第40話 世界征服

 手始めにフーザイトが南帝国から奪ったシロネアを、次に北帝国領だったシラトス城をフーザイトから解放した。

 その後、フーザイトの指導者モンチャグの本拠であるマケブを始め、チャイカンド、テペス城、キムリ城、オルトンガード、ウセク城、ハックン城と落としていく。

 フーザイトも戦争続きで戦力が乏しかったようで、然したる抵抗はなかった。本来フーザイトは戦力充実していれば大量の弓騎兵が脅威となり苦戦を強いられるのだが。


 さらにアクカラトを包囲していたところでフーザイトが停戦を求めてきた。屈服したようだ。同盟の破棄を条件に停戦することとなった。



 東方のフーザイトにかかりっきりになっている間、西方では我が国が押されているようだ。しかしそれに構わず、次は北方のスタルジアへ進撃する。


 冬のスタルジアの地を東側から順番に征服していく。スタルジアの一番東の都市であったタイアルはフーザイトのものとなっていたので、ウラディフ城、ヴァルノバポール、シビル、バルガードと攻略していく。


 スタルジア軍は西側に偏っていたのか、木っ端な部隊ばかりで抵抗が少なく、バルガードを落としたところでようやく有力な軍団が現れた。それでも戦力比1600対800と我が軍の半数である。本来雪が降り積もる中ではスタルジアの兵士は特性的に強いのだが、さすがに倍の兵には太刀打ちできない。

 我が軍はスタルジア軍に難なく勝利し、そのままタコール城、オヴ城、オモールと攻め落としていった。


 オモールの陥落をもってスタルジアはギオンに屈服した。

 帝国再興を阻む敵はウランジアを残すのみとなった。



 スタルジア経由で久しぶりに西方にやってきたが、さほど領地の失陥はなかったようだ。我が国の諸侯たちがしっかり防衛していたようだな。多少村が焼かれたようだが。


 ペン・カノックを目標として侵攻してくるウランジア軍を発見した。対抗するための部隊を召集を待つ間、俺の部隊がペン・カノックに入ったところ、敵軍は目標をラノック・ヘン城に変えた。

 ペン・カノックを攻めたいが、俺の部隊がいると落とせないと判断して目標を変えたようだ。だが俺がペン・カノックを出ていくとウランジア軍は再びペン・カノックへ向かう。

 その動きを利用して部隊が集結する時間を稼ぎ、敵戦力を上回ったところでウランジア軍を撃破した。


 フーザイトやスタルジアの大半の領地を手に入れ、順次諸侯たちを傘下に加えてきたギオン皇国は、繰り出せる兵力も非常に多くなった。ウランジア一国ではギオン皇国にはかなわない。

 それなりに有力なウランジア軍が現れるが、敵軍団を見つけ次第、部隊を召集し撃滅する。

 そしてサーゴットの周辺にあるタリベル城、ジャクラン、ガルエンドを攻め落としていった。



「丘野ネリック、お前の尽力には褒美を授けたいと思う。領地を持つ気はあるか?」


 最古参の配下、丘野ネリックに爵位を授与することにした。


「ありがとうございます、マイロード。私もそのことについてよく考えておりました。収入を得られる領地があれば肩書もついてくるでしょう。そうなれば良い相手と結婚し、もちろんギオン皇国を守るための兵隊を持つこともできるでしょう」


 最近のネリックは口調も丁寧だ。

 そういえば出会ったときも女を欲していたな。まだ結婚していなかったか。貴族となれば、そのうち貴族の女性と結婚するのだろうな。


 新たに貴族クランが興るわけだが、そのぶん我が国の戦力が増えることになる。彼も配下をどこからか見繕い、その者たちを部隊長として部隊を編成するはずだ。


「いかにも。私のために血を流したお前にはその資格がある」


 最下級の貴族クランとして始まることになるので当面は大きな兵力を持つことはできない。ないよりマシといった感じだ。


 ネリックの叙爵は別に必要性のあるものでもなかった。

 今回の叙爵は実利というより情緒的な理由だ。カルラディア制覇が目前となり、これまで尽くしてくれたことに報いようと思ったのだ。


 仲間を貴族化するのは、独立建国した直後であれば他国のクランの引き抜きよりもハードルが低いため、選択肢に入ったかもしれない。

 影響力は大きく行使することになるが、金銭的には引き抜きと比べると少なく済むからだ。ただし、貴族とするためには自分の持つ領地からどこかしらを与える必要がある。


「領地は具体的にはどこに?」


「ガルエンドだ」


 落としたばかりの都市ガルエンドを与えることにした。ウランジアの西端部だ。じきに安全な後方の土地となるだろう。そこで経済力を確立すればいい。


「ガルエンドですか? この上ない光栄です。我が血の最後の一滴まで守り抜くつもりです」


「お前に貴族としての称号と領地を与えられることを私も嬉しく思う」


「マイロード、我が高潔なる家の名を決めていただけると大変光栄なのですが」


「ヒビキだ。これよりお前はヒビキ家のネリックを名乗れ」


「ありがとうございます、マイロード。このお取り計らいを忘れることはありません」



 続けてホンガルド城、プラヴェンド、ドラパンド城、オクス・ホール、ヴェレクサンド城とウランジアの領地を征服していった。


 そして転生から10年目の秋の日、ウランジアが停戦を求めてきた。とうとうウランジアが我がギオン皇国に屈服したのである。


 これをもって、カルラディア全土においてギオン皇国の帝国の継承が認められた。そして旧帝国勢力はギオン皇国の支配下に組み込まれることとなった。

 ラガエアやガリオスも一貴族として俺の傘下に加わった。

 まだまだ領土を保っていた西帝国を征服せずに済んだのは手間が省けたな。ちなみに北帝国のルーコンは去年自然死したらしい。


 一部の国がまだ領土を保っているが、ギオン皇国は旧帝国本領と諸外国の有していた領地を多く支配しており、カルラディアのほとんどを征服したと言っていい。まあアセライだけは領土が丸々残っているが。

 しかしもはや諸外国全てが一致団結して戦いを挑んできたとしても負けることはありえない。団結することも多分ない。

 残りの戦いは消化試合のようなものだ。他の国の領土を全て制覇する完全統一は、配下に任せて放っておいてもそのうち達成されるだろう。時間の問題だ。


 事実上、帝国の継承をもってギオン皇国によるカルラディア制覇――世界征服が成ったということである。


 ただ戦争に強いだけの俺が皇帝である必要もなくなったな。なんならそのうち帝位を禅譲してもいいかもな。


 後継者争いなど国を衰退させる一大要因だ。俺が指名する次の代はいいとしても、いずれギオン皇国でも内乱や分裂が起こるのだろう。

 もしかするとカルラディアでも、未開の地からの民族大移動とか天変地異の大災害が発生して勢力図が大きく変化するというようなことが起こるかもしれない。

 そうしていつかギオン皇国は衰退し滅びることだろう。盛者必衰。歴史の必然でだ。


 まあその辺は知ったことではない。これで俺の戦いは終わりとする。



 ああ、また別の世界線のカルラディアに転生することもあるかもしれないな。そうなればもっと上手くやりたいものだ。来るかどうかわからないがその時を楽しみにしておこう。


〈完〉



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ここまで読んだ方は、これからゲームを始めてもすでに初心者を脱していて、最初からいっぱしの諸侯として振舞うことができるのではないかと思います。

よかったら『Mount & Blade II Bannerlord』をプレイしてみていただけると幸いです。


アップデートで日本翻訳における表記が変わることもあり現行のゲームでは、ニアセン→ナイアセン、ウランジア→ヴランディア、フーザイト→クーザイトだったりします。


ゲーム仕様の変更もあって、本作の内容の通りにはいかないことも出てくるかもしれません。例えば最新版ではダンジョンで捕虜となっている敵将に勧誘交渉できるようになったりしています。


他にもそういった相違点があるかもしれないことをご了承ください。


ここまで読んでいただきありがとうございました。

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中世ヨーロッパ風異世界に転生したので世界征服を目指す……というていでのバナーロードプレイ日記 Haru Minamo @harumkn

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