コメディアンとは何か。

黒幕横丁

洲場利的中の流儀

 お笑い芸人。それは一言で言い表せないほど、多彩な職業だ。そして華もある。

 お笑い芸人を目指すものはお笑い会の頂点を目指して日々獅子奮迅している。面白くなりたい、人々を笑顔にしたい、モテたい、めっちゃモテたい、お金が欲しい、ウハウハ稼いで超モテたい。人々はそんな夢を胸に抱えて今日もお笑いという舞台に立つ。

 舞台に立てば其処は魔境だ。自分の言葉、体一つで、戦況は刻一刻と変わっていく。ドッと盛り上がることもあれば、まるで氷河期のように冷え込む事だってある。この毎度の観客や空気感との駆け引きがまるで命のやり取りかのように感じられる。

 自分が今世紀最高に面白いと自負していたギャグを世に放つ。……スベった。それはまるで自分を築いていた礎が脆くもひび割れて崩れ去る。足元が見えなくなる。暗くなる。何も見えなくなる。寿命が縮まる。

 お笑いが分からなくなる。そもそも“笑い”ってなんなんだとなる。そんな自問自答に苦しめられることも少なくない。

 でも、学んで、空気感を掴んで、そしてやっとお客さんに笑って貰って、心がホッとする。やった、今日はウケた。それだけで自分がだんだん戻ってくる。保てるようになる。

 お笑い芸人を目指したのは、小学生の頃、クラスメイトにギャグを披露して大爆笑になり、面白いからお笑い芸人になればいいって言ってくれたからだ。

 俺はその今もその夢を胸にお笑いという道を突き進んでいる。


 何があろうと絶対に心折れない。お笑いの道を突き進んでトップを掴む、それが俺の流儀だ。


 ***


「……心折れそう」

 黒い笑みをたたえたアナウンサーにアメンボのモノマネを指示され、俺はとても心がめげそうである。

 なんでこうなったかというと、いきなりクイズの解答者に仕立て上げられ、かつクイズが俺の高校のときやっていたアメンボのモノマネをやれというもはやクイズでも何でもないものだ。誰だ、俺の黒歴史をいったクラスメイト問い詰めてやる。

「わ、わぁい。ボク、アメンボのアメちゃん。水面を泳ぐのが得意なんだぞー」

「アメンボはそんなに気持ちわるい動きをしないので、不正解です」

 即座にアナウンサーから不正解という言葉を聞く。

「こんな仕事クソくらえだ!コンチクショーーーーーーー!!!!!」


 かあちゃん、俺、傷心しながら頑張ってお笑い芸人してるよ……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

コメディアンとは何か。 黒幕横丁 @kuromaku125

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ