お前を笑っている人間を見て世界中が笑っているぞ
白川津 中々
■
帰宅してボロボロになりながら弁当をレンチンしテレビを付けるとお笑い番組がやっていた。
弁当のビニールを剥がし、何の気なしにその番組を眺めるも、乾いた笑いさえ起きない。
なんだこいつらクソつまんねぇ。どうしてこんな退屈な人間がちやほやされ、面白い面白いと持てはやされるのか意味不明だと腐しながらも、リモコンを動かす気力もなく垂れ流しのまま弁当を口に運んでいく。
二組三組の演目が終わり、次のコンビが壇上に上がる。弁当を平らげた俺は多少回復し、そろそろいいかとチャンネルを変えようとした瞬間、テレビから聞こえてきた言葉に固まった。
「いやぁサラリーマンなんてクソつまんないじゃないですかぁ」
クソつまんない。
確かに、ボケを担当している人間がそう言った。
それは非常識、あるいは誇張しつつも共感性の高い冗談を言ってツッコミの人間が訂正していくというネタであるのは当然理解していた。そのネタを強調するように、司会者やゲストの芸能人が「最低や」とか「そんな事ないでしょう」といったフォローを入れ、テレビ側もそれを聞こえるように拾っている。
これはお笑いであって真面目に受け取らないでください。
悪意はないですし馬鹿にする意図はございません
そんな都合が勝手に了承され、俺は怒りの感情さえ制約されてしまった。
空になった弁当に、雫が落ちる。必死に抑えようとしていた雫が、ポツリ、ポツリと……
俺は何のために生まれてきたのだ。
知りもしない人間の笑いの種にされ、嘲笑されるために生きているのか。
そんな不安を口にする相手もおらず、項垂れる。テレビからは相変わらず笑い声が流れている。俺を馬鹿にするような、軽蔑するような声が。
お前を笑っている人間を見て世界中が笑っているぞ 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます