7.指輪
明日は日曜だ。景子一家は今夜は私の家に泊まる。今日一日、私の家から歓声が途絶えることはないだろう。こんなに賑やかだったら、もう雪子は襲ってこられないだろう。私は雪子の恐怖を忘れた。
夜になった。私は時計を見た。あと数時間だ。数時間で雪子の怨霊は消える。
幸枝と景子は台所で片付けものをしている。隆は昼から飲んだ酒の酔いが回って早々と寝てしまった。私は居間で雪乃と二人でテレビゲームをしていた。
私は昨夜、檀家の者が観音寺をSNSで発信したいと言っていたのを思い出した。私は雪乃に聞いた。
「雪乃。おじいちゃんが世話になってる観音寺のことをSNSで発信できるかい?」
雪乃はうなずいた。
「うん、簡単。すぐしてあげるよ。お寺の写真はない?」
私は部屋に帰って探したが、写真はなかった。居間に戻ると、雪乃が携帯をいじっていた。私は雪乃の携帯を覗き込んだ。そのとき、私の服のポケットから、あの雪子の指輪がころがり落ちた。雪乃の声がした。
「あれ? これ何?」
「ああ、これはね。おじいちゃんが昔もらった指輪だよ」
「指輪? ホント、懐かしい」
「そう、懐かしい指輪なんだ」
そう言って、私ははっとした。なぜ、雪乃が懐かしいと言うのだ。
私は雪乃を見た。雪乃が怖い眼で私の顔を睨んでいる。雪乃の手元には、携帯とあのお
雪乃の眼が赤く光った。
「裏切者」
雪乃の口から雪子の声がした。
雪乃が私に覆いかぶさってきた。
了
あなたの米寿のお祝いに 永嶋良一 @azuki-takuan
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