本編既読の方にはまさにご褒美といえる短編です。本編同様の形式で進む本作は、さながらテレビドラマの劇場版を見に行くような興奮を我々に与えてくれます。
本作では、本編と変わらぬ面々と本編よりも成長した服部少年の活躍を堪能できます。名古屋あるあるや名古屋メシのリアリティ溢れる描写も健在です。名古屋あるあるに関してはむしろ本編より豊富に描かれているかもしれません。
少しでも名古屋近辺に暮らしたことのある方ならうんうんと頷けるはずですし、そうでない方にも名古屋という街の面白さは存分に伝わるかと思います。
そして本作最大の魅力はその読後感にあります。きっと、胸のなかを爽やかな風が吹き抜けることを保証します。
こちらは長編作品「共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜」の追加エピソード。然し回れ右をする必要はない、このままぜひどっぷりと彼らの世界に浸っていただき、次に本編を読みたくなるはずだ。
名古屋のとある場所にある『樹神探偵事務所』。ここは非現実的な現象を解決してくれる、知る人ぞ知る探偵事務所。
今回の依頼人は百貨店に勤務する美しい一人の女性。聞けば、ある時期から「ムラサキカガミを忘れるな」という言葉と共に、鏡に恐ろしいものが映るという。
少し気障だが面倒見のいい先生、特殊な能力を持つ心優しい高校生、不思議な雰囲気の和装美人。
魅力溢れるキャラクターと、ヨダレの出そうな名古屋飯、そしてまるで合わせ鏡のようにあらゆる角度から眺め、暴かれていく怪異の正体。
こちらが物語へ「引き込まれない」よう注意しないといけないほど、読む手が止まらない構成の巧さはあっぱれの一言!
ムラサキカガミを忘れるな。
ムラサキカガミを忘れるな。
繰り返されるこの言葉。読んでいくうちに、もしかすると誰もが感じたことのある悲しさや焦燥を思い出すかもしれない。けれど、目を見開いてそこに映ったものを見てほしい。
都市伝説を取り扱いながらも、じんわりと心が解されるオススメの一作です。
誰もが知る都市伝説『ムラサキカガミ』
その伝説をモチーフとし、怪奇なお話が展開される短編となっています。
一人の女性がある呪いを受け、解決へ導く探偵事務所の物語なのですが、脅威のラストに驚き、そして涙。
ネタバレになってしまうので詳しくは言えませんが、誰もが経験する苦い思い出からそれぞれの成長へ繋がるお話となっています。読者の私もそうだよね、そうだよね、と共感する部分も多く、とても励まされた短編でした。
短い本編なので、ぜひ読んでその事実に触れてみてください。
そして気に入られた方は、長編の「共感応トワイライト 〜なごや幻影奇想ファイル〜」をぜひ読んでみてください。
この短編に出てくるメイン3人の登場人物がより深く描かれており、もう最高におすすめの作品です。
そちらも短編構成で話が進むので、とても読みやすいですし、とにかく泣く……。本気で読んで、読んでほしいです……!!