ペレナリスト兼ホデニーカーはかく語りき

ナナシマイ

「では、さっそくインタビューを始めていきたいと思います」

「お手柔らかに」

「ふふ、それはこちらの台詞ですよ。……えぇと、まず×××××さんは、ペレナリストとしてある程度の地位を築いてからホデニーカーの活動を始めたというのが世間一般でされている認識ですが、兼業するに至った経緯と言いますか、きっかけのようなものはあるのでしょうか」

「つまり、ペレナリストとホデニーカーはまったく違うものなのになぜ、と?」

「まぁ……言葉を選ばなければ」

「遠慮しなくていいんですよ。僕もほら、こうして自身の活動を宣伝できるわけですから。表に出るようになって十年以上経ちますけど、こういうのはやっぱり本音がいちばんです。――あぁそうそう、本音といえば。あなたは兼業とおっしゃいましたけれどね、あまりその言いかたは好みません。どうして小遣い稼ぎだとか、本業が上手くいってないんじゃないかとか、そういうイメージがおありでしょう? 僕がしているのは、生活とかお金のためではなくて、ただ自分の心のままに活動しているだけなのですから。もちろん、趣味というわけでもありませんけどね」

「そうなんですね。ではそのように書いておきましょう」

「お願いします。……話が逸れてしまいましたね。なんでしたっけ、きっかけ? そうですねぇ、たしかに表立ってホデニーカーの活動を始めたのはここ数年でしたけれど、こういうふうにしたいという構想自体は、実はペレナリストになる前から持っていたんですよ」

「ということは、十年以上前から……?」

「そういうことです。ホデニーカーは体裁を整えるといったことだけでも準備が大変でしてね、国内だけではとうてい賄えませんでしたし、ペレナリストの活動でそういう部分を補っていたというのもあります。そういう意味ではホデニーカーになるためにペレナリストになった、と言えるかもしれません」

「意外です。×××××さんにとって、二つには重なる部分があるのですね」

「ははは、みんなそう言って驚きますよ。『どういう思考になればペレナリストとホデニーカーを同列に扱えるんだ!』って。別に僕も同列に扱っているわけではないんですよ。ただ自分の進む道に二つがあったというだけで」

「なるほど。ブティックでズボンを買ってから八百屋でトマトを買うことだってありますからね」

「そうそう! 記者さん、たとえが上手ですねぇ。そうして手に入れたズボンを履いて、トマトでサンドウィッチをこしらえて、ピクニックをしているようなものですからね、僕の活動というのは」

「わぁ、そう聞くと親しみやすい感じがします」

「それはなによりです」

「なんとなく……――先ほどの『本音で』という言葉を利用させてもらうなら――特にホデニーカーの活動にはある種の堅苦しさを感じていました。でも、×××××さんはそういう印象をどうにか変えていこうとか、そういう積極的なはたらきかけをしているわけではありませんよね。素人考えではやはり広く周知することが重要に感じますけれど……その辺りはどのようにお考えで?」

「周知? そうですねぇ。不要とまでは言いませんが、わざわざしようとは思いません。価値観の押しつけは本意じゃあないですし、賛同者が増えたからといって好ましい状況になるとは限りませんし。自然に広まるのであれば、また廃れていくのであれば、それがあるべきかたちなのかなと」

「あくまでもお金のためではない、ということですね」

「ええ」

「では活動をしていく上でのこだわりはありますか? 先ほどは心のままにとおっしゃいましたが、やはり現代社会のなかでは難しい部分も出てくるかと思います」

「おや、それは用意されていた質問ですね? ということは二つの活動を同時にこなすことについて語ったほうがいいのかな」

「……手厳しいですね。でも、ええ。できるならお願いしたいです」

「いいんですよ。記者さんは面白い着眼点をお持ちのようですし。僕も新たな知見を得られそうですから――」


       *


「お疲れさん」

「……部長。お疲れ様です」

「内容をまとめるのは来週まででいい」

「いえ、後回しにするほうが面倒なので、このあとやってしまいます」

「そうか、無理はするなよ。……で、結局ペレナリストとホデニーカーというのはなんなんだ」

「なんの意地悪ですか? 私が知っているわけないじゃないですか」

「だよなぁ……。それにしちゃあ会話が自然すぎて、知らない俺がおかしいのかと思ったぞ」

「当然です。私は記者ですし、それ以前に――」

「お口はチャック、だよ」

「え、っと?」

「その先は札束で語るとしよう」

「っ、――わかりました。……まったく、ホンモノというのは本当に怖いですね」

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