第132話 リベロのステータスを操作する

「本当に、俺までいいのか?」


 部屋に入ってくるなり、リベロさんは申し訳なさそうな表情を浮かべ確認してきた。


「俺はティムの命を救うときその場にいただけで特に何かしたわけじゃない」


「そんなことはないです。リベロさんが周囲を警戒してくれたからこそ、ミナさんもオリーブさんもそれぞれの役割に専念できたんでしょう」


 そう言い返すも、リベロさんはどこか納得のいかない顔をしている。


「俺も斥候職を体験してるからわかるんですけど、罠を見破ったり解除したり、後方から弓で狙撃して前衛を支援したり。とにかくやらなければならないことが多いですよね」


 ガーネットは剣聖で生粋の前衛なので、彼女をサポートしていた時のことを思い出す。


「このパーティーを影で支えているのは間違いなくリベロさんです。俺の命を救ったのはそれまでの積み重ねをリベロさんがしてくれたからですよ」


 そうでなければ、彼らと知り合うこともなく、タイミングが合わなければ救援に駆け付けてもらうこともできなかった。

 運命が一つでも狂っていたら俺は殺されていたので、彼の存在もまたなくてはならないものなのだ。


「お前……口が上手くなったな?」


「やめてください……それ、同期にも言われたんですよ」


 毎日、パセラ伯爵と酒を酌み交わしている間に貴族流の会話術というのが身についてしまったのか?

 詭弁を弄することがもしかしてうまくなっているのかもしれない。


「まっ、お前が勝手に恩義を感じてその恩恵を俺にも与えてくれるってなら断る理由はないか」


「そうですそうです。その方が俺も気楽ですからね」


 どうやら肩の力が抜けたのか、自然な笑みを浮かべるリベロさん。


「それで、リベロさんはどんな感じで成長してみたいですか?」


 俺はリベロさんの今後について聞いてみることにした。


 すると彼は、先程までとは違って、恥ずかしそうな表情を浮かべると周囲をキョロキョロ見回す。


「実は俺、魔道士になりたかったんだよ」


 てっきり、武器を扱う職業を選ぶのかと思っていたが、彼は予想外なことを言ってきた。


「子供のころ、村にきていた魔道士の冒険者が使う魔法が格好良くてな……。今も目に焼き付いてるんだ」


「わかります」


 俺も子供のころに憧れた記憶がある。

 剣などの武器と違い見た目が派手で様々な現象を起こせる魔法は子どもたちの人気をさらっていた。


「村で魔法を教えてくれる人もいなかったし、成人したらユーゴとパーティーを組んで冒険者をやることが決まっていたからさ、引退した斥候のじいさんに教わったんだ」


 冒険者ギルドでは初心者支援の研修制度があるのだが、村で若いころからゴブリン狩りなどをしていた二人は研修を受けていないと聞いている。

 村で狩りをしている間にレベルが上がり、スキルが発現してしまえば確かに受ける必要がない。


 もし仮に、魔道士を志望して受けていた場合、逆にスキルが発現しなかった可能性もある。


 俺が彼のステータスを見ていると、


「やっぱり無謀かな?」


「いえ、それを言うなら俺だってこの半年で魔法を扱えるようになったんです。今のリベロさんより身体能力が落ちるのは間違いありませんが、できないことはないかと」


 この先の努力次第で魔道士として活躍することができるようになると俺は思っている。


「ありがとう。経験者のティムがそう言ってくれるなら心強いよ」


「あとはステータスの振り分けですけど」


「魔法に影響があるのは【魔力】と【精神力】だっけ? そっちも頼む」


 その言葉を聞いて俺はリベロさんのステータスを操作した。


 名 前:リベロ

 年 齢:17

 職 業:魔道士レベル1

 筋 力:110

 敏捷度:171

 体 力:114

 魔 力:100+3

 精神力:99+2

 器用さ:111+1

 運  :134

 ステータスポイント:0

 スキルポイント:0

 取得スキル:『罠感知レベル7』『魔法罠感知レベル3』『罠解除レベル5』『解体レベル3』『後方回避レベル7』『バックスタブレベル4』『短剣術レベル7』『暗器術レベル3』『弓術レベル6』『連続打ちレベル4』『ウインドアローレベル5』『ファイアアローレベル1』『アイスアローレベル1』『ロックシュートレベル1』


「なんだか、身体に力が入らなくなったとは思うんだが、内側から湧き出る力のようなものを感じるな……」


「それが魔力ですね」


 リベロさんは自分の身体を見て驚いている。まるで何かに覚醒したかのような、これまで見たことがない表情だ。


「スキルポイントの関係で、本当に一つの魔法しか威力を上げれてませんから」


「いいって、一つでも威力が高い魔法があった方が戦闘で助かるし」


「それもそうですね。それによく考えたら俺が三層にこもった時もそのくらいの魔力でしたから」


 ステータスポイントを早々に魔力と精神力に振り分けたので、今後の成長次第では名を遺す魔道士になるかもしれない。


「それじゃあ、スキルを使い続けてレベルが上がるかの実験もしておくから」


「ええ、お願いしますね」


 俺の仮説である「スキルには習熟度が設定されていて、使い続ければスキルポイントを消費しなくても上げられる」の実験も兼ねている。


 最初のスキル取得だけポイントでサポートしてこの先上がるようであれば、振り分けを節約できるのではないかと思ったのだ。


「じゃあ、俺はユーゴとかとも話してくるから」


 ここの部屋に入ってきた時とは全然違う表情を浮かべ、リベロさんは出て行った。

 その笑顔を見た俺は、


「やっぱり、このステータス操作は皆の幸せのために使うべきスキルなのかもしれないな……」


 そうポツリと呟くのだった。



※宣伝


御無沙汰しております。まるせいです。

時間が空いてしまって申し訳ありません。

商業作業が多く、なかなかWeb更新まで手が回らない状況になっております。


早速ではありますが二つ宣伝をさせてください。


一つ目は、


新作

「女神から依頼を受け、俺が『異世界』を征服することになった件~チートマシマシで異世界勢力図を塗り替えていきます~」

https://kakuyomu.jp/works/16818093077029600284

の投稿を始めました。

こちらは原稿の合間に気分転換で書いている作品になります。他のWeb投稿作品と同じような読み味になりますので、良かったら読んでみてください。


二つ目は、こちらがメインになるのですが、


「Fランク冒険者の成り上がり~俺だけができる《ステータス操作》で最強へと至る~」

 こちらの作品のコミカライズ単行本2巻が5月15日(明日)発売となります。

 Web版とも書籍版とも違ったコミカライズ独自の物語となりますが、面白さは保証します。

 まだ読んだことがない場合、是非一度手に取って読んでみてもらえると嬉しいです。

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Fランク冒険者の成り上がり~俺だけができる《ステータス操作》で最強へと至る~ まるせい(ベルナノレフ) @bellnanorefu

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