トンカツの推し活と言えば?

泥酔猫

第1話 トンカツの推し活と言えば?

「は~い、お待たせしました。今日のお夕飯のメイン、シュニッツェルですよ」


 目の前に出されたのは、皿からはみ出るくらいの大きなトンカツ……ではなく、薄いペラペラなカツだ。早速、ナイフを入れると、ザクッザクッと腹が減る音を立てて切れる。口に入れれば、期待を裏切らないサクサクな衣の歯応えを楽しむ。噛んでいると豚の旨味が溢れてきて、幸せな気分になる。


「そんな風に美味しそうに食べて貰えると、作り甲斐があって嬉しいです」


 対面に座ったメイドさん……パートナーのレスミアは嬉しそうに破顔した。

 元々、料理好きな彼女に、衣がサクサクなトンカツを頼んだところ、出て来たのがこのシュニッツェルだ。これはこれで、美味しいのでトンカツと並び、好物になってしまった。


 一度、作り方を見せてもらったけれど、殆どのトンカツと同じ。

 叩いて薄く伸ばした豚肉に、小麦粉と玉子、パン粉で衣を付け、揚げ焼きにする。

 トンカツとの違いは、肉の厚さと揚げる油の量くらいしかない。


「うん、今日のシュニッツェルも美味しく出来ましたね」

「夕方に夕飯のリクエストって聞いて来たから答えたけど、結構大変だったろう。手伝いが欲しい時は、声掛けてくれよ」


 一日中動いていた所為か、ガッツリ食べたい気分だった。脊髄反射でトンカツと答えたのだけど、シュニッツェルならと了承してもらった経緯がある。


「大丈夫ですよ~。トンカツは油の準備とか後始末が大変なので頻繁には出来ませんけど、シュニッツェルならお手軽に料理出来ますからね。

 ブレンダーのお陰で、パン粉も楽に作れますし」


 更に、フライパンで少し多めの油で焼くだけなので、カロリーもトンカツに比べると少ない。それに、ソースを掛けても美味しいが、衣に各種ハーブを混ぜる事で、好みの味にする事も出来る。こっちが好みとか、簡単な感想を伝えるだけで、好みの味を作ってくれるレスミアには頭が下がる思いだ。


「そうそう、今日は村で取れたキノコをお裾分けで貰ったので、クリームキノコソースにしてみました。どうぞ~」


 カツにクリームソース?!

 そう思ったが、実際に食べてみると濃厚なクリームが良く合う。シュニッツェルの衣に入ったハーブとの相性も考えられているのか、良いアクセントになっている。それにキノコ……シメジの歯応えも加わり、楽しませてくれた。


 以前はトマトソースも出て来た。色々な味が楽しめるのもシュニッツェルの良いところだ。トンカツも味噌カツや、ソースカツ、チーズ、梅肉等があるが、バリエーション豊富なところも似ているな。


「クリームキノコソースも美味しいな。残ったシュニッツェルはサンドイッチにするんだろう? このソースが余っているなら、一緒に頼むよ」


「ええ、そのつもりで多目に作ってありますよ。クリームがパンと衣に染み込んで美味しいですから、楽しみにしていて下さいね」


 今、食べているところなのに、明日の昼ご飯も楽しみになってしまった。





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トンカツの類似品、シュニッツェルの推し活でした。

推し活→押しカツ→薄く押したトンカツ→シュニッツェル、と言う連想ゲーム。

ん? 叩いて伸ばすなら、押しでは無いような?

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トンカツの推し活と言えば? 泥酔猫 @dmonokira

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