センテンスが光る現代ダークファンタジー

 山上の町、空葉町ではこのところ殺人事件、死体損壊事件が多発していた。とあるものを追ってその町に仮住まいを定めた絵描きである真野深月は、唐突に警察官——特殊死体損壊対策課の課長だという少女、黛灯に臨時職員となるよう勧誘を受ける。深月には死した者を救う力があるのだと。

 なぜか死体と行き会ってしまう深月さんがミステリアスな少女と出会い、内に眠っていた特異能力に目覚めて事件を追うことなる。ストーリーラインを見れば異能力ものなのですが——美しい完璧な死体を描くことに至上の悦びを感じるという彼の暗い情念が超熱量で描き込まれることで、それを超えた人間ドラマとなっているのが本作最大の魅力です。

 そして熱を表す文章ですよ! これがまた彼の“ヤバさ”をいや増すのですね。説明描写の長文から心情の短文へ変じるスピード感、高まる鼓動と荒くなる息づかいまで感じられて、読む速度もつい速まります。

 スリルあり、狂気あり、雰囲気あり。甘さゼロの妙なる苦みをお愉しみあれ!


(新作紹介 カクヨム金のたまご/文=高橋 剛)