今日も頭の中に運行情報が入ってくる。

くすのきさくら

決して幼馴染と一緒に居たかったということは1ミリもない

休日18時08分。

現在俺は多くの人が行きかっている近鉄名古屋駅の改札近くの柱の陰でスマホをいじっている。

突然だが、今日の1日を簡単に話すと俺は高校の同級生たち。男女数人のグループで名古屋へと遊びに来て居た。まあ俺は強制参加だったんだがね。

そして少し前に俺だけグループから抜けた。という状況である。

――えっ?何か用事でもあったのかって?

いや、ちょっとした勘が働きましてね。今電車に乗ると――運転見合わせに巻き込まれるので、俺はこの近くで時間が潰せそうなお店を探しているところである。


なお18時10分――11分現在電車が運転見合わせをしているとかいうことはない。通常通り多くの電車が近鉄名古屋駅から伊勢志摩、大阪方面へと出発している。

特にこの時間は電車の本数が多いため先ほどから1分2分間隔で電車が次々と駅を発車している。


――えっ?何を意味わからないこと言っているだって?頭おかしいんじゃないかって?待て待て――そのうちわか――。


「居た。ちょっと、碧音あおとなんでみんなと一緒に帰らないのさ」

「……うん?音羽おとは?」


おっと、これは予想外。追加の説明が必要な状況となってしまった。今は俺が話していたところなのに、急に加わるなよ。


えっと、どうしようか。まず碧音あおとというのは俺の事だ。明野あけの碧音あおと高校2年生。短髪黒髪どこにでも居そうな男子。以上である。

次に俺に声をかけてきたのは、小俣おばた音羽おとは同じく高校2年生で――幼馴染。信じられないかもしれないが。保育園から高校2年生まで同じクラスという。もうなんなの?と、いう奴である。

ちなみに今日一緒に出かけていたグループの1人で、いつもはしていないサイドテール姿だったり。服もおしゃれだったりする。そうそう「男子が少ないから碧音あおとも参加ね」と、いきなり昨日の学校帰りに声をかけてきて――朝、本当にやって来て、強制的に俺を家から連れ出した奴でもある。

ちょっと情報をプラスしておくと。音羽の家は俺の家の隣だ。


って、今の状況的に俺が返事をしないとか。


「音羽—―みんなと一緒に改札抜けなかったか?」

「気が付いたら碧音いないから私も抜けてきた」


ちょっと怒った?表情で音羽が俺の隣へとやって来た。何でこいつ不機嫌なんだ?と俺は思いつつ。


「一応抜けるって言ったぞ?」

「何で帰るだけなのに抜けるのさ――ってもしかして――また何か感じたの?」


おっ、さすが幼馴染。ってまあ、前から俺はよく音羽には言っているからな「今日の――時頃電車乗るなら注意しろよ」などとね。などと俺は思いつつ。


「ああ、もうすぐ電車止まるな」

「それ、みんなにも言ってあげればいいのに、まだ多分駅に居るよ?」


俺が電車が止まることをつぶやくと。普通の奴なら「何を馬鹿な事言ってるんだ?普通に動いているぞ?」などというかもしれないが――さすが幼馴染。はじめこそは信じなかったが――何度か一緒に経験すればな。すぐに納得してくれるようになった。

ちなみに、今音羽がつぶやいたが。何故皆には教えないかって?だって誰も信じないし。変な事言っていると噂が広がるだけだからな。既に小学校や中学校で経験済みだ。でも――俺が言った後に、ちゃんと電車は止まってるんだがな。でも周りは――実は知っていて――などと言い馬鹿にしてくるだけだから。今は特に誰かに言うということはない。自分のためだ。まあ音羽には居た言うがな。先ほどは周りに同級生いたから何も言わなかったが――。


そうそう、簡単にだが俺の能力――というと言いすぎかもしれないが。

俺は何故か昔から。近鉄電車が運転見合わせになるという事だけ事前にわかるんだよ。ホントなんで?と言われると説明は難しいのだが。

ホント「あっ、もうすぐあの路線電車止まるわ」と何故小学校に入るくらいから突然わかるようになったんだ。いや――もしかしたら生まれたからずっと何かを感じていたのかもしれない。理解できたのそのあたりからだ。

まあとりあえすどのような理由で電車が止まるかはわからないが。電車が運転見合わせになるということがわかる。

まあ詳細な場所まではわからないがな。路線はわかる。

でも近鉄は営業範囲が広いので――全区間がわかってしまうということは――全く関係ないところの情報もいつも突然入って来るんだよな。大阪とか京都の情報が突然ピンと来てもな。全く関係ないし。だからな。

まあとりあえず現状を言うと、今回の俺の勘はこの後名古屋線。ちょうど今から俺と音羽が乗ろうとしていた路線で電車が止まるという事を俺に伝えてきていた。


「ってか。何で音羽は戻ってきたんだよ?」

「えっ?だって碧音いなかったし」

「そんなことで戻ってこなくても――また変な噂広がるぞ?2人が途中で一緒に抜けたとか」


俺は過去の事を思いつつ言うと――。


「いつものことじゃん」

「……勝手に付き合っている設定にされるのは毎回ごめんなんだが」

「碧音が私に黙って変な行動するからだね。ってこれからどうするわけ?」

「—―まあそのうち止まるだろうし。どっか喫茶店で時間つぶしの予定だな。ってみんなが乗る急行16分だっけか?まだ間に合うぞ?」

「何でこの後電車が止まるとか言いつつ。幼馴染をその混乱の中にほりこもうとするかな?」

「なんとなくだ。ふー、まあとりあえず。そのうちここも人でごった返す気がするから移動するか」

「OKー」


それから俺と音羽は近鉄名古屋駅の改札から離れて――近くにあった喫茶店に入った。


「お母さんには碧音とご飯食べて帰るって言っとこ」


席に着くと、音羽はそんなことを言いながらスマホをいじっていた。ってそれと同時くらいだった。


「あっ――本当に電車止まった」


スマホを見ていた音羽がそんなことをつぶやいたのだった。俺も自分のスマホで確認してみると――。


「……えっと、川越富洲原と近鉄富田間で踏切支障か」


鉄道会社のアプリを入れているのだが。そこからの通知がちょうど来ていた。俺と音羽が近鉄名古屋駅を離れたくらいに発生していたらしい。俺が通知文を読んでいると――。


「ねえねえ碧音」

「なんだ?」

「これっていつ運転再開予定?」

「さあ?」

「止まるのはわかっても再開は全くわからないポンコツだよね。碧音の勘」

「仕方ないだろ。わからないんだから」

「まあすぐには動かないとみて、晩ご飯食べていいよね。何食べようかなー」


それからの事を話すと、音羽と一緒に夕食を食べて――少し話して。近鉄が運転再開した。という情報を見てから近鉄名古屋駅へと向かった。


その途中、音羽に聞いたのだが。先ほどまで一緒に居た他のメンバーは、急行電車に乗り――名古屋の次の駅。蟹江駅手前で電車が止まり。しばらく車内に缶詰め状態だったらいい。まあ駅に着かないと降りれないからな。


「いやー、碧音の無駄な能力のおかげでこっちは晩ごはん食べれたからよかったー」

「ってか。他の奴らに変な事言ってないだろうな?週明け学校で前みたいに質問攻めとか嫌なんだが?」

「えっ?大丈夫だよ?普通に碧音と2人でご飯食べてるしか言ってないし」

「—―それだよ。それ。明らかに2人でご飯食べに行くために抜けたみたいじゃん」

「別にいいでしょ?幼馴染だし」

「何というか――ホント何も感じない音羽だな」


うん。音羽なのだが――見た目はかわいい奴なんだよ。だから人気もあるが――どうも俺と一緒に居ることが多いというか――まあ隠す気がないというか。うん。そのまま現状を言うので、前にもあったが。翌週など学校で俺が男子に囲まれるというね。

何度も俺は付き合ってないやらやらの同じ説明ばかりする時間となる。もしかした音羽はそれが楽しくてしている?と最近は思っているが――などと思っていると俺と音羽は近鉄名古屋駅へと戻ってきた。


駅へと戻って来ると、やはり電車のダイヤは乱れていたが――そこまで大きくは乱れていなかった。


「えっと……次の急行は。20時11分だね」


俺の隣では音羽がそんなことを言いつつ改札機にICカードをタッチして抜けていく。それに続くように俺もICカードをタッチする。


そして俺たちは少しホームで待って――4分遅れくらいで名古屋駅へと到着した急行電車に乗り込んだ。ちなみに折り返し運転なので、乗れるようになるまでに少し時間がかかったので――最終的には10分遅れくらいで近鉄名古屋駅を俺と音羽は出発した。そして――。


「って――やっぱり満員か」

「だよね。キツイ」

「音羽潰れてないか?」

「潰れそう……もう少しそっち行っていい?」

「ご自由に」


俺がドアとの間に音羽を入れると――密着状態となった。


「これ碧音に抱かれてるみたいだね」

「離れていいか?」

「無理でしょ?」

「……」


うん。まあ無理だな。ほとんど動けないし。ってか、なんか音羽からいい香りが――ほぼ0距離というか。何気に音羽こちらにもたれているし。ホント昔からだからか――俺に対しては何も感じないらしい。

なので電車が揺れるたびに、音羽を支えるというか。抱く形になっていた。


「あと30分くらい碧音に抱かれるのかー。って碧音顔赤いよ?」

「人混みで暑いんだよ」

「へー。ニヤニヤ」


音羽は音羽で――なんか楽しそうにしたやがる。これ後でいじられるネタじゃんと俺が思っていると。その時だった。


「—―!」


俺の勘は1日1度とかではない。

また電車が止まるのも1日1度とは限らない。もちろん同じ路線で2回止まることもある。

今まさにそれだった。


「碧音?」

「—―マジか」

「えっ?」


この後の事を話すと――俺は音羽を抱いた状態で1時間30分ほど耐えることとなったのだった。

乗っている時にピンと来てもね。何も対処できない。まあ実はこのパターンよくあったりする。まあその話はまた今度。それと音羽に俺がいじられたりする話も……また別の話だ。

1時間以上幼馴染と密着していたら、音羽は楽しそうにしていたよ。




(おわり)

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今日も頭の中に運行情報が入ってくる。 くすのきさくら @yu24meteora

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