疾
身体を纏わりつく粘液が気泡となり蒸発し空を舞う。時間という時間が焦りという時空間へと変幻し呼吸が乱れる。空には黄色い星が輝いては泡となって弾け飛ぶ。三味線が鈴とかし縞模様の尾を作り出す。粘液。泡。はじけ。空へと。焦り。そうだあれば空間であり。実体であり。シナプスの踊りであった。退治と呼ぶには成長を遂げすぎてしまったラプトル。大怪盗は王妃のオパールを盗み逃げていった。まるで蛾が飛んで姿を隠したかの如く。あの縞模様は変芸自在。摩訶不思議。いとおかし。星々がワルツを踊っている。否、タンゴ。否、不調和音。アステカ文明が宇宙へと飛び去ったように弾けていく。弦のからくり屋敷。肌を覆う羽毛が逆立ち中。そうだアレは確か井戸に飛び込んだまま帰ってこなかった爬虫類。羽毛が生え、水中を泳ぎ龍となった。ミミズの幼虫。にょろりと歯茎の間を這い寄り、玉虫色を光らせる。珊瑚礁はなぜ揺れ動くのだろうか。それはまなこが鏡となっているからであった。タンゴ、タ、タンゴ。蒸気船は夜空を走りゆく。脱皮を続けて残ったものは種であった。七色に光煌めくパンドラの箱。リズムという鼓動。変幻。消滅。それはまるで消えゆく生命線の消しかすのようなもので、神経を研ぎ澄ました。精神統一をするには若すぎて、青春をするには老け過ぎて。根と葉の間の管のような生臭さ。海を二つに分ける魔女は泡風呂を寝床にしていた。屋根のない宿屋はこうもりの寝床となり、糞の塔を作り上げていた。燕は崖を飛び降り、鴎は灯台を飛び降りた。地面には白い花が咲く。眩く光を反射する。脳髄の飛び散る模様は心理分析に使われ、長椅子は夢を語る。アラベスクな血液はドーム型の乳房を輝かせる。きらめき、ぎらめき、からめく。扇風機は歌を知らぬ。人魚の抜け殻は脱ぎ捨てた靴下のようで。怒り狂った老婆の吐息。蝉と鴉の合戦。さようなら、さようなら。こちらは笹部さんのお電話ですか?灯りを消す。吐息を吐く。瞼を閉じる。
失。
「し」である 紅蛇 @sleep_kurenaii
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