探索者のロビンさんは鳥肉が食べたい~封印迷宮都市シルメイズ物語~
荒木シオン
キミを見ていると鳥肉が食べたくなってくる不思議
「う~ん……お肉が食べたい。アッサリしつつも
夕方。行きつけの酒場で食事と
ここは
「どうして俺を見ながら言いますかね……。というかロビンさん、種族的にお肉って食べないと思ってたんですけど……」
「それは
笑って残りの葡萄酒を一気に
あとはその
ちなみになぜか目当ての鳥肉料理は置いていなかった……悲しい。
そうしてお肉に
「いや、待ってください……。俺の中でどんどんイメージが
「はっはっはっ……
運ばれてきたお酒と料理を口にして笑えば、向かいのアルコンがマジかこいつ……とでもいうような
いや、う~ん……私も確かに多少変わり種だという自覚はあるけどね?
恐らくアルコンや世間一般的なエルフ像といえば、深い森の中で動植物たちと心を
まぁ、そのイメージが間違っているとは言わない。実際、その手のエルフは確かにいるし、森の奥深くには
だけど、それはそれだ。私のようにこうして森を出て外の世界に
ただ、そこはどんな人種や種族も同じだと思う。皆違って、皆良いのだ、うん……。
さておき、こうしていい感じに
「いや、ロビンさん! 目が恐い! 目が! どれだけ鳥肉食べたいんですか?!」
――アルコンのなんだか悲鳴じみた声で、ふと我に返る。
「むぅ……キミと
「なんの?! 俺、色んな意味で食べても
わたわたと慌て始めるのでとても面白い。これはこれでいい酒の肴だと思う。
けれど、こうして彼をからかうほどに、鳥肉への思いは
いや、別に酒場で出会った行きずりの相手に変な感情が芽生えたわけではないのだけれど……。
うん……よしっ、決めた! 明日にでも鳥を狩りに行こう。そうしよう。
ないなら自分で
★ ★ ★
翌日の午後。
私は愛用の弓矢と短剣を手にして、街の外に広がる森を訪れていた。
目的はもちろん新鮮な鳥肉を手に入れるため!
「で、どうして俺も付き合わされてるんですかねぇ……」
「いや、だってキミ、この手の狩りは得意そうな感じだし? あとは普通に人手が欲しかった!」
「ロビンさん……ちょっと
「それはほら、自然の中でのびのびと育ったからではないかな?」
「さいですか……はぁ、でも、どうせなら迷宮のほうが良かったんじゃないですか?」
視線を
「う~ん……普段ならそれもありなんだけどねぇ~。今、迷宮の表層は荒れてるからさ」
「あぁ、まだ終息してなかったんですか、例のアレ……」
「そそっ……。落ち着くまでもう少しかかるんじゃないかな……」
現在、迷宮内はとあるモグリの探索者が
この情報が出回った今でも迷宮へ飛び込むのは、
うん、ひょっとしたら酒場に鳥肉を含めて肉料理が少なかったのはその辺も関係しているのかもしれない……。
あの魚介類の発酵食品も、それを
ふ~ん……意外に悪いことばかりでもないね。アレ、美味しかったし。
なんてことを考えながらアルコンと狩りを続けること数時間。
これだけ獲れれば今夜はとても
「……でち?」
真っ赤なローブに身を包み、左右の手に
え? どっから出てきた? てか、
突然のことに
「でっちー!」
相手は
これは
見れば弓を構えたアルコンが冷や汗を流してこちらを見つめていた……。
少なからず距離を取り、私とアルコンを交互に見やる赤ローブ。
あの
なんてことを思いながら次の行動を考えていると、
「どこへ消えたかと思えば、なにをやってるのかな、サクラコ……?」
「って、チェルカ?!」
そのあまりに予想外な姿を目にし、思わず名前を口にすると、
「おや? ロビン?
呼ばれた彼女も驚いた様子でこちらを見つめ返してくる……。
探索者のチェルカ、封印迷宮都市シルメイズでも数少ない友人の一人。
そんな彼女の元へどこか申し訳なさそうに慌てて
うん、これはなにがどうなっているのかな?
★ ★ ★
数分後、話を聞き終えるとなかなかに驚きだった。
実はこの赤ローブ、黒髪の少女サクラコこそが
で、彼女をチェルカが迷宮内で
うん……確かに迷宮の現状を考えると、
「なので……その、
地面に座り込み深々と頭を下げるサクラコ。
確か
「まぁ、そこはもういいよ。
「そ、そう言っていただけると、心が大変ありがたいのでち……」
顔を上げ、ほっと胸を
チェルカも安心した様子で
うん、本当になにもなくて良かった。下手をしたら
その
夕食はもちろん今日獲ったあの鳥肉!
調理はなんとサクラコがしてくれた。チェルカ曰く、その腕は下手な食堂には負けないぐらい
友人の言葉を信じて楽しみに待つことしばし、ついに料理が完成する。
そうして目の前に運ばれてきたのは――、
――シンプルな見た目の
え……なんか思ってたのと違う。もっとこう
あえて
そんな見た目だったので大して期待せず口にしたのだけど、
「――――?!?!」
え、なにこれ美味しい!?
目を見開きサクラコへ視線を向けると、
「ふっふっふっ、どうでちか?
どこか
なるほど……焼き鳥、これは美味しい。悔やまれるのはこの場にお酒がないことぐらい。はぁ、これは絶対にお酒に合うヤツだよぉ……。
「あの、
彼を見つめどこか心配そうに
「ばっ……あのね、俺は
そんな彼女へなぜか慌てた様子で弁明するアルコン。
二人のやり取りが
ここは封印迷宮都市シルメイズ。世界中から多種多様な人種、種族が集まる探索者たちの街。
……to be continued?
探索者のロビンさんは鳥肉が食べたい~封印迷宮都市シルメイズ物語~ 荒木シオン @SionSumire
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