ハンバーガー

嬾隗

暗い部屋のテレビ

『ご一緒に、ホ↑タテ↓はいかがですか?』



 暗い部屋に、漫才コントの映像を流しているテレビ。

 光の先には、ネットで注文したハンバーガーを食べている男性。


 男性の近くには、女性が寝転がっている。


「その漫才好きだねえ」

「気に入っているのもあるけど、ちょうど注文したのがこれだったから」


 女性は寝転がりながら男性に話しかける。男性はハンバーガーの紙をたたみながら返す。


「うーん、ネットがつながっていないとやることないなあ」

「まさに現代っ子だな」

「だからって同じDVDばかりじゃ飽きるに決まっているでしょー」



『プリーズヘルプミー』



「しょうがないだろ。特にやることもないし」

「まあねえ。ナゲットいただきっ」

「あっ、お前!」


 女性はグダグダしながら男性のナゲットを盗み食う。男性はため息をつきながら、立ち上がる。


「どこ行くん?」

「便所」

「いてらー」


 男性がトイレへと行く。女性はまたゴロゴロし始める。


 しばらくしたのち、轟音が響き、アパートが揺れる。

 一拍おき、男性がトイレから帰る。


「今なんかあった……て、ああ……」


 女性が液体の中に沈んでいる。鉄臭い臭い、硝煙の臭いがする。

 横を向くと、テレビの光を反射して、黒光りする細長いものを装備した人物が立っている。


「あーあ、こんなことで死ぬとはなあ」

「$%&!#"\?」

「言葉も通じねえや。もうひと思いにやってくれや」


 部屋に響く爆音。肉塊が倒れる音。近くの余っていたフライドポテトを咀嚼する音。全て、この暗い部屋の中に消えていく。




『おめでとうございます! 一等です!』




   完

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ハンバーガー 嬾隗 @genm9610

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