良い主人公に仕上がってます。
ストーリーとしては、単発の事件に関わりながら、その裏で暗躍する学校の黒幕を追っかけていく形になるのでしょうか。
一つの事件を解決しながらも、黒幕までは一息に辿り着けず、そこが今後のワクワク感を誘います。
キャラクターでは、ヒロインのことはさんが、割と良い性格をしていて非常に面白かったです。
急になぞなぞを吹っかけて来たかと思えば九条くんのピンチにくーちゃんと共に颯爽と現れ、かと思えば閃きで走り出す九条くんを優しく見送ったり、平均点高めのムーブを披露します。
魅力的な三人組(?)が繰り広げる学園ミステリー、ミステリーであるものの読み易く、万人受けする作品となっていました。
少しばかり説明しよう(←珍しいな。お前)。
大人向けのというのは、まんまである。現今の投稿小説――そこから発展しての書籍化作品というのは同じようなものばかりである。ただ、私自身、書く立場であるので、良く分かるが、仕方がないのである。何せ、そうした作品こそ、人気を得て、書籍化につながるからである。そして、おそらくこの主たる読者層というのは、小説を読み始めた小・中・高生なのだと想う。つまり、既視感と無縁の人たちである。
ただ、既視感――ときにこれってまったく同じギミックやんーーあえてギミックという表現を使わせてもらうが――に耐えられず、読まない大人(私もその1人)も多いだろう。そんな大人たちへということである。
既視感とのずれの大きな要素は、異能持ちが俺(主人公)ではなく、子犬であることである。くわえて、こいつ(=子犬)は喋れないので、謎解きがチートにならず、時間軸でいえばためができる。
しつらえの良いというのは、子犬と銀髪美少女と俺のバランスが絶妙ということである。ほのぼのにしようと想えば、子犬に重きを置けば良いし、シリアスに持って行こうと想えば、俺に重きを置けば良い。
という訳で100%、書き手視点のレビューでした。
筑波アニマリエ高等学校(通称・アニ高)に通う九条零司は、この世に蔓延る嘘と対峙し続けていた。
かつて彼の大切な愛犬モカが、人々の嘘によって命を落とす結果となってしまい、その日から、彼は嘘が許せないでいたのだった。
『影の制裁者』として学園で恐れられるようになった零司は孤独な身であったが、ある時、一匹のポメラニアンが彼に近づく。
アニ高には、『動物科』という珍しい学科がある。その犬もまた、動物科の生徒のものだろう。
零司はそのポメラニアンに、モカが好きだったお芋ボーロを食べさせる……すると、不思議な気配が漂いはじめ、人々の嘘が色付いて見えるように……!
その後、ポメラニアンのくーちゃんとその飼い主である白雪ことはとともに、零司は学園内で起こる事件に挑むことになるのだが――。
本作は、零司、ことは、くーちゃん、という個性的な主人公たちが活躍する学園ミステリーです!
『嘘が見える』というくーちゃんの特殊能力を活かし、人々の証言をたどり、状況証拠などを合わせて真実に辿り着く過程は、ドキドキの連続!
『嘘』はただ一色であるとは限らず、様々な色を持っております。その色分けによって人々の心理を読んでいく調査方法がとにかく面白いです!
また、登場人物たちも魅力的!
不良三人組、生徒副会長の焔藤、演劇部の天才プリマドンナ・雅先輩、そして生徒会選挙で健気に頑張る花咲みのり……他にも、登場する生徒や先生たちも皆個性的で、愛すべき部分をしっかりと持っており、物語を活気あるものにしてくれます!
他に類を見ない学園ミステリーの傑作!
是非ともご一読を!!!
この作品は、学園ミステリーに独創的なアプローチを持ち込んだ傑作です!
最大の魅力は「嘘の色が見える」という斬新な設定。
影の制裁者・九条零司がポメラニアンのくーちゃんと出会うことで獲得する能力で、校内の不正や権力闘争を次々と暴いていく展開が痛快です。
色彩による心理描写が秀逸で、説明的になりがちな「嘘」を視覚的にスッと理解できる手法が心地よい!
零司の硬質な正義感も魅力的で、「見苦しい嘘を許さない」という一貫したスタンスに好感が持てます。
過去の喪失体験から生まれた倫理観と、制服ポケットの「お芋ボーロ」という小さな優しさの対比が、彼を等身大の少年として描き出している点も秀逸です。
蒼い瞳の少女・白雪ことはとの温度差コンビも絶妙!零司の冷徹な正義に対する、彼女の温かい知性のバランスが物語に深みを与えています。
構成も見事で、毎回の事件解決×大きな陰謀の伏線という二層構造により、連載でも読みやすく一気読みでも満足度が高い仕上がり。「狂気の実験」「禁断のシステム」といった不穏な伏線が、学園ミステリーを社会派サスペンスへと押し上げます。
完結済み全37話という安心感も嬉しいポイント!
学園ミステリー好き、異能×探偵もの好き、そして正義と優しさの両立を描いた作品をお探しの方には絶対におすすめです。
放課後に始まる、少しサスペンスな日常をぜひ体験してください!
<第1話~第2話のプロローグを読んでのレビューです>
全体的に、冷たく研ぎ澄まされた描写の中に、細やかな心の揺れが静かに描かれている。語り口は硬質で、理知的な観察を通して人物の内面や環境の空気感が丁寧に描写される。特に零司とポメラニアン、ことはの登場場面では、暴力や孤独といった闇の底からふと差し込む温もりの光が、静かにだが確実に読者の意識を掴む。
零司が小さな銀色のパッケージをポケットから取り出す描写「指先に触れたのは、小さな銀色のパッケージ――お芋ボーロ」
過去の痛みと今の小さな救いを同時に感じさせ、主人公の心情が文字通り手触りを伴って伝わる。その細部への配慮が、物語の奥行きを深めている。
また、学園の裏で展開される緊迫した場面と、ことはやくーちゃんとの柔らかな日常描写の対比が巧みで、物語にリズムと緊張の緩急を生み出している。このメリハリが、読後感に静かな満足感をもたらし、作品全体の世界観に自然と引き込まれる要因となっている。
登場人物の思考や感覚を丁寧に拾い上げつつ、暴力や欺瞞といった現実の厳しさを容赦なく提示する。その冷静な視線と同時に、微かな希望や温もりを織り込む巧みさに、読み進めるほど物語の深みと作者の緻密さが伝わる。