第130話 ティムは書き写す

「えっと……ティム。もう一度言ってくれないか?」


 ギルドマスターが大きく目を見開き俺を見ている。あまりに大きく開いているので充血しているように見える。


「ええ、ですから、俺は他の人の『ステータス』も操作することができるんです」


 自分のみならず、他人まで強くすることができるユニークスキル。これこそが、今回皆に秘密にしてもらいたい情報の核だ。


「それって、俺たちもレベルやスキルポイント、各項目の数値化がされているってことなのか?」


「ええ、その通りですよ」


 ユーゴさんの問いに俺は頷いて答える。


「じゃ、じゃあ……、スキルレベルを上げて魔法の攻撃力を上げたり、足りないステータスを振って身体強化をできるってことだよね?」


「あくまでスキルポイントとステータスポイントの範囲ですけどね」


 ミナさんの確認に、俺は念押ししておく。無限に何でも上げられるわけではないからだ。


「それを、俺たちに……? 随分と厚遇すぎないだろうか?」


 リベロさんがアゴに手を当てて唸っている。


「そうですよ、本当に本気で、ティムさんが死ぬまで秘密にしておきたいことじゃないですか」


 ことの大きさが理解できたのか、オリーブさんが神妙な顔を浮かべた。


「俺は皆さんと知り合ってまだそこまで長くないですけど、皆さんを信じています。だから能力のことを明かしました」


「ティムさん……」


 サロメさんが目元を拭っている。その瞳には母性と言うか、保護者のような表情が浮かんでいた。


「自分の能力を他人に明かすのは勇気がいることだ。お前らもティムの気持ちを察してやれ」


 ギルドマスターが後押しをする。


「そうだな、俺はこの秘密を墓場まで持っていく」


「それが、打ち明けてくれたティムへの恩義だからな」


「これで、ティム君と私たちはもっと深い仲になれるね」


「ティムさんに信頼されて嬉しいです」


 ユーゴさんが、リベロさんが、ミナさんが、オリーブさんがそれぞれ笑顔を向けてくる。


「それでは、一度皆さんとパーティーを組ませてもらって、ステータスを確認させてください」


 全員が頷き、ギルドカードを提示する。


「それと、サロメさん、紙とペンを用意してもらえますか?」


「いいですが、何に使うのですか?」


 サロメさんは首を傾げつつも、ギルドマスターの机にある引き出しからまっさらな紙を出してきた。


「ステータス画面は俺にしか見えませんし、説明だけだと伝えるのが難しいですから。俺に見えているものを書き出して共有して、その上で何をどうするか決めたいので」


「なるほど、そう言うことでしたか……」


 サロメさんは納得した。


「一応なんですけど、ステータスを見るということは、相手が何が得意でどんなスキルを持っていて、何が苦手かまで全部俺に知られることになります」


「そのくらい当然だろう。俺たちだってティムを信じているからな」


「なので、ステータスを書いた紙に関しては、俺と本人のみで見ることにして、伸ばすスキルや項目はその場で話し合って決めましょう。サロメさん、別室を用意できますか?」


「ええ、大丈夫ですよ。準備してきますね」


 そう言うと、サロメさんは出て行った。


 その間に、俺は皆のステータスを紙に写していく。念のため他の人たちには離れた場所に立ってもらい、パーティーの今後についてでも相談してもらっている。


 全員、高揚しているようで、表情が希望に満ちていた。


 名 前:ユーゴ

 年 齢:17

 職 業:戦士レベル34

 筋 力:172+68

 敏捷度:146

 体 力:152+68

 魔 力:13

 精神力:20

 器用さ:110

 運  :111

 ステータスポイント:165

 スキルポイント:66

 取得スキル:『剣術レベル7』『格闘術レベル3』『バッシュレベル7』『シールドバッシュレベル3』『パリィレベル5』『手当レベル1』『コンセントレーションレベル3』


 名 前:リベロ

 年 齢:17

 職 業:斥候レベル32

 筋 力:110+32

 敏捷度:171+64

 体 力:114

 魔 力:19

 精神力:23

 器用さ:111+32

 運  :134

 ステータスポイント:155

 スキルポイント:62

 取得スキル:『罠感知レベル7』『魔法罠感知レベル3』『罠解除レベル5』『解体レベル3』『後方回避レベル7』『バックスタブレベル4』『短剣術レベル7』『暗器術レベル3』『弓術レベル6』『連続打ちレベル4』


 名 前:ミナ

 年 齢:17

 職 業:魔道士レベル34

 筋 力:22

 敏捷度:50

 体 力:35

 魔 力:174+68

 精神力:135+34

 器用さ:125+34

 運  :120

 ステータスポイント:165

 スキルポイント:66

 取得スキル:『杖術レベル2』『ファイアアローレベル7』『アイスアローレベル7』『ウインドアローレベル4』『ロックシュートレベル3』『瞑想レベル7』『ヒーリングレベル1』『ライト』『ウォールレベル3』『バーストレベル4』『魔力集中レベル3』



 名 前:オリーブ

 年 齢:17

 職 業:僧侶レベル33

 筋 力:30

 敏捷度:45

 体 力:45

 魔 力:145+33

 精神力:172+66

 器用さ:124+33

 運  :170

 ステータスポイント:160

 スキルポイント:64

 取得スキル:『棍術レベル4』『ヒーリングレベル7』『ハイヒーリングレベル3』『ライト』『祝福レベル7』『スピードアップレベル3』『スタミナアップレベル3』『瞑想レベル3』『セイフティウォールレベル3』


 以前見たときに比べ、全員のレベルが一つ上がっている気がする。

 俺が王都に行っている間にもモンスターを討伐した結果なのだろう……。


「ティムさん、部屋の準備が出来ました」


 ちょうど良いタイミングで、サロメさんが俺を呼びに来た。


「ありがとうございます。それじゃあ、順番にお呼びしますので、まずはユーゴさん。一緒にきてもらえますか?」


「ああ、噂のステータス操作とやらを楽しみにさせてもらうぞ」


 俺は嬉しそうな表情を浮かべるユーゴさんを連れて別室に移動するのだった。


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