第150話 俺、真の神になる

俺が作ったワールドが俺の住んでる世界だったという話に俺の頭はこんがらがってしまっていた。俺はどうしても納得できないので証拠を見せる様にアマテラスに頼んだ。


「アマテラスのいう事が本当なら証拠を見せてくれ。」

それを聞いてアマテラスが一冊のイベ書を取り出す。

それはCコモン『死線からの復帰』だった。


「じゃしっかり見ててね。」

そう言ってアマテラスが持っていたイベ書を使う。


俺とマスターがモニターを覗き込むとそこには登山に来ているのか吹雪く中でテントにうずくまる二人が映し出されていた。


『マリー、段々目が霞んできやがった。こんな事になってすまねぇ。』

『なにを言うのダレン!こんな貴方と知って一緒になったのよ!謝る必要なんてないわ!』


その言葉を聞いて男が微笑んで目を瞑り、ダラリと首を傾けた。

その瞬間、男の身体が光る。


『ダレン!ダレンー!!』

女性の悲痛な叫びに、男がふと目を開く。

『済まない、一瞬寝てしまった。なんかさっきよりちょっと調子がいいみたいだ。』

男はそう言うと首を振って上半身を起こした。

女が嬉しそうなきまり悪そうな複雑な顔をしている。


アマテラスが更にUC『ギリギリの帰還』を使う。

「これでよし!ね?」

アマテラスが少し偉そうに俺の顔を見る。


「いや、『ね?』って言われてもこの世界で起きた事なのか判らんぞ?俺の知り合いですら無いし!」

その言葉にアマテラスがしまったという顔をする。

「ま、まぁ三日後位にはニュースになってると思うよ!奇跡の生還って!!」


俺はガックリと肩を落として聞いた。

「今判る証拠はないのか、今判る証拠は!?」

「うーん、もう時間軸が一致しちゃったから時間早めても解らないしぃ、SRスーパーレア『予知』はもっと大きなイベントしか判らないからすぐ判断付く事起こらないかもだしぃ、無い、かも?」

アマテラスが舌を出して肩をすくめる。


「まあ、常之ちゃん、おいおい分かる事だわ。なんにしても世界が本当にこの中にあるのなら、間違えても悪い事に使っちゃダメよ!?」

「あ、マスター、そこは協定で取り決めがあるから大丈夫だよ。イベ書は世界への干渉だから統治機構も観測できるしね。」


「え?マジで?俺、監視されてるの?」

「違う違う。世界統治機構にはインテリジェントデザイナーからの干渉を検出するために世界中に観測所を作ってるんだよ。イベ書は因果に作用するから、その揺らぎが観測できるの。ま、それが国之さまだったんだけど。」


「・・・つまり?」

「つまりイベ書を使うと、使った事が世界統治機構にバレるって事かな。」

「なるほどねぇ。イベ書が観測されて不可解な事が起きたら常之ちゃんのせいって事ね?」

「うん。そう言う事。」


「え?じゃぁ俺もうワールドにイベ書使えないの?」

「そこについては小さい効果については目をつぶってもらう事になってるから。なにせこっちにはSR『神の怒り』があるからね!」


「いや、それ俺も死ぬって事だろ?もう脅しに使えないじゃん!」

「その時はまたブラフで頑張るしかないよね!」

アマテラスが可笑しそうに笑った。

マスターも笑っていた。

俺もつられて笑ってしまった。


まぁ面倒な事は全てすんだんだし、その時はその時で考えればいっか。

その後、俺はアマテラスから協定の話を聞いたりマスターから過去の話を聞いたりして過ごした。



あれから数日が経ち、俺は日常へと戻って来た。

いや、以前の日常とはちょっと違う。


何せ俺はこの世界の神になっちゃったんだからな。

まぁ色々と京協定による制限付きだったりするんだが。


そして今、俺は人生を賭けた大作戦に出ていた。

色々と協定を解釈してアマテラスと綿密な相談を重ねに重ね、イベ書で実施テストを行い、そして遂に決行の為に行動を開始していた。


俺は端末に小さな声で話しかけた。

「アマテラス、そろそろ休み時間だ。用意はいいか?」

緊張に俺の声は少し上ずっていた。


「こちらアマテラス、準備万端であります!どうぞ。」

アマテラスから気合十分な返事が返ってくる。

そして、遂に休み時間のチャイムが鳴る。


「よし、作戦開始だ!」

「らじゃ!イベ書投入!3、2,1、実行確認!」


俺はスッと席を立ちあがると天野さんの教室まで急ぎ足で向かっていった。

後角を一つという所で俺は出会い頭に人とぶつかった。


「あ、アマテラス、想定外だ。イベ書の効果はまだ残ってるか?」

俺は慌ててアマテラスに小声で確認を取る。

「よく見るであります!作戦は成功です!」


アマテラスの言葉に俺はぶつかった相手を見る。

それは紛れもなく今回作戦の天野さんだった。


そう、俺はイベ書を使って天野さんと付き合える様に作戦を練っていたのだ。

というかこのイベ書の効果はこればっかりかよ!!

と思って天野さんを見ると・・・見えていた・・・しかも見たのバレた。目が離せなくてめっちゃバレてるうううぅぅぅぅ!!!


なんでイベ書ってやつはぁぁぁ!!

「ああああああああのあのあの!!」

最早言い逃れすらできない状況を否定する様に俺は両手を前にして振っていた。

天野さんは慌ててスカートを引っ張って隠すと顔を真っ赤にして俯いてしまった。


「ごごごごごごめんなさい!!」

俺は震える足を頑張って立たせるとよたよたとその場を走り去った。

おいおいおいおい!アマテラスゥゥ、作戦は成功してねぇぇ!

ていうかヘタレの俺がここから挽回できる手が全く思いつかねえ!!


なあ、神になったのに世界が思い通りいかないんだが!?


― おしまい ―




― あとがき ―

本当は近況ノートに書く事かもですが、感謝の気持ちを伝えたく。


最後まで読んでくださった皆さんありがとうございました。

応援を頂いた皆さん、コメント頂いた皆さんには本当に励まされました。


なんだが読み返すとこれ伝わってるのかな?って文章が多くて申し訳ないと思いつつもシミュレーション仮説的メタワールドな設定は結構楽しんでもらえたのでは、と密かに考えていたりします(笑)


最後は色々と迷いました。

この終わり方なかなか受け入れられないのでは?と思いつつ最初に決めていた事なのでそのまま行きました。宇宙の始まりって無限後退な話が多いと思うんですけどそこにシミュレーション仮説をスパイスにもう一説付け加えてみました的なノリで考えたものです。


話作りが下手で色々と説明入れられなかったものもあるのでもし解らなかった事がありましたら是非質問ください。(考え切ってないものはご愛敬)

感想なんかも貰えると凄く嬉しいです。


次はツクールのイベントに短編を出してみようと考えています。

もし見かけたら読んでいただけると凄く嬉しいです。


最後に

この長い文章をほぼ毎日更新できたのも読んでくださった皆さんがいたからです。

心から感謝いたします。


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なあ、神になったのに世界が思い通りいかないんだが にひろ @nihilo

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