第2話 ある中華料理店

 朝起きると、時刻はまだ6時5分。

 いつもより早く起きた。

「今日は初めて行った場所だった。

えーと...あれはなんだろう?ピラフだったのかなぁ?何にせよとっても美味しかった!」


 今日訪れたのは中華料理屋さん。

店主はお腹が少し出ていて無精髭を生やし、頭にはタオルを巻いていた。

ユンは注文をしていないが、その店主がにこやかに言った。

「今できるからちょっと待ちな。」

私は頷いて何かを待っていた。

 中華料理屋さん...名前は『大将』?

割り箸入れに書いてあるこれが店名であろう。

そんなことを思いながら待っていると店主の声がした。

「はい、お待ち!大将特製中華まかないピラフだ!」

 

 出てくるなり食欲を掻き立てられた。

中華だというのにバターの芳醇な香り。

上に乗っているのはメンマやら白髪ネギを辣油で和えたもの、そしてこれはチャーシューの切れ端?

 ラーメンの上の具や、野菜が乗った不思議なピラフ。

「ねぇ、おじさん。これ、何でピラフ?」

そうすると店主は

「おめぇ、これがチャーハンに見えるか?バター結構使ってんだ。食えばわかるだろう。ピラフ!が正しいんだよ、ガーハッハッハー!」

と豪快に笑った。

 「とりあえず食べよ、頂きまーす!」

 ユンは一口頬張った。

「なにこれ!美味しい!」

鶏ガラのような濃い味にバターの濃厚さが相まり、なんとも絶妙なハーモニーを奏でた。

今まで食べたことのないそのピラフは、すぐ二口目を口に運ばせた。

「おじさん!これすごい!大発明!」

「おい、お前な。大将って呼べよ。ここは大将なんだからな!ガーハッハッハッハ!!

それとおめぇ、うめぇのはあたりめぇだ。俺が作ってるんだ!」

と眉をピクっと上げて見せた。


「絶対また食べたい!」

ユンは何口も頬張りながら大将に言った。

「おう!おめぇにまた食わせてやる!」

と大将はガハッ!と笑いながらユンに満面の笑みを浮かべた。


と、まぁ夢はここで終わった。

いつも通りノートに書き出すが、ユンは次第に落胆したような気持ちになってきたのだ。

「えーー!あれもう食べられないんだ..。

ガッカリ!もう一度食べたかったなぁー...,」


こんなにも事細かに思い出しているということは、もう夢にあの大将も、ピラフも出てはこないということなのだ。


ーあのピラフ、もう一度食べたい!ー

 ユンはとりあえず晩御飯がてら、分かっている材料を集めて夢グルメノートを片手に作ってみることにした。

それらしいものにはなった!

食べてみる。

「え?何でだろう?全然ちがーう!!」

 大将が言ったようにバターをたっぷり米に絡ませてみたが、なんか違う。

「美味しくないわけじゃないけど...」

まだまだ再現するとなると時間がかかりそうだった。




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