この作品のレビューは本質を捉えた素敵なコメントが数多い。作者がステキなのか、作品がステキなのか?読み進めるとわかる……両方だ!!
題材は「PSAS」性的ジェンダーを扱っている作品。マイノリティーを題材にした作品は暗くなりがちだ。しかし、この作品はあえて明るく、ポジティブに描いていて救いがある。そこが、この作品の魅力であり、作者の魅力でもあるように感じた。
問題はエンタメ性が強いことである。世界の問題を扱うに伴い、ポップな描写は勘違いされることが多い。あえて、そのイバラの道を進み、己が信念を貫き通した作品は、私もふくめ唯一無二と、多くの読者を魅了しているようだ。
トルストイは『アンナカレーニナ 第一編』の冒頭で「幸福な家庭はどれも似たものだ」と述べている。マイノリティーを題材にした作品は、それぞれの新しき幸せを見つけて終焉する作品が多いなか、この作品のラストは平々凡々な幸せである。人を愛し、子を産み、愛でる。性的マイノリティーの純粋な幸せを描き、ファンタジーを利用しつつも、マジョリティ側の幸せを享受するラストの見せ方は美しいの一言に尽きる。
この作品を読んだ読者の皆様が、路傍の石ころのような小さな幸せを、大切な誰と共有できることを願って……
男女が入れ替わって、という作品はありそうですが、出産のために入れ替わるというのは珍しいと思います。
一見、ファンタジーな感じですが、出産に至る産科でのやり取りなどは、専門的でかなり調べられて書かれたのだと思います。
それに加えて、特殊な疾患による苦労などが詳細に描かれていて、さらにこの小説のオリジナリティーを引き出していると思います。
こう書くと難しいように感じますが、決して堅苦しくなく、むしろ分かりやすく平易な文章で、さらさらと読めてしまいます。
物語全体を通してありのままな描写も、なかなかな見ものです!
出産をここまで追究した作品も、カクヨムでは貴重かと思います。