第131話 ユーゴのステータス操作『拳闘士』

 椅子に腰かけ、正面にはユーゴさんが座っている。


 テーブルの上には、先程書き記したユーゴさんのステータスを表示した紙が置かれていた。


 彼は、それを見ると、やや緊張しているようで険しい表情を浮かべていた。 


「まずは、ユーゴさんが今後どうしたいかについて聞かせてください。俺の『ステータス操作』は身体能力やスキルを自分の望む方向に効率よく伸ばすことが出来る能力ですが、万能で何でもできるわけではありません」


 限られたポイントを振ることでスキルやステータスを伸ばすことが出来る。


 俺はまず最初にそのことを説明した。


「いきなり、今後どうしたいとか聞かれてもな……。俺自身は冒険者があっていると思ったからこうして続けてきたわけだし……」


「確かに、二年半で四層に辿り着いて狩りをしている時点で向いているんでしょうね」


「それを、一年半でソロで狩りをしているやつがいうのか?」


 冗談交じりに言い返してきた。少しは緊張も解けただろうか?


「とりあえず、職業を変えてみるとかはどうですか? 一時的に職業補正は失ってしまいますが、ステータスポイントとスキルポイントを得られるので、将来は能力が底上げされますよ」


「ティムがやっている方法か、確かにお前、あっという間に俺より強くなったもんな……」


 ユーゴさんは溜息を吐いた。


「どんな職業があるんだ?」


 興味を持ったようなので、俺は職業一覧を確認する。


『戦士』『斥候』『拳闘士』


 初めて見るのが『拳闘士』で『見習い冒険者』は見当たらない。


「どうした、険しい顔をして。もしかして他の職業がないとか?」


「ああ、いえ。そういう訳じゃないです。ユーゴさんが選択できるのは『斥候』と『拳闘士』ですね」


 慌てた俺は、咄嗟に返事をする。


「あの、ユーゴさん。ちょっと聞きたいんですけど……」


「ん、なんだ?」


「ユーゴさんたちは冒険者の研修って受けてないんですか?」


「ああ、俺とリベロは村にいたころから自警団でゴブリンを狩っていたからな。冒険者になったのもここじゃなくて、依頼を受けて流れてきたんだよ」


「なる……ほど」


 環境こそ違うが、ガーネットと同じパターンだった。


「どうしたんだよ?」


 俺は『見習い冒険者』という職業について説明をする。

 レベルアップの際に入手できる経験値という概念。他には得られるステータスポイントとスキルポイントの上昇について……。


「にしても、いまさら冒険者研修つってもな……。それ、確実に職業手に入るのかな?」


 説明をすると、案の定というべきか難色を示す。

 既に中堅どころの冒険者を捕まえて、研修と言われても困惑するだろう。


「とりあえず『拳闘士』にしてくれ」


「わかりました」


 実際のところ、説明だけでは実感がわかないのだろう。

 わざわざ冒険者研修を受けてまではと考えているようだ。


「ステータスは、前衛職を継続するから『筋力』と『体力』だな」


 引き続き、自身の得意とする身体をつかった戦闘方法をとるつもりのようだ。



「あっ……!」


「なんだ、どうした?」


「いや、どうやら『拳闘士』も特殊職業みたいで『筋力』『敏捷度』『体力』の補正値が普通の職業より高いです」


 これは予想外だった。もしかすると、一人に一つ適正な職業が存在しているのだろうか?


 ガーネットの『剣聖』、ニコルの『パラディン』、フローネの『料理』と『錬金術士』などなど。


 だとすると……俺の適正職業と言うのは?

 他人が持ち得ず、俺だけが持っている職業……、いや、まさかな?


 俺は自分のユニーク職業がなんであるかを考えるのを止め、ユーゴさんのステータスポイントを振り分けた。


「おっ? 今ステータスを振り分けたんだよな?」


「ええ、何か気になりましたか?」


「ああ、ティムに職業を変えてもらった瞬間、力が抜けたのを感じて、今になって力が湧いてきた感覚があったからな」


「結構な数値を弄りましたからね。それだけ補正値が大きかったんですけど、ユニーク職業の補正値も高いので、三層で狩りをすればすぐに取り返せると思いますよ」


 全員のステータスを弄るので、一時的に勝手が変わってしまうため、これまでと同じ狩りは止めておいた方が良い。


 一度、三層に降りてから再度力を付けて四層に挑むべきだ。


「あとはスキルですけど、どうしますか?」


 拳闘士のレベルが1なので、現状取得可能なスキルは『硬化』というスキルだけだ。


・『硬化』⇒使用することで一時的に身体を硬くし攻撃力と防御力を上昇させることが出来る。スキルレベルに応じて上昇値と継続時間が変化する。スキル【1】各+10【2】各+20【3】各+30【4】各+40【5】各+50【6】各+60【7】各+70【8】各+80【9】各+90【10】各+100


「そうだな、しばらくは拳で戦うわけだから、拳闘士のスキルだけ上げておいてくれ」


「わかりました」


 スキルポイントは温存した方が良いというのを理解しているようだ。

 俺は『硬化』をレベル6まであげておいた。



 名 前:ユーゴ

 年 齢:17

 職 業:拳闘士レベル1

 筋 力:200+5

 敏捷度:152+3

 体 力:200+3

 魔 力:13

 精神力:20

 器用さ:110

 運  :111

 ステータスポイント:1

 スキルポイント:6

 取得スキル:『剣術レベル7』『格闘術レベル3』『バッシュレベル7』『シールドバッシュレベル3』『パリィレベル5』『手当レベル1』『コンセントレーションレベル3』『硬化レベル6』


「とりあえず、こんなもんですかね?」


 俺は、やり残しがないか確認をすると、ユーゴさんのステータス操作を完了した。


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