88歳の天国恋愛物語~by.エンジェル~
DITinoue(上楽竜文)
88歳の天国恋愛物語~by.エンジェル~
地上では仏事を行っている。私、亜紀代は夫と一緒にその様子を見ていた。
「ようこそ、善輝さん、亜紀代さん。歓迎します」
そう言ってやってきたのは、スラっとした体系の青年だった。
「僕は、リースと言います。19歳で死にました。」
「まず、ここはどこなんですか」
善輝が聞いた。
「よくぞ聞いてくれました、ここは天国です」
あまりにもストレートすぎる答えを出してきた。
「天国なんですか」
「そうです。今から永遠に天国を楽しめます」
「はぁ」
「天国は天使の国です。天使は生きている人へよくメッセージを数字で送ります。その数字のことを、『エンジェルナンバー』って言います」
「へぇ」
何か聞いたことがあるが、あまり知らなかった。
「しかも、天国にやってきた人もエンジェルナンバーで幸せになることができます」
ふぅん。
「僕の、死んだ日は717になります。この数字は、『なりたい自分になれる、最高の日』という意味です」
「で、僕が死んだ日、1219はどうなるんだい?」
善輝はいつの間に溜口になったんだ?
「『信念が現実になる』です」
「ほぉ。天国でも幸せな暮らしができるように生前願ったからな」
「じゃあ、私の1221はどうなるんだい?」
「『あなたの望みを現実にする』ですね。1219と似ている。でも、自分を信じ続けないと、望みは現実にならない。現実になったってことは自分を信じ続けたからですね」
そう言われると照れる。
「それじゃあ、僕はこれくらいで。良い天国Lifeを!」
そう言って、リースは突然去っていった。
「なあ、これからどうするんだ?」
「まずは、家に行きましょうか。リース君が教えてくれたよ」
家に行くと現世で住んでいた家と同じような構造だった。何もすることがなかったので、寝た。
僕、善輝はナンバーを調べていた。ところがある日のこと、地上では、ホワイトデー前日の3月13日(金)だ。
「おはよう」
「おはよう」
亜紀代が起きてきたので、慌てた。
「私、決心したの。この家を出る」
「へぇ・・・ん?何だって!!」
「落ち着いて。わけがあるの。仕事をしたいからなのね。」
「あのね、天国でも子供を産むことができるらしいの。でも、その子供が子宮に入るまでに教育しなくちゃいけないらしくて。それで、学校があるらしいから、そこで働くことにした」
「別れなきゃいけないのか」
「いや、別に。住み込みで働くだけだから」
「ならいいが」
安堵は出来なかった。ザワザワと胸騒ぎがしていたからだ。
――1週間後、亜紀代が出て行った数日後に予感は当たった。別れなきゃいけないかって聞いて、いいえって言ってたのに。
「仕事場で告られた。せっかくの天国ならやり直したい」ってさ。で、当日中に離婚届を天国役所に出した。
私、亜紀代は離婚した。善輝とは別れたくなかった。でも、仕事場で出会った私と同じくらいの年の男性、
「亜紀代、ここが僕の家だ。早速料理を作ってくれないかい?」
「何で、私料理は得意じゃない」
「いいから」
「無理」
「やれ」
しつこく言ってくるので、実際に和食定食を作る。すると・・・・・
「マズい」
「失礼だねぇ。あれだけ作れと言ってたのに」
「うるさい」
とんでもないやつに口どかれたなぁと思った。
またある時、倶楽部のサークルに行って、友達と話しているのを見ていた俊介になぜか、厳しく注意された。
「俺以外の男とは会うな」
また、兄と一緒にショッピングに行くと、
「あいつなんかいらない。あいつは君の兄じゃない」
と、言ってくる。
男の人に会うたびに、彼から同じような注意を受ける。マジでムカつくんだけど。
そして、ある日にこう言われた。
「外に出るな」
「は?」
言われた時は意味が分からなかった。
「なんで」
「俺以外の男に会ってほしくないからだ」
「嘘・・・・・」
「会うなって言ってるんだ、れは俺からの愛なんだ。受け取ってくれ」
「いや」
「受け取れ!!」
返事を待たずに、彼は去っていった。
ある雨(??)の日。亜紀代は俊介の家から脱走した。あの人のことは元々よく思わなかったが、もう本当に嫌になった。結婚式を挙げる前で本当に良かったと思う。
脱走先は公園だ。そこにはなぜか、落とし穴がある。私が前もって調べておいたから、簡単に住居にすることができる。
で、さてと・・・・・老体に鞭打って、まあ、天国だから軽々とできるわけだけど。ひたすら穴を掘って、部屋を作っていく。その最中に、愛しの人が現れた。
僕、善輝は現世を覗き見できる展望台があると聞いたので、それがあるところに向かった。すると、そこは公園だった。だが、何か土が掘り返された跡がある。覗くと・・・・・
「亜紀代じゃないか!!」
「よ、善輝さん!!」
2人は感動の再会を喜んだ。若いころのように、身体を合わせた。彼女の身体は冷たかったはずなのに、僕にとってはとっても温かく、気持ちが良かった。んで、家に帰って2人で楽しいことをたくさんした。
その日は、8月8日の午後1時13分。88のエンジェルナンバーは「富をもたらす」という意味だ。88歳寂の僕は富よりももっと良いものを手に入れた。
で、午後1時は13時になる。1313は「復縁」という意味を持っていた。
離婚届を取り消しし、もう1度小さな結婚式を挙げると、ある男が詰めてきた。俊介だ。
「俺の妻を返せ!!」
「返さないよ」
善輝が言う。
「亜紀代、俺以外の男には会うなと言った・・・・・!」
「あなた、私を愛していると言いましたね?私はあなたのことを最初っから愛していませんでした」
「え・・・・・・・・・・・・」
見かけによらず、冷徹な言葉を放った亜紀代に、俊介はショックを受けたようだ。彼は数十分立ちつくすととぼとぼと歩いていった。
月日は流れ、2人の子が、昇天してきた。。命日のエンジェルナンバーは710。そして、彼も88歳で死去した。天国で家族として暮らせる日々を取り戻した彼らは、“願いが達成した”、“大きな
88歳の天国恋愛物語~by.エンジェル~ DITinoue(上楽竜文) @ditinoue555
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