推し活のあとしまつ
胡蝶花流 道反
第1話
「ねえねえ、このラバスト、良くない…良くなくな~い?」
「おおーーー、コッチ見てみ、このキャラのアクスタあるとか、マジありえないし。謎チョイスした人、神~!」
ここは所謂アニメショップ。高校生のミユルは、オタ友のサリと学校帰りに訪れていた。
「やっぱさぁ~、アニメ化されて知名度上がるとグッズ増えていいよねぇ」
「そうそう。あ、後でガチャガチャのとこ、行こーーー!新しいの、来てるかなぁ~」
2人は同じ作品を愛する同志である。
今年の春、クラスメイトになってから2カ月経った頃にお互いを知った。学校関係の何らかで連絡を取り合った時、その作品のスタンプを使っていたのがきっかけだ。
「うわ~3つも被ったヤツある、1つ何かと交換してよ」
「いいよ、別の所で回した時に被り出たから。今からウチおいでよ、ついでに今日配信された最新話一緒に見ようぜ~」
「途中コンビニ寄ってお菓子とジュース買おう、ポテチはマストバイだよね」
「うちは新作スイーツのチェックいれとこ、買わんかもだけどw」
学校の休み時間・プライベートで会って・そして家に帰ってからも電話で、話は尽きる事無く幾らでも語り合えた。
こんな感じで、2人でその作品に対する愛を高め合っていたのであった。
それから、推していた作品のアニメ放映も原作も終了して数カ月経ったある日。
「うちさ~、今期のあのアニメめっちゃ気になっててさ」
「あたしは今はスマホゲーにハマっててさぁ、最近アニメ見てないなぁ」
どちらも熱が引くように冷めていったのである。
だがその後の行動は…
1.ミユルの場合(上書き保存型)
よいしょ。
やっと梱包作業が終わった。グッズは結構高く売れた物もあり、次への軍資金になって有難い。円盤はSNSで欲しがっていた子にそれなりの価格で譲った。本の類は整理して不要と判断した他の本と一緒に、古書の出張買取に頼んである。キャラやロゴ等が印刷されたTシャツはパジャマにすればいい。
だいたい、何時もこのパターンだ。2,3年くらいのサイクルで推しが変わるので、その度にこうやって処分するのだ。
夢中になっている時は悪魔に魂を売ってでも手に入れたくて、そうして必死で集めてきた物も興味を失くせばあっさりと手放す。
さて、新たな推しコンテンツに関する新情報はないかなぁ…
2.サリの場合(フォルダ別保存型)
ふ~、取り敢えずグッズ等は箱詰めして押し入れに収める事が出来た。書籍類と円盤はそれぞれの置き場にまだ余裕があるので、今の所は問題ない。キャラやロゴ等が印刷されたTシャツはパジャマにすればいい。
今回も何とか保管して置いておける。手放すつもりは全く無い。
予約を見逃していて断腸の思いで諦めた矢先に、再販で手に入れた物だってあるのだ。例え他の作品に目が移ったとして、好きである事に変わりはない。
一先ず片付いたところで、新たな推しコンテンツの祭壇作りでもやるか…
このように同じ方向を向いて、同じ景色が見えていた筈の2人にも、別々の道を歩む時が来るのである。
「あ、もしも~し!今、ヒマ?」
「お、丁度片付け終わったとこよ。そっちは?」
「あたしも!今、手が空いて一息ついてたとこ!」
「だったらさ、新しくオープンしたスイーツの店行かない?」
されど、友情という名の道は続くのであった。
推し活のあとしまつ 胡蝶花流 道反 @shaga-dh
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます