第三話【ロシア、ウクライナ侵略! どーする憲法9条!】

 既に護憲側と改憲側、向かい合い対峙するようにそれぞれが席に着いている。そして『朝まで生テレビ』番組冒頭、恒例の田原総一朗の前振りが始まった。


「本年二月ロシアがウクライナを侵略しました。この結果日本の政治風景も昔と同じとはいかなくなってきている。今回は古くて新しいテーマとなった『憲法9条改正の是非』、これで行こうと思います。本日は僕がちょっと我が儘を言いまして一人の論客にお越し頂きました。失礼を承知で言うけども、つけている〝肩書き〟は今日の出席者の中で一番軽い。僕も軽いけど僕に一番近いかもしれない」


「——では一番最初に紹介させて頂きます。ASH新聞社会部・天狗騨記者です。この人がどんな人か、二つばかり質問をします」


「——天狗騨さん、」


「はい」


「『慰安婦問題』、どう思う?」


「日本軍の慰安婦をやっていた韓国人慰安婦は戦後米軍の慰安婦もやっていたのは明らかです。〝証言内容はどちらも悲惨なもの〟です。日本を慰安婦問題で糾弾してきた全ての人間達は今すぐ同じようにアメリカを糾弾すべきです。でないと日本人を差別する人種差別主義者になる」


「『日米安保』、どう思う?」


「有事の際にこれが発動されるというのは絵空事です。1953年、大韓民国の国家権力が竹島を占領しました。この時既に日米安保条約は存在しています。アメリカ軍は竹島を占領した大韓民国の国家権力を武力を使い排除する義務が条約上あった。しかし何もしない。そして現在に至る。これは1954年の自衛隊誕生前の事件です」


「こういうヒトなの。もう一部界隈ではかなりの有名人。天狗騨さん、この後論客の皆さんにはひとりひとり意見を披露してもらいますが、一番最後にあなたに訊きます」


「できれば午前二時代前にお願いしたいですね。寝てしまいそうなので」

 もう臨席の左沢政治部長の顔が蒼ざめていた。


「じゃあ続きはCM後、」ここで田原総一朗が手を振った。

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