第3話 非日常

 あの中華料理店の大将の夢を見てから、また何度か様々な店を訪れた。

 しかし、ユンはあの大将のピラフが忘れられずにいた。

「あーー、あのピラフまた食べたいなぁ。でもあんなに思い出すってことはもう見ない。間違いない。」


 しかし、事態は急変した。

 

 朝、目が覚めるとユンはいつもと違うことに気付いた。

「え?うそ。また食べられた。」

 なんと、あの大将にまた行くことができたのだった。

 ユンは急いでノートを取り出し書き綴った。

「大将、また来いよな、そう言ったなぁ。それにしてもあのピラフ...美味しすぎるんだって!

でも、何、この夢。あの人誰?」

 夢はまた大将を訪れ、『大将特製まかないピラフ』を食べる夢だった。


 しかし、今回は隣に1人の男の人もいた。

その男性はセンター分けで色白。芸能人?と思わせるような大きな瞳とプクッとした唇をしていた。

彼は私のことを見て、フッと笑みを浮かべた。

「あの、何でしょう。」

ユンは怪訝な顔をした。

「あ、ごめん。食べっぷりが良くて見ちゃった。

食べた後でいいから、少し時間くれる?」

そう言って彼はまた微笑んだ。


「食べ終わりましたが。」

ユンが言うと、彼はすぐ話し始めた。


「はじめまして。僕は時枝と言います。実は君にお願いがあって来た。」

そう言うと真っ直ぐな瞳でユンを見つめた。

「君、夢で美味しいご飯食べているね。」


 ユンはハッとした。

朝になると、目が覚めて思い出すが、夢の中でこれは夢だなんて人に指摘されたことは一度もないからだ。

「なんで?」

ユンは咄嗟に言った。

彼はまた微笑みながら続けた。

「君にお願いというのは、まぁ早い話、僕と一緒に夢で食べた美味しいものを現実でレシピ化していこうってことなんだ。」


余りにも色々唐突すぎて戸惑った。

この人は一体何を言っているのか、しかも誰!?

混乱。

「まぁ、また話しに来るよ。でも君と僕となら出来ると思うんだ!考えといてね。」

 そう言うと席を離れ大将に手を挙げ、「ご馳走様!すごく美味しかったよ!」と言い残し店を出て行った。

大将は訳の分からない様子の私に

「おい、おめぇ。また来いよな!」

と笑って言った。

 

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夢の中でもいただきます。 カチ子 @yuntan626

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