今日の空は

璃々花

おぼろ雲

ねぇ、美紀。



外はすごく晴れていてね、空にはおぼろ雲が見えているよ。


前に


「ぼんやりしてて、雲が空を覆っているみたいだね」


って言って、写真撮っていたね。



今は3月の下旬で、桜が見ごろになっている。

一緒に見たいね、お花見に行こうよ。

美紀は料理が苦手だから、僕が


「ピクニック行こうよ」


って言ったら


「私は絶対お弁当なんて作らないからね」


って怒りながらも、頑張って大きいおにぎりを作ってくれたこと。大きすぎて笑えたけれど、すごく嬉しかった。美味しかったし、気持ちよかったね。



ねぇ


君の眼には何が見えているの。

頭の中では何を考えているの。



僕のことは少しでも考えているのかな、僕の声は聞こえているのかな。




ピコーン、ピコーン、ピコーン、、、、




病室には心拍数のモニターアラームが鳴り響く。


モニター画面には『82』と書かれている。

きっとこれは、心拍数。

良かった、美紀は生きている。心臓も動いている。




ーーーーーーーーー



現在、交際して3年過ぎ、、、今は社会人2年目。僕と美紀は芸術大学卒業で、僕は広告デザイナーをしている。もうすぐ3年目になるところ。彼女は衣装作成の仕事をしている。まだまだお互い見習いで、独り立ち出来ずに、支え合いながら働いていた頃、、、。



ーーーーーーーーー



「ねえ、あの雲、ハート形に見えない?あ、風が強くなってきたから、形が崩れてきちゃった。ハート、見えた?」




僕は、写真サークルに入っていたのだが、自由なサークルで、誰が入っているのかも分からない感じだった。所謂、飲みサー、っていうのか。僕はそういうのが苦手だったので、入部してから後悔はした。でも、写真とカメラは好きだったので、移動しては何かしら撮っていた。



突然、話しかけられたんだ。


中村美紀。



同じサークル?同じ学年?



あー---、、、同じ学部だな、、、。

なんかオリエンテーションの時に、顔は見たことがあるような、ないような。



僕、鈴木大智は、人と関わるのが苦手、というか、、、人のペースに合わせるのが苦手で、高校時代まで、一匹狼であった。大学でも、そんな感じ。なんか、サークルに入るのが普通っていう雰囲気だったから、写真サークルに入ってしまったって言うのが確か。


だから、誰かに話しかけられるなんて、びっくりすることで、ハート形の雲なんて見てられなかった。ってか、初めて話すのに、雲の形なんて、、、不思議だ。


「ねぇ、聞いてた?」


「えっ、、、あ、うん」


「同じ学部の鈴木くんだよね?」


「あ、うん、、、」


「なにこいつ、みたいな目で見ないでよ」


「え、見てないよ」


「いつも一人でいるよね?なんで、写真サークルなんて入ったの?」


「なんか、サークル入るの当たり前、みたいな雰囲気だったから」


「私も同じ」


「え、そうなんだ」


「そういうの面倒くさいよね」


そういう所で共通点があった。でも、今回だけの会話だろう、と思って僕は自分で撮った写真をカメラで見ていた。


「何を撮るのが好き?」


ああ、質問されるのか。面倒だな、、、


「花とか」


「へぇ!いいねぇ!今度、現像したの見せてよ!」


「あ、うん」


、、、聞き返した方がいいのかな。


「君は?」


「私は空とか好き!あとは木、とか。基本的に上を見るのが好きでね」



美紀はいつも上を向いている女性。



この時は何も知らなかった。

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