おまけ10 流行のはじまり

「あ〜暇だ〜。」


【こちらに今週末までに片付けなければならない書類の山がありますよ?】


 首都のあるハーンブルク連邦の本土は、俺の故郷同様、春夏秋冬がはっきりしている。

 現在の季節は冬。

 ここシュヴェリーンは、雪が降るようなことは滅多にない比較的温暖な地域ではあるが、やはり冬というのは寒いものだ。

 まぁそんなことは置いといて、現在の俺はとても暇をしていた。

 と、いうのも・・・・・・


「ふっ、甘いな、アイ。今日は何曜日だと思ってる?」


【火曜日ですが・・・・・・】


「つまり、提出期限の日曜日まであと6日もあるのだ。そしてこの事実が指し示すことはただ一つ、この書類は日曜日の俺が何とかしてくれるはずだから、実質今の俺は暇だということだ。」


【はぁ・・・・・・。こんな人に国家元首を任せて良いのでしょうか・・・・・・。】


「一応俺は、引退済みなはずだけどな・・・・・・。」


 国王の座を息子のレンに譲った俺だが、法律上の国家元首は未だに俺のままであった。というのも、この国にはレオルド=ハーンブルク特別法という謎の法律があり、そこに記載されている内容の一部を簡単に説明すると、俺が生きている間は国王よりも俺の方が偉い立場であるというものであった。

 そのような法律があると知った当初は、まぁいっかと流したが、今となってはさっさと返品したい、の一言に尽きる。この忌々しい法律のおかげで、俺は今もなお、国家元首としての仕事を押し付けられ、格闘していた。

 ちなみにこの法律は、俺が国王をやっていたいた時代に、ハーンブルク連邦の最高評議会の制定した法律であり、この法律の不要性に気付いた俺は過去に何度か国家元首の座をレンに押し付けようとしたが、全て失敗に終わったという歴史がある。

 そのため、今もなお国家元首の座には俺がついている。

 国家元首の座なんて要らないから、誰か貰ってくれないだろうか。まぁ、渡せるだけの器を持った奴なんて、そうそう見つからないが・・・・・・


【それで?今回は何を思い付いたのですか?】


「新しいゲームを開発しようと思ってだな。」


【新しいゲーム、ですか?これまでも、トランプや双六、将棋なんかをこの世界に普及させて参りましたが、まだ増やすのですか?】


「あぁ、ボードゲームはいくつあっていいからな。」


【確かこの前、人々の興味が分散し過ぎるのは困るから、娯楽を増やすのはしばらく控える、とか言ってませんでした?】


「これはこれ、それはそれ、だ。」


【はぁ・・・・・・】


 作れば作るほど売れるのだから、ボードゲームはいくつあっても問題はない。連邦民が外で遊ばなくなって連邦民の基礎体力が下がるのは問題だが、先のマラソン大会のようなら企画を何度も開催しているのでおそらく問題はないだろう。


「もちろん、目的は金儲けだけじゃ無いぞ。俺が遊び道具を販売すれば、それによって新しい産業が生まれることになる。新たな産業が誕生が生まれれば、経済を大きく回すことができる。俺は、経済を回すために仕方なく、新たな遊びを開発するのだ。」


【レオルド様、言い訳、苦しくないですか?】


「まぁ、だいぶ・・・・・・」


【はぁ・・・・・・。】


 色々と言い訳を述べてみたが、どうやら長年の相棒であるアイを誤魔化すのは無理な話のようだ。

 まぁ、バレることは最初からわかっていた。俺が目指すべきは、ここからの逆転の道、何やかんやで計画を進行させて、何やかんやで商品として売り出すことだ。あとは、俺という名のハーンブルク連邦最強のブランド力によって勝手に普及していくだろう。そうなれば、俺の勝ちだ。

 ちなみに、マラソン大会同様、ボードゲームの大会もハーンブルク連邦各地で行われており、プロ制度なんかも存在する。実際将棋のトッププロは、一般の公務員が一生に稼ぐお金を1年で稼げるほど儲かっており、それだけ世界中からの注目を集めていた。

 と、言うわけで、新たな娯楽を誕生させることにした。


【で、何をお作りになるのですか?】


「麻雀だ。」


【なるほど。ポン、チー、カンッ、の奴ですね。】


「そう、それだ。炬燵に入りながら、茶菓子を嗜みつつ麻雀をしたら、最高だろうな〜」


【はぁ、やっぱりそれが目的ですか・・・・・・】


「当たり前だろ。」


 俺が楽しんで、結果的に新しい産業が生まれ、経済が回れば完璧だ。

 一番大事なのは、俺が楽しむこと、だ。そのためならば、できる手を全て打つ。


「で?協力はしてくれるのか?」


【仕方がありませんね。今回は、協力して差し上げましょう。】



 *



 そんなわけで、麻雀作成が始まった。

 麻雀牌がどのような工程で作られているのか全く知らなかったが、アイの記憶フォルダーから情報を引っ張り出し、その通りに作ってみたところ案外簡単にできた。ただ、これをそのまま大量生産するのではなく、こっちの世界で大量生産しやすいように工夫して試作を作りまくった。

 まぁまぁ納得できるレベルになったところで、シュヴェリーン郊外にある産業のあまりない街をテキトーに選んで工場を建て、サプライチェーンを作った。

 そしてその後、なんやかんやありまして麻雀は完成したのだが・・・・・・


「今回も楽しいモノを作りましたね、レオルド。」

「ほんとうにそうですね、お義母様。とても奥が深く、楽しいです。一体何処からこのような素晴らしい作品のアイディアが生まれているのでしょうか。」

「どーせお得意のインチキよ。構想開始から生産ラインの構築までの時間が短過ぎるわ。」

【レオルド様は、自分が楽しむためにならば最大限の努力を惜しまない方なので、としか。】


 こうなることを恐れて、かなり秘密裏に麻雀作成計画を進めたが、いつの間にかいつものメンバーにその存在が見つかった。

 せっかく自分用に作った全自動麻雀卓が、いつものメンバーに占領され、4人しか遊べないことから俺は席を譲ることとなった。

 仕方がないので、俺は量産用に作ったやつを、暇そうにしていたユリウス、レン、アインの3人を無理やり引っ張って来て、打つことになった。当然、自動機能は付いておらず、牌を並べるのは手動だ。


「俺のやつなのに・・・・・・」


「こうなることが予想できたのに、対策をしなかった兄さんが悪いと思いますよ。」


「はぁ、しゃーないからもう1個作るか〜。」


「あ、兄さん、それロンです。」

「私もそれロンです、父さん。」

「すみませんレオルド様、それロンです。」


「げっ・・・・・・。」


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どうでもいい話

ちなみに私は麻雀全然わかりません。

知ってることは、国士無双が強いことぐらい・・・・・・

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異世界に転生したので、とりあえず戦闘メイドを育てます。 佐々木サイ@100万PV×2達成 @ASasterisk

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