レイティングの捉え方、間違っていませんか?

藍豆

第1話 レイティングの捉え方、間違っていませんか?

 まず申し上げたいのは、カクヨムのレイティングはR-15であるということです。

 ユーザーのなかには、少し血を流す程度の格闘や斬り合いでレイティングをつける人がいますが、それはやり過ぎ。これまでにみた漫画や映画を思い出してください。レイティングに該当しなくても、そのくらいの描写は当たり前ですよね? R-15というのはもっと過激なものなのです。

 よくわからないという方は、試しにR-15指定の映画をご覧になってください。ファンタジー好きなら、人気の海外ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」がオススメ。ぼかしが必要なほど露骨な性描写に、内臓を撒き散らす残虐シーン。正直、家族や友人と観るのは厳しいほどの水準。それがR-15というものです。

 あるいは邦画でサムライものがお好きな方は、「13人の刺客」などいかがでしょう? こちらはR-15ではなくR-12指定のようですが、それでも十分にキツい描写があります。例えば四肢を切断され舌を抜かれた女性の裸体をもろに映したり、斬り落とされた首を蹴り転がすシーンなど。食事をしながら観ていたのですが、途中で食欲がなくなりました。R-12ですらこのレベルです。


 ここで皆さんに考えてみてほしいのは、作品を構成する様々な要素のなかで何が面白さを感じさせるかということ。ほとんどの人が気付くはずです。肝心なのはストーリーや設定であって、過激さではないと。上記の「ゲーム・オブ・スローンズ」が人気があるのも、そういった理由によるものでしょう。

 考えてみれば、これは至極当然のこと。だって、戦闘シーンで血を流して倒れるのと、内臓を撒き散らして倒れるのを比べて、内臓が出たから面白いなんて人は普通いませんよね? いくら面白さや興味に個人差があるとはいえ、物事には限度や常識があります。

 そもそも戦争の残酷さや攻撃の威力を表現したいのなら、他にいくらでもやりようはあるはず。例えば心理描写によって残酷さは表現できるし、威力は静物破壊などで表すことが可能です。むしろ、そういうテクニックこそ作者の腕の見せ所といえるでしょう。

 だとすれば、過激な表現など用いない方がよいという理屈になります。なぜなら、その方がより多くの客層を得られるから。レイティングにこだわるあまり大勢の客を逃すなんて、馬鹿げた話です。「ゲーム・オブ・スローンズ」もレイティングさえ無ければ、もっと幅広い世代に受け入れられる超人気作品になったはずです。

 

 一方で、世の中にはこういった区別ができず、過激さそのものが面白い要素だと思い込む人が一定数存在します。ある有名な作品の中で登場人物が己の残虐行為の理由を「面白いから」と平然と語るシーンがありますが、それを彷彿とさせます。そういう人の作品はおおよそ過激さばかりを追求し、ストーリーや設定がお粗末になりがち。まあ、面白さを見極める視点がズレているのだから仕方ありません。

 さらに驚くべきは、レイティング該当作品をあたかも標準のように捉える傾向が強いこと。普通ならレイティングに引っ掛からない程度の暴力描写や性描写を標準と見なすものですが、彼らの認識はそうではありません。

 なぜそれほどまでに暴力や残虐性に飢えているのか? それに関して、ある興味深い研究結果が報告されています。それは過激な作品ばかりを見続けていると、暴力的な思想に染まってしまうというもの。実は、脳にはフィクションとノンフィクションを明確に区別する機能がありません。いくら本人がフィクションだと理解していても、いつの間にか脳に刷り込まれてしまうのです。現に、ディストピア小説を読むことで、暴力的な思想が強まるという研究成果も公表されています。

 虐待やら無差別殺傷やら、このところ不平不満やストレスを暴力に訴えるような事件には事欠きません。そういう現代人のモラルの無さに過激なコンテンツが及ぼす影響はけっして小さくないように思えます。


 以上、レイティングに関してまとめると次の通り。


・面白さとはほぼ無関係なので、幅広い客層を得るためにはむしろ無い方がよい

・戦争の残酷さや攻撃の威力を表現したいのなら、心理描写など他のテクニックを駆使した方が作品としての質は高まる

・暴力的な思想に染まる危険性があるため、それを抑える意味で無い方がよい


 こうして並べてみると、創作における過激な表現というのは、メリットよりもデメリットの方が圧倒的に上回っていると言わざるを得ないようです。

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