罪人の世界
仲仁へび(旧:離久)
第1話
その世界は、元の世界から切り離されて漂流していた。
なぜならその切り離された箇所は、罪びと達がいる場所だったからだ。
元の世界の者達は、「罪びとと一緒にはいられない」と言う。
そう思って、罪びとがいる区画を、世界の一部を切り離したのだった。
けれど、罪びとは後から後から湧いてくるから、世界はどんどん切り離されて、多くが漂流してしまう。
元の世界の者達は、汚いものを切り離せば綺麗になれると信じていた。
穢れに満ちたものを切り離せば、綺麗になっていくと信じていた。
しかし、それらは後から後から湧いてくるから。
とうとう元の世界はちっぽけになってしまった。
このままでは、世界はうまくまわらなくなる。
そう思った人々は、漂流した世界をかき集める事になった。
世界はまたどんどん広くなって、罪びと達も多くなった。
けれど、人々は諦めた。
それが世界なのだと諦めた。
自分達が目にしたくないもの、一緒にいたくないものも、この世界になければならないのだと諦めた。
どうやってもそれは、減らしてもそれは、減らしきる事ができないのだから。
漂流していた罪びと達の世界は、元の世界に吸収された。
罪びと達を切り捨てた世界は、再び受け入れるようになっていた。
罪びと達は理解できなかった。
なぜ、自分達を捨てた者達が、自分達を受け入れたのかと。
すると、受け入れた者達は疲れた顔でこう述べた。
「不要なものなどこの世界にはなかった。悪を減らしても悪は終わらない。
ならば悪を捨てるより、悪がうまれないように、うまれても小さくなるように努力すべきだったのかもしれない」
罪人の世界 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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